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電子回路の基本知識(10)‐パルス制御とPWMの基礎
- 2025/7/1 -

電子回路の基本知識(10)‐パルス制御とPWMの基礎

電子回路では、単にオン・オフの信号を扱うだけでなく、「時間軸で制御されたパルス」を使って出力を細かく調整する技術が重要です。その代表が「PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)」です。PWMは、LEDの明るさ調整やモーターの速度制御、オーディオ出力や電源制御など、様々な場面で活躍します。

今回は、このPWMの基本的な仕組みと、電子回路における使い方を解説します。


■ パルス信号とは?

パルスとは、短時間だけオンになる矩形波のことです。周期的に繰り返されると、クロックのような波形になり、デジタル回路の制御に使われます。

パルスには以下の重要な要素があります:

周期(Period)…パルスが1回繰り返される時間

パルス幅(High時間)…オン状態が続く時間

デューティ比(Duty Ratio)…パルス幅 ÷ 周期(%で表す)


例:周期が10msでパルス幅が5msなら、デューティ比は50%


■ PWM(パルス幅変調)とは?

PWMとは、パルスの「デューティ比」を変化させることで、出力の平均電圧やエネルギーを制御する手法です。オンとオフの時間を調整することで、擬似的にアナログ的な出力変化を作り出すことができます。

たとえば、5Vの電源でデューティ比50%のPWM信号を出力すると、負荷が受け取る平均電圧は約2.5Vになります。

デューティ比 平均出力(5V系の場合)
0% 0V
25% 1.25V
50% 2.5V
75% 3.75V
100% 5V


■ PWMの回路構成(基本例)

PWM波形を生成するには、以下のような回路構成が使われます。

【アナログ比較型】
・三角波(またはのこぎり波)発振器+コンパレータ
・入力電圧と波形を比較して、ON/OFFのタイミングを決定

【デジタル方式(タイマー利用)】
・マイコンや555タイマーICで周期とデューティ比を制御
・PWMモード搭載のマイコンでは、専用出力ピンから簡単に生成可能


■ 実用例①:LEDの明るさ調整

LEDは電圧に比例して明るさが変化するわけではなく、一定以上の電圧でほぼ最大輝度になります。そのため、アナログ的な制御にはPWMが最適です。

PWMでデューティ比を変えることで、LEDの点滅と人間の目の残像効果を利用し、明るさを段階的に見せることができます(例:暗い→中間→明るい)。


■ 実用例②:DCモーターの速度制御

モーターは電圧や電流によって回転速度が変わりますが、電圧そのものをアナログ的に調整するのは難しいため、PWMがよく使われます。

PWMのデューティ比を上げると回転が速くなり、下げると遅くなります。モーターは慣性があるため、PWMの高速なオン・オフを「平均電力」として受け取り、滑らかに動きます。


■ 実用例③:加熱制御・電源制御

ヒーターや電源装置などでも、PWMによって「必要な電力」だけを負荷に与えることができます。特にスイッチング電源では、PWMは最も基本的な制御手段です。


■ PWM制御の注意点

スイッチング周波数の選定
 低すぎるとちらつきや振動が発生、高すぎるとスイッチング損失が増加します。
 例:LED制御なら1kHz〜数十kHz、モーターなら10kHz〜20kHz程度が一般的。

フィルタの併用
 PWM波形をアナログに近づけたい場合、ローパスフィルタ(抵抗+コンデンサ)で平滑化することがあります。

EMIノイズ対策
 高速スイッチングは電磁ノイズの原因になるため、シールドやスロープ制御が必要になる場合があります。


■ マイコンによるPWM制御

最近のマイコン(例:Arduino、Raspberry Pi Pico、STM32など)には、PWM出力機能が標準搭載されており、次のような操作でPWM信号を生成できます。

analogWrite(pin, duty); // Arduinoの場合、0〜255でデューティ比指定

このように簡単なコードでLEDの明るさ調整やサーボ制御が可能になります。


■ まとめ

PWMは、デジタル信号でアナログ量を疑似的に制御する強力な技術です。構造はシンプルながら、LED制御、モーター制御、電源回路など、あらゆる電子機器に使われており、非常に応用範囲が広いです。

次回は「電子回路の基本知識(11)‐センサの種類とアナログ・デジタル変換」と題して、温度・光・圧力などを電気信号に変換する各種センサと、それを扱うためのA/D変換・D/A変換の基礎について解説いたします。