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FFT解析で使える便利なトリガ設定
- 2025/6/30 -

FFT解析で使える便利なトリガ設定

FFT解析とトリガの関係

オシロスコープを用いたFFT解析では、時間領域の波形を周波数領域に変換し、信号のスペクトル構成を可視化できる。だが、FFT解析は元となる波形の取り込み精度に大きく依存しているため、いかに的確に波形を取得するかが重要となる。そのための基本機能として、トリガ設定の活用は欠かせない。適切なトリガ条件を設定することで、目的の信号を安定してキャプチャし、正確なFFT表示を可能にする。

エッジトリガの基本活用

最も一般的なトリガ方式がエッジトリガである。これは信号の立ち上がりや立ち下がりの瞬間を検出して波形の取り込みを開始する方式で、周期的な波形や正弦波などに効果的である。FFTでは取り込む時間窓の開始タイミングが一定であることが望ましく、エッジトリガを利用することで信号がランダムに切断されるのを防ぎ、より安定したスペクトル表示が得られる。

パルストリガと不定期信号の観測

突発的なパルス信号や、一定の条件下でのみ発生するイベント信号を観測する際は、パルストリガが有効である。特定のパルス幅を持つ信号だけをキャプチャできるため、ノイズ成分を含む環境でも目的波形のみを抽出できる。これによりFFT表示も不要な成分が減り、目的とする周波数の特定が容易になる。

ビデオトリガの応用

信号の中にノイズが含まれており、それが広帯域に広がっている場合、ビデオトリガが有効である。ビデオトリガは信号の振幅包絡線の変化に対してトリガをかけるため、特定の振幅変動を持つノイズ成分を検出しやすい。これによりノイズの発生タイミングに合わせたFFT観測が可能となる。

スロープトリガで立ち上がり速度を選別

スロープトリガは信号の立ち上がりまたは立ち下がりの速度(dV/dt)に対して条件を設定する方式であり、立ち上がりの急峻な成分だけを抽出するのに適している。たとえば、スイッチング電源のように高速で立ち上がる信号のノイズ成分をFFTで可視化したい場合、このトリガを利用することで不要な低速信号の混入を防げる。

ロジックトリガと組み合わせたプロトコル解析

最近のオシロスコープにはロジック入力を併用できるモデルも多く、これを利用した複合トリガ設定が可能である。たとえば、I2C通信の特定のアドレス通信時にトリガをかけて、通信時のEMIノイズをFFTで観測するといった使い方が可能になる。このような高度な条件でのトリガ設定により、通信中の高周波ノイズや不要輻射の解析がより精緻に行える。

トリガとウィンドウ関数の併用

FFTではトリガ設定と同様にウィンドウ関数の選択も重要である。長時間の波形を安定的に取得できても、信号の端での不連続性が発生すればスペクトルの広がり(いわゆるリーケージ)が生じる。これはトリガ条件によって信号の開始タイミングを制御することである程度軽減できるが、ウィンドウ関数の選択と併せて最適化することが重要である。

FFT解析に最適な水平スケールとトリガ位置

FFT解析で広帯域の信号を表示したい場合、オシロスコープの水平スケールを適切に設定する必要がある。スケールが短すぎると周波数分解能が不足し、スケールが長すぎると時間軸上で信号が安定せず、意味のあるFFTが得られないことがある。また、トリガ位置を画面中央付近に設定することで、信号の前後が均等に収録され、FFT波形のゆがみを軽減できる。

まとめ

FFT解析は、オシロスコープを使った周波数解析の中でも手軽で強力な手法であるが、トリガ設定を工夫することで解析精度を大きく向上させることができる。エッジトリガを基本としつつ、パルス・スロープ・ビデオトリガなどを使い分けることで、目的の信号だけを取り込み、より正確でノイズの少ない周波数表示が実現する。高性能オシロスコープでは複数のトリガ条件を組み合わせられるため、用途に応じた最適なトリガ戦略を構築することがFFT解析の成功につながる。