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オシロスコープ プローブ入門(1)プローブの基本構造と役割
- 2025/7/1 -

オシロスコープ プローブ入門(1)プローブの基本構造と役割

■プローブとは何か

オシロスコープは、時間軸上における電圧の変化を波形として表示する計測器であり、電子回路の設計や評価、トラブル解析において基本的かつ重要な存在である。そのオシロスコープと回路との間を接続するのがプローブである。

プローブは単なるケーブルではなく、測定精度と波形の正確性に大きく影響を与える計測要素のひとつである。誤った使い方をすれば、波形が歪んだり、回路に過大な負荷を与えることがある。したがって、プローブの構造と使い方を理解することは、正しい波形観測の第一歩となる。

■プローブの構成要素

一般的なプローブは、測定チップ、グラウンドリード、同軸ケーブル、内部回路、BNCコネクタなどから構成されている。

測定チップは信号を回路から取り込む探針部分である。グラウンドリードは基準電位を取るための線であり、対象回路のGNDに接続される。同軸ケーブルは外来ノイズの影響を受けにくく、シールド構造となっている。

プローブ内部には抵抗とコンデンサからなる減衰回路が組み込まれており、信号をオシロスコープに適した形で送る仕組みとなっている。

■減衰比とオシロスコープ設定

プローブには減衰比が設定されており、よく使われるのが十対一のプローブである。十対一とは、入力信号を十分の一に減衰してからオシロスコープに伝送する構造であり、高電圧信号に対応でき、測定帯域も広くなる。

たとえば十ボルトの信号を測定した場合、プローブ内部で一ボルトに減衰されてオシロスコープへ入力され、オシロスコープは設定に応じて元の電圧で画面に表示する。

■帯域と立ち上がり時間

プローブには帯域幅が設定されており、これは信号の高周波成分をどこまで正確に伝えられるかを表す指標である。たとえば三百メガヘルツの帯域を持つプローブは、三百メガヘルツまでの信号成分をほぼ正確に測定できる。

帯域が不足していると、高速な信号の立ち上がりが鈍ったり、波形が正しく再現されなかったりする。立ち上がり時間は帯域に反比例するため、より高速な測定が必要な場合には高帯域プローブが必要となる。

■入力インピーダンスと容量負荷

プローブは回路に接続されるため、回路に対して一定の負荷を与える。特に注目すべきなのが、入力インピーダンスと入力容量である。

十対一プローブの多くは一メガオームの入力抵抗と十から二十ピコファラッド程度の容量を持っている。高周波回路や高速デジタル信号では、この容量成分が波形の劣化につながることがある。

■プローブ補正(コンペンセーション)

プローブには、オシロスコープとの電気的整合を取るための補正機能がある。これをプローブ補正、またはコンペンセーションと呼ぶ。

オシロスコープ本体には、補正用の矩形波出力端子が用意されており、そこにプローブを接続して波形を観察する。波形が正しい矩形になるように、プローブ側の可変コンデンサをドライバで調整することで補正を行う。

補正が不適切な場合、波形が丸くなったり、オーバーシュートやアンダーシュートが発生する。

■グラウンドリードの影響

グラウンドリードの長さは、特に高周波測定において重要である。長いグラウンドリードはループ面積が大きくなり、外部ノイズの影響を受けやすくなるため、可能な限り短くすることが推奨される。

スプリング型のショートグラウンドアダプタを使用することで、信号の劣化を最小限に抑えた測定が可能となる。

■高電圧測定と差動測定への対応

通常のプローブは数十ボルトから数百ボルトまでの信号に対応しているが、高電圧回路の測定には専用の高電圧プローブを用いる。これらは百対一、または千対一の減衰比を持ち、絶縁構造や安全機構が備えられている。

また、フローティング回路や二点間の差分電圧を測定する場合には、差動プローブが必要となる。差動プローブは二つの入力間の電圧差を測定し、共通モードノイズを除去できるため、安全かつ高精度な測定が可能である。

■まとめ

プローブはオシロスコープ測定において不可欠な構成要素であり、その性能と使い方は測定の信頼性に直結する。プローブの減衰比、帯域、入力インピーダンス、容量負荷、グラウンド構成、補正機能など、基本構造を理解したうえで正しく使用することが、精度の高い波形観測を実現する第一歩である。

次回は、プローブの種類とその使い分けについて解説する予定である。用途に応じたプローブの選定基準と注意点を詳しく紹介する。