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オシロスコープ FFT解析
- 2025/6/17 -

オシロスコープ FFT解析

オシロスコープの「FFT解析」とは、波形データを時間領域から周波数領域へ変換する機能のことで、信号中に含まれる周波数成分を視覚的に確認できる解析手法です。FFTは「高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)」の略称であり、時間軸では捉えにくいノイズや高調波、干渉などを周波数軸で確認するために用いられます。

 

FFT解析の目的と役割

オシロスコープは本来、電圧の変化を時間軸上に表示する機器ですが、信号の質やノイズ源の特定、高調波の存在などを確認するには「周波数領域」での視点が不可欠です。FFT解析を使えば、信号に含まれる各周波数成分の大きさをスペクトルとして表示でき、特定周波数の成分の有無や強度を直感的に把握することが可能になります。

たとえば、スイッチング電源のノイズ調査、オーディオ信号のひずみ評価、通信信号の変調確認、EMC対策の事前評価など、用途は多岐にわたります。

 

オシロスコープでのFFT表示の特徴

FFT解析を内蔵したオシロスコープでは、1台で時間領域と周波数領域の表示を切り替えて使用できます。多くのモデルでは、通常の波形表示とFFT表示を同時に並べて観測できる「ダブルウィンドウ表示」に対応しており、信号の時間的変化と周波数成分を同時に確認できるため、波形の原因解析に非常に便利です。

また、周波数軸のスパンや中心周波数、表示スケールなどを調整することで、必要な範囲を拡大して詳細に観察することができます。最近のデジタルオシロスコープでは、数十万〜数百万ポイントのFFT演算に対応した機種も増えており、より高精度なスペクトル解析が可能となっています。

 

FFT解析に影響する主な要素

FFT解析の精度や見やすさには、以下のような要素が影響します。

■ サンプリングレート
サンプリングレートが高いほど、観測できる周波数の上限(ナイキスト周波数)も高くなります。たとえば1GSa/sのオシロスコープでは、最大約500MHzまでの周波数成分を表示可能です。

■ メモリ長(レコード長)
FFT解析に使用されるサンプル数が多いほど、周波数分解能が向上し、細かいピークや隣接信号も判別しやすくなります。逆にメモリが短いと、低周波成分の識別が難しくなる場合があります。

■ ウィンドウ関数
FFT解析では、波形データを一定の長さで切り取る必要があるため、切り取り時の誤差を軽減する「ウィンドウ関数」を適用します。代表的なウィンドウにはハニング、ブラックマン、長方形などがあり、目的に応じて使い分けが必要です。

 

FFT解析とスペクトラムアナライザの違い

FFT機能を持つオシロスコープと、専用のスペクトラムアナライザは一見似ていますが、それぞれの得意分野が異なります。オシロスコープのFFTは、一時的な信号解析や波形との比較、トラブル解析に向いており、広帯域・高速波形の観察と組み合わせて使うことができます。

一方、スペクトラムアナライザは高い周波数分解能とダイナミックレンジを持ち、連続波の測定や詳細な信号強度解析、EMC評価などに適しています。簡易的な周波数解析にはFFT付きオシロスコープで十分な場合も多く、コストと用途に応じて使い分けられます。

 

FFT解析が可能なOWON機種の例

OWONのADS800Aシリーズ、ADS900Aシリーズ、ADS3000シリーズなどでは、すべてFFT解析機能を搭載しています。12ビット高分解能ADCにより、ノイズ成分の微細なピークも表示でき、帯域・メモリ・サンプル性能のバランスが取れた構成になっています。

特にADS900Aシリーズは、アナログ波形・デジタル信号・FFT解析を同時表示できる多機能モデルであり、開発から教育用途まで幅広く活用されています。

 

まとめ

FFT解析は、オシロスコープにおける周波数解析を可能にする強力な機能です。時間軸波形では見えない信号成分を可視化できるため、トラブル解析や回路設計、品質管理などにおいて非常に有効です。FFT解析の性能を十分に活かすためには、サンプリングレートやメモリ長などの基本性能がバランスよく備わっているモデルを選ぶことが重要です。