オシロスコープのトリガ回路の仕組み
トリガとは何か
オシロスコープにおける「トリガ」は、波形を安定して表示するために使われる非常に重要な機能である。トリガが適切に設定されていないと、画面上の波形は横に流れるように表示され、正確な波形観測が困難になる。トリガとは、一定の条件を満たしたときに波形の取り込みを開始するための「開始スイッチ」のようなものであり、その仕組みは内部の電子回路によって構成されている。
トリガ回路の基本構成
一般的なデジタル・オシロスコープのトリガ回路は、大きく分けて以下の三つの部分で構成されている。
入力部
ここでは観測対象のアナログ信号が取り込まれる。トリガは、通常CH1〜CH4などの各チャンネルのいずれか、または外部入力(EXT)から信号を受け取る。
条件判定部
取り込んだ信号が指定されたトリガ条件(電圧レベル、立ち上がり/立ち下がり、波形の特定パターンなど)に合致するかどうかを判定する回路。コンパレータと呼ばれるアナログ比較器が使われることが多く、信号電圧が設定したしきい値(トリガレベル)を超えた瞬間を検出する。
同期制御部
条件が満たされた瞬間に波形の取り込み処理を開始するための制御を行う。この動作は、ADC(アナログ‐デジタル変換器)やメモリ制御と密接に連携している。トリガ信号が検出された時点を基準として、そこから前後の波形を一定時間分だけキャプチャすることで、時間軸に対して整った波形が表示される。
トリガモードの種類と動作
トリガ回路の挙動は、「トリガモード」の設定によって変わる。主に以下のモードがある。
オートモード
設定した条件が満たされない場合でも、一定時間経過後に自動的に波形を更新する。波形が表示されないことを防げるが、ノイズが多い場合は安定表示が難しい。
ノーマルモード
設定条件が満たされた時のみ波形を取り込む。条件が合致しない限り画面更新は行われないため、特定イベントの観測に適している。
シングルモード
一度だけトリガ条件を検出したときに波形を取り込む。観測後は停止状態になる。稀にしか発生しないイベントや異常波形の検出に有効。
トリガエッジの仕組み
多くの基本的なトリガは「エッジトリガ」であり、信号がある電圧レベルを立ち上がりまたは立ち下がり方向で通過する瞬間を検出する。ここでは入力信号をリアルタイムでモニタしておき、コンパレータでその瞬間を捉える。デジタル回路内では、検出されたタイミングに応じて「トリガ信号」が生成され、取り込み処理を開始するタイミング信号として使われる。
トリガホールドオフの仕組み
トリガホールドオフとは、前回のトリガ後から一定時間は新たなトリガを無効化するための設定である。周期的な複雑な波形(例:UARTやパルストレインなど)では、意図しない場所でトリガがかかると表示が乱れる。ホールドオフを適切に設定することで、1周期分の波形を安定的に表示させることができる。
高度なトリガ回路とデジタルトリガ
近年の高性能オシロスコープでは、トリガ回路もより高度になってきている。アナログ信号ではなく、ADCでデジタル化された信号に対して論理演算やパターンマッチングを行う「デジタルトリガ回路」も搭載されており、I2CやCANなどのバス信号の特定フレームに対しても直接トリガをかけられる。これにより、従来は観測が難しかった信号の内部状態まで細かく解析できるようになっている。
まとめ
オシロスコープのトリガ回路は、安定した波形観測を支える中核的な要素であり、その仕組みを理解することでより正確かつ効率的な測定が可能となる。基本的なエッジトリガから始まり、ホールドオフの調整、バス解析対応のデジタルトリガまで、用途や信号に応じて適切な設定を行うことが、測定の成功には欠かせない。
製品情報
- 【新製品ニュース】12ビット高分解能モデル続々登場!OWONの多機能デジタル・オシロスコープ3シリーズを新たにラインアップ
- 即日出荷で確実に納品!3月末まで!
- 【実機展示開始】実機展示が東洋計測器ランド本店でスタート
- 【キャンペーン】OWON社スペアナ購入で「EMI対策用近傍界プローブ、RFケーブル」をもれなくプレゼント
- 国際 カーエレクトロニクス技術展2024 に出展
- OWON SDS1000シリーズオシロスコープと定番超入門書の特別コラボレーション
- 【教育現場必見】1台4役!万能計測器がすごい | OWON FDS1102
- OWON、東京ハムフェアで最新スペアナ技術を披露!好評を博す
- ハムフェア2023に出展決定!実機体験でお得なクーポンも進呈!
- OWONとPINTECHが戦略提携協議を締結し、計測機器市場で新たな展開を目指す