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オシロスコープにおけるCH(チャンネル)の役割と活用方法
- 2025/7/1 -

オシロスコープにおけるCH(チャンネル)の役割と活用方法

CHとは何か

オシロスコープにおける「CH」とは、"Channel(チャンネル)"の略称であり、入力信号を受け取るための独立した測定ラインを指す。一般的なオシロスコープには、2CHまたは4CHが搭載されており、上位モデルでは6CHや8CHを備えるものもある。各チャンネルには個別の入力端子があり、同時に複数の信号波形を観測することが可能である。

なぜ複数のチャンネルが必要なのか

回路解析やシステムデバッグにおいては、1つの信号だけでなく、複数の信号の関係性やタイミングを同時に把握する必要がある。たとえば、マイコンから出力されるI2C信号のSCLとSDAラインを観測するには2CHが必要となる。電源入力と出力の動作確認や、クロックとデータの同期確認、制御信号と応答信号の遅延測定など、あらゆる場面で多チャンネルの重要性が際立つ。

CHごとの基本的な設定項目

各チャンネルには個別の設定が可能であり、正確な測定を行うためにはそれぞれの調整が不可欠である。以下は主な設定項目である。

垂直スケール(電圧レンジ)
1DIVあたりの電圧値を設定する。信号の振幅に合わせて適切なスケールを設定することで、波形を画面全体に広げて見やすくできる。

オフセット(ゼロ位置)
画面上で波形の中心位置を上下に移動する調整で、他のチャンネルとの比較や、±電圧信号の中央合わせに有効である。

カップリング(AC/DC/GND)
入力信号の取り込み方法を選択する設定。ACカップリングでは直流成分を除去し、交流成分のみ観測可能。DCカップリングでは直流を含めてそのまま測定する。

プローブ倍率
接続するプローブの倍率(例:1:1, 10:1)に合わせて設定することで、正しい電圧表示が可能となる。プローブ側のスイッチ変更と連動して調整する必要がある。

CH同士の関係を活用した測定例

位相差の測定
2CH以上ある場合、CH1とCH2に異なる信号を入力し、時間差をカーソルで測定することで位相差を算出できる。インバータ回路や制御信号の解析に有効である。

差動測定
差動プローブがない場合でも、CH1とCH2に正負の信号を入力し、演算機能(CH1-CH2)を用いて差動信号を疑似的に生成することができる。ただし、信号レベルや精度に注意が必要である。

マルチチャネル波形のトリガ応用
あるチャンネルでトリガをかけて、他チャンネルの波形を同期表示することで、トリガ信号と応答信号の関係を正確に把握できる。たとえば、CANトリガで通信開始を検出し、電源変動やノイズの有無を他チャンネルで観察するなどの使い方がある。

CH数が増えることで得られるメリット

4CH以上のモデルでは、1つの画面内に複数の波形を同時表示することで、系全体の挙動を一目で把握できる。近年では6CHや8CHモデルも登場しており、三相インバータの各出力観測、車載通信(CAN、LIN、FlexRayなど)信号の並列確認、センサ群の同時観測などに活躍している。

CHごとの配色と識別性

オシロスコープの画面では、各CHに異なる色が割り当てられていることが多い。たとえばCH1は黄色、CH2は青、CH3はピンク、CH4は緑といった具合で、波形の識別性を高めている。測定ミスを防ぐためには、ケーブル・プローブ・画面上の波形表示を丁寧に一致させる必要がある。

CH使用上の注意点

すべてのCHを同時に使用すると、オシロスコープ本体の処理負荷が増大し、波形更新レートや最大サンプリングレートが低下する場合がある。また、CHごとに接地が共通になっているタイプもあるため、誤接続によりショートや測定誤差が発生するリスクもある。高電圧信号や差動測定には専用プローブの使用が推奨される。

まとめ

オシロスコープにおけるCHは、単なる入力端子ではなく、測定精度や解析効率を大きく左右する重要な構成要素である。チャンネル数の多さは柔軟性と同時観測能力の高さを意味し、正確な信号解析に欠かせない。測定対象や用途に応じて適切なCH数・設定・活用方法を選ぶことで、オシロスコープの真の力を引き出すことができる。