調整されていないプローブは使えない理由 ― プローブの補償と低周波・高周波補正
正しい波形を得るためのプローブ補償
オシロスコープでの波形測定において、信号を入力するために使うプローブは非常に重要な役割を担っている。特にパッシブプローブを使用する際は、測定前に「補償」と呼ばれる調整作業を行わなければならない。補償が正しくなされていないプローブは、どれほど高性能なオシロスコープを用いても正確な波形を表示することができず、誤った解析や判断につながる。
なぜ補償が必要なのか
パッシブプローブは、オシロスコープ本体と組み合わせて一定の入力インピーダンス特性を実現するよう設計されている。プローブ内部には抵抗や可変容量が組み込まれており、測定信号の周波数に応じた電気的特性が変化する。これに対して、オシロスコープ本体側にも入力インピーダンスや内部容量が存在し、プローブとの間にRC回路のような構成が生じる。この回路の特性がずれていると、正しい波形を表示することができない。
補償とは、プローブ内部の可変コンデンサを調整し、オシロスコープとの組み合わせで正確な波形を再現できるようにする作業である。
補償が取れていない状態での測定リスク
補償が合っていないと、矩形波などの信号波形に以下のような異常が現れることがある。
波形が丸みを帯びて表示される場合は、低周波成分が強調されすぎている可能性がある。これは高周波成分が十分に伝達されていない状態、すなわち「アンダーコンペンセーション(過少補償)」と呼ばれる。
一方、波形の立ち上がりや立ち下がりが鋭すぎて過剰な突起やオーバーシュートが現れる場合は、補償しすぎの状態、すなわち「オーバーコンペンセーション(過補償)」である。
このような状態では、波形の正確な観測ができず、ノイズや異常動作の有無、応答時間などのパラメータ判断を誤る原因となる。
低周波補正と高周波補正の仕組み
プローブ補償には大きく分けて二つの側面がある。それが低周波補正と高周波補正である。
低周波補正とは、プローブとオシロスコープの間の直流および低周波領域における電圧分割比を一致させる調整である。これは主にプローブ内の抵抗値に依存する。
一方、高周波補正は、プローブと本体との間の容量成分による信号遅れや立ち上がりの歪みを抑えるもので、プローブ先端近くに配置された可変コンデンサで微調整される。この可変コンデンサが、補償調整で最も頻繁に操作される部分である。
補償作業は、高周波補正を目的としており、これによって周波数全体で一定の減衰比を維持したまま、原信号に忠実な波形表示が可能となる。
補償調整の手順
オシロスコープには通常、補償調整用として矩形波のキャリブレーション出力端子が用意されている。そこにプローブを接続し、矩形波を表示させながらプローブの根本にある調整ネジを回すことで、波形が理想的な形になるように補償する。
調整前には、波形が角の取れた形や尖った形をしていることがあるが、調整により上下のエッジが直線的で平坦な矩形波になるよう整える。このような矩形波が得られる状態が、最適な補償が取れているサインである。
調整されていないプローブはなぜ使えないのか
調整されていないプローブは、入力信号の特性を大きく歪めてしまい、本来あるべき波形を正しく表示できない。その結果、開発中の回路に対する誤認やトラブルシュートの失敗、製品の不具合見逃しといった重大な問題が発生する可能性がある。
また、複数の測定ポイントを比較する場合に補償状態が異なっていると、相対的な違いが見えにくくなり、正確な評価ができなくなる。
まとめ
プローブの補償調整は、オシロスコープを使う上での基本操作であり、測定の信頼性を左右する重要な工程である。特に、プローブと本体の組み合わせが異なる場合や長期間使用していないプローブを使用する場合は、必ず補償状態を確認すべきである。
低周波補正と高周波補正という二つの観点から適切に調整されたプローブは、波形を正確に再現し、開発や評価において極めて重要な役割を果たす。調整されていないプローブは使えない、というのは単なる注意ではなく、測定品質を守るための鉄則である。
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