車載Ethernetの波形観測
車載Ethernetとは何か
近年、車載ネットワークにおける通信量の急増に対応するため、Ethernet技術の導入が急速に進んでいる。特にADAS(先進運転支援システム)や自動運転関連の処理では、大量の画像・センサーデータを低遅延でやりとりする必要がある。従来のCANやFlexRayでは対応が難しいため、より高速な通信が可能な100BASE-T1や1000BASE-T1といった車載Ethernetが注目されている。
シングルペアイーサネットの特徴
車載Ethernetの多くは、ツイストペア1対で双方向通信が可能な**シングルペアイーサネット(SPE)**が用いられている。車両内部の軽量化やコスト削減を目的に、従来のツイストペア2対を使用する方式から進化したものである。これにより、100Mbpsや1Gbpsといった高速通信が、低ノイズで実現されている。
波形観測に必要な機材
車載Ethernet信号の観測には、1GHz以上の帯域を持つオシロスコープが理想的である。サンプリングレートは2.5GSa/s以上が望ましい。また、Ethernetは差動信号であるため、高性能な差動プローブが必須となる。測定ポイントはECUのコネクタ部や診断コネクタ周辺などが使われる。
アイパターンで信号品質を確認
Ethernet信号の品質確認には、アイパターンが広く使われている。これは同じパターンの信号を重ね合わせて表示することで、信号のジッターやノイズ、開口部の広さを可視化する手法である。開口部が狭くなっていたり、上下の振幅が不安定になっていたりする場合、通信エラーが発生しやすくなる。
PAM3変調の観測ポイント
100BASE-T1では、**PAM3(3値パルス振幅変調)**方式が採用されており、波形は+1、0、−1の三つのレベルを持つ。このため、観測される波形も通常の2値(NRZ)とは異なり、やや複雑な形状になる。差動信号の中心電位や振幅を正確に捉えることが、信号の健全性確認に直結する。
オシロスコープでの観測テクニック
オシロスコープには、拡張トリガ機能やヒストグラム解析、トレンド表示など、異常検出に役立つ機能が備わっている。例えば、特定のエラー波形が観測された際だけ波形を保存するなど、効率的なトラブル解析が可能になる。波形の繰り返し性を利用して平均化を行い、ランダムノイズの影響を除去する手法も有効である。
物理層での注意点
車載Ethernetでは、終端抵抗の不整合や配線インピーダンスのばらつきなどが原因で、波形に反射やリンギングが発生することがある。こうした現象もオシロスコープによる詳細な観測によって確認できる。グランドの取り方やプローブの配線方法ひとつで、波形が大きく変化する場合もあるため、測定環境には十分注意が必要である。
今後の車載Ethernetへの期待
今後、車載Ethernetは車両のバックボーンネットワークとしての利用が想定されており、1000BASE-T1や2.5G/5G Ethernetなど、さらなる高速化も見込まれている。これに伴い、測定器側にもより高帯域・高分解能な仕様が求められるようになる。物理層だけでなく、プロトコルレイヤの観測や複数ノード間のトラフィック可視化など、多面的な評価技術が必要となっていくだろう。
まとめ
車載Ethernetは、高速・高信頼性通信を可能にする次世代の車載ネットワーク基盤として注目されている。オシロスコープを活用した波形観測は、その物理層の品質や安定性を把握するための基本かつ最も重要な手段である。正しい測定機材と手法を用いることで、車載Ethernetの導入・評価をより確実なものとすることができる。
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