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光アイソレーションプローブとは
- 2025/7/1 -

光アイソレーションプローブとは

高い電位差を安全に測定するための革新的な手段

光アイソレーションプローブとは、入力信号と出力側の測定機器(主にオシロスコープ)との間を光信号で絶縁し、電気的に完全に分離された状態で信号伝送を可能にする特殊なプローブである。高電圧環境下でも安全かつ正確に波形観測を行うことができるため、近年のパワーエレクトロニクスやインバータ制御、EV開発などでの需要が高まっている。

従来の差動プローブとの違い

一般的な高電圧差動プローブでは、差動アンプと内部絶縁構造により一定の電位差までは測定可能だが、耐圧やコモンモード除去比(CMRR)には限界がある。一方、光アイソレーションプローブでは、入力回路で電気信号を光に変換し、光ファイバーを通じて出力回路に伝送することで、原理的に完全な絶縁を実現している。

そのため、数千ボルト単位のコモンモード電圧が存在するような環境下でも、測定器本体や作業者に対して電気的危険を及ぼすことなく、安全に信号の観測が可能である。

光アイソレーションの仕組みと構成

光アイソレーションプローブの構成は、主に次のようになっている。入力部には高耐圧の差動入力端子があり、被測定信号を取り込む。入力信号はアナログフロントエンドで整形された後、LEDなどの発光素子で光信号に変換される。変換された光は光ファイバーを通って受光部に伝送され、ここで再び電気信号に戻されてオシロスコープへと出力される。

この過程により、入力部とオシロスコープ間に完全な電気的絶縁が成立し、ノイズの重畳や高電圧による破損リスクを回避することができる。

主な用途と使用シーン

パワーデバイスのゲート信号観測
高電圧DCバスと低電圧制御信号の同時観測
絶縁型ドライバ回路の出力モニタリング
EV・HEVのインバータ回路やバッテリーパック評価
絶縁トランス二次側信号のタイミング測定
IGBTやSiC、GaNなど高dv/dt環境での波形取得

これらの用途では、従来のプローブではノイズによる歪みや、破損リスクがつきまとっていたが、光アイソレーションプローブによりこれらの問題を回避できる。

メリットと注意点

最大のメリットは、高い絶縁耐圧と高CMRRにより、安全かつ正確に高電位信号を測定できる点である。また、システム全体のグラウンドループの影響を受けず、複雑なノイズ環境下でもクリアな波形が得られる。

一方、注意すべき点としては、プローブ自体に電源が必要であること、帯域や入力インピーダンスが限定されること、価格が比較的高価であることが挙げられる。また、光ファイバーによる伝送遅延やゲイン特性の調整も必要となる場合がある。

Micsig製光アイソレーションプローブの特徴

たとえばMicsigのMOIPシリーズ(MOIP350PやMOIP500Pなど)は、±1000V以上のコモンモード耐圧と300MHzクラスの帯域、10倍/100倍などのアッテネーション設定を備えたモデルがあり、USB給電対応かつコンパクトで使いやすい仕様となっている。

また、付属の絶縁キャリブレーションボックスにより、オシロスコープとのゲイン整合やゼロ調整が容易であり、特別な設置環境がなくても高電圧の差動測定をすぐに始められる点が高く評価されている。

まとめ

光アイソレーションプローブは、パワーエレクトロニクスの現場や高電圧測定において、安全性と精度の両立を実現するための重要なツールである。従来のプローブでは困難だった領域の測定を可能にするだけでなく、作業者の安全を守る観点でも極めて有効である。高電圧環境での正確な波形観測が求められる際には、光アイソレーションプローブの導入を積極的に検討すべきである。