English  中文站
オシロスコープとは?――電子計測の基本を担う波形観測機器のすべて
- 2025/6/30 -

オシロスコープとは?――電子計測の基本を担う波形観測機器のすべて

オシロスコープは、時間とともに変化する電気信号をグラフとして視覚化するための電子計測機器です。横軸に時間、縦軸に電圧を取ることで、電気信号の波形をリアルタイムで表示し、信号の性質や異常を即座に把握できます。電子回路の開発・評価・修理、各種センサー出力の解析、通信信号の確認、教育用途にいたるまで、非常に広い分野で使用されています。

本記事では、オシロスコープの基本原理から種類、用途、主な機能、そして選び方のポイントまでを体系的に解説します。


■ オシロスコープの基本原理

オシロスコープは、入力されたアナログ信号(電圧)を、内部のA/D変換器でデジタル化し、記録された値を時間軸に沿って画面上に表示します。これにより、信号の周期・振幅・波形のゆがみ・過渡現象などを視覚的に捉えることが可能です。

信号の取得から表示までは、以下の基本的な流れで構成されています。

プローブで信号取得
増幅・減衰回路でスケーリング
A/D変換器によるデジタル化
メモリに保存
ディスプレイ上に波形表示

この流れの中で重要なのが、サンプリング速度(例:1GSa/s)や分解能(8ビット、12ビットなど)です。これらの性能によって、信号の細かい変化をどれだけ正確に再現できるかが決まります。


■ オシロスコープの種類

オシロスコープにはいくつかの種類があり、用途や測定対象に応じて選定されます。

アナログオシロスコープ
昔ながらのブラウン管を使用した方式で、入力信号を直接CRTに表示するもの。現在ではほぼ生産されておらず、デジタルに置き換わっています。

デジタルオシロスコープ(DSO)
現在主流のタイプ。信号をデジタル処理することで、保存・拡大・演算などが可能。多くのモデルがPCとの連携も対応。

ハンドヘルド(携帯型)オシロスコープ
持ち運びに適した小型モデル。現場保守やフィールド測定に最適。例:OWON HDSシリーズ。

ミックスドシグナルオシロスコープ(MSO)
アナログ波形とともに、ロジック信号も同時に観測可能。デジタル回路とアナログ回路の混在系に向く。

PC接続型オシロスコープ
本体に画面を持たず、USBなどでPCと接続して使用するモデル。省スペースで安価な傾向。


■ 主な用途と活用シーン

電子回路の設計・評価
トランジスタ回路、マイコン回路、電源回路など、アナログ・デジタル問わず回路動作の確認。

センサー出力の観測
温度、加速度、圧力などのセンサ出力を波形として確認。リニア性やノイズの評価に活用。

PWM波形のデューティ比測定
モータ制御やLED調光などに用いられるPWM信号のオン/オフ時間を定量的に測定。

通信信号の解析
CAN、LIN、UARTなどのシリアル信号をデコードすることで、通信内容の確認も可能(対応モデル)。

オーディオ信号の可視化
スピーカ出力やマイク信号のゆがみや波形変化の測定に利用。


■ 基本操作と主な機能

オシロスコープには、正しく測定するための多彩な機能が備わっています。

トリガ機能
指定した条件(電圧、立ち上がりエッジなど)で波形を安定表示させる。信号の取りこぼし防止に重要。

スケーリング(時間軸・電圧軸)
波形の詳細を拡大・縮小する操作。見たい箇所にフォーカスするために必須。

測定機能(自動測定)
周期、周波数、振幅、デューティ比、立ち上がり時間などを自動計算して数値表示。

カーソル機能
任意の2点間の時間差、電圧差を手動で測定。詳細比較に役立つ。

波形保存・スクリーンショット
USBメモリやPCへの保存が可能。報告書作成やトラブル報告に便利。

FFT(高速フーリエ変換)機能
時間軸波形を周波数軸に変換して表示。ノイズ源や周波数成分の特定に有効。


■ 分解能とビット数:12ビットモデルの魅力

オシロスコープの分解能は通常8ビット(256段階)が標準ですが、近年では12ビット(4096段階)モデルが登場し、注目されています。たとえばOWONのADS800AシリーズやADS900シリーズは、12ビット分解能を搭載し、微小な信号の変化やノイズの差異まで高精度に観測できます。

これにより、たとえば次のような応用に効果的です:

・微小センサ信号の波形確認
・電源リップルの高精度測定
・オーディオ波形のひずみ可視化


■ オシロスコープの選び方

  1. 帯域幅(MHz)
    測定対象の周波数の5倍程度が目安。例:10MHzの信号なら50MHz以上。

  2. チャンネル数
    同時に比較する信号が多い場合は4ch以上が便利。2chでも基本用途には十分。

  3. サンプリング速度(S/s)
    帯域幅に見合うだけの速度が必要。一般に、帯域幅の10倍以上を推奨。

  4. メモリ長
    長時間信号や高分解能の測定には大容量メモリが必要。例:10Mpts以上あると安心。

  5. 価格とサポート
    教育現場やスタートアップ用途には、コストパフォーマンス重視のOWONやSIGLENT製なども人気。


まとめ:オシロスコープは“目で見る”計測器の基本

オシロスコープは、単に信号を表示するだけではなく、電子機器の状態を瞬時に判断し、開発や保守の精度を高める“電子技術者の目”とも言える存在です。正しい機種選定と使い方を身につけることで、測定の質が飛躍的に向上します。