I2C専用の波形とデコード事例
はじめに
I2C(Inter-Integrated Circuit)は、マイコンやセンサ、EEPROMなど複数のIC間で通信するために広く利用されているシリアル通信方式である。2本の信号線だけでマスタと複数スレーブ間の双方向通信が可能であり、組み込みシステムや各種制御機器において定番のインタフェースとなっている。オシロスコープとデコード機能を用いれば、I2C通信の詳細な内容やタイミングを可視化し、開発やトラブル解析に大きく貢献することができる。
I2Cの基本構造と信号線
I2CはSCL(クロック)とSDA(データ)の2本のオープンドレイン信号線で構成されている。プルアップ抵抗によってHighレベルが保たれ、通信時はデバイスがLowレベルを出力することで信号を制御する。
通信は常にマスタがクロックを生成し、スタート条件から始まり、スレーブアドレス、R/Wビット、データ送受信、ACK信号、ストップ条件という手順で進む。
I2C信号の波形観測
オシロスコープでI2C信号を観測する場合、SCLとSDAの両方の波形を表示する必要がある。代表的な波形は以下のような特徴を持つ。
スタート条件:SCLがHighのときにSDAがHigh→Lowに変化
ストップ条件:SCLがHighのときにSDAがLow→Highに変化
データビット:SCLの立ち上がりに合わせてSDAの状態がサンプリングされる
ACKビット:データ送信後に受信側がSDAをLowにすることで応答する
これらのポイントをオシロスコープで正しく表示することで、通信の正確性や不具合箇所の特定が可能となる。
I2Cデコード機能の活用
近年のデジタルオシロスコープでは、I2Cプロトコルに対応したデコード機能が搭載されている機種が多く、GUI上でSDAとSCLチャンネルを指定することで自動的に通信内容が解析される。
デコード結果は波形上に重ねて表示され、アドレス、読み書き区別、データ、ACK/NAKなどが視覚的に示される。さらに、テーブル形式で複数フレームを時系列で一覧表示する機能もあり、長時間の通信を効率的に確認できる。
具体的なデコード事例1:センサの読み取り
例えば、温度センサからデータを取得するケースでは以下のような波形とデコード結果が見られる。
マスタがスタート条件を送信
スレーブアドレス(例:0x48)に対してWrite(W)
レジスタアドレス(例:0x01)を送信
再びスタート条件を発行し、スレーブアドレスにRead(R)を指定
センサがデータ(例:0x1A 0xC0)を送信
マスタがストップ条件を送信して通信終了
この一連の流れが波形上で確認できると同時に、デコードバーには「START」「0x48(W)」「0x01」「RESTART」「0x48(R)」「0x1A」「0xC0」「STOP」といった情報が表示され、通信内容を詳細に把握できる。
具体的なデコード事例2:ACKエラーの検出
開発中やデバッグ中には、スレーブアドレスへのアクセス時にACKが返ってこないという問題が発生することがある。これを波形とデコードで確認すると、スレーブアドレス送信後にSDAがHighのままで、ACKが返されていない様子が明確に分かる。
このようなケースでは、アドレスの誤り、スレーブ側の電源未接続、信号レベルの不整合など、原因を絞り込む手がかりとなる。
タイミング解析との併用
デコードだけでなく、I2C通信のタイミング特性も波形観測により評価可能である。たとえば、SCLのクロック周波数やDuty比、SDAのセットアップ・ホールド時間、スタート条件からデータ送信までの遅延などを測定することで、規格に準拠しているかを確認できる。
タイミング異常が通信不良の原因であることも少なくないため、デコード結果だけでなく、アナログ波形の詳細な観察が重要である。
トリガとフィルタ機能の活用
オシロスコープによっては、I2Cプロトコルに基づいたトリガ条件が設定可能である。たとえば、特定のスレーブアドレス、特定のデータ、ACKなしなどを条件にトリガをかけることで、異常通信を瞬時に捕捉することができる。
また、ノイズや信号のゆらぎが多い環境では、ローパスフィルタやヒステリシス設定によって、より安定した観測が可能となる。
まとめ
I2C通信の解析においては、SDAとSCLの波形を正確に観測し、デコード機能によって通信内容を可視化することが重要である。具体的なアドレスやデータ、ACKの有無を一目で把握できるようになれば、設計開発や不具合解析のスピードと精度は大きく向上する。
オシロスコープを用いたI2C解析は、単なる波形表示ではなく、通信プロトコルの意味まで踏み込んだ解析を可能にし、現場における強力な武器となる。
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