スペクトラムアナライザの選び方:帯域・RBW・DANLの意味と基準
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スペクトラムアナライザ選びで失敗しないために
スペクトラムアナライザ(spectrum analyzer)は、周波数軸で信号を可視化し、RF設計・ノイズ評価・無線通信の開発などに不可欠な測定器です。しかし、初めて導入を検討する際、「何MHzまで測れるのか」「RBWって何?」「DANLって低い方がいいの?」といった疑問に直面する方も多いのではないでしょうか。
この記事では、スペクトラムアナライザ選定時に最も重要な**帯域(周波数範囲)・RBW(分解能帯域幅)・DANL(表示平均ノイズレベル)**の意味と、用途に応じた基準についてわかりやすく解説します。
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まずは基本:帯域(周波数レンジ)とは?
スペアナの「帯域」とは、その測定器が対応している周波数範囲のことです。例えば「9kHz~3.6GHz」や「100Hz~7.5GHz」といった表記で示されます。測定したい信号の周波数が、この帯域の範囲内である必要があります。
【用途別の周波数帯の例】
・AM/FMラジオ:100kHz~108MHz
・Wi-Fi(2.4GHz/5GHz):2.4GHzまたは5.8GHz付近
・Bluetooth:2.4GHz帯
・LoRa:400MHz帯または900MHz帯
・LTE/5G:700MHz~6GHz以上
したがって、たとえばBluetooth評価で使いたいなら、最低でも3GHz帯域のモデルが必要になります。近年は「9kHz~3.2GHz」「9kHz~7.5GHz」といったモデルが多く、用途に応じて必要な上限周波数を明確にしておくことが選定の第一歩です。
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RBW(分解能帯域幅)の意味と重要性
RBW(Resolution Bandwidth)は、「スペアナが周波数軸でどれだけ細かく分解して表示できるか」の指標です。言い換えると、RBWが小さいほど隣接する2つの信号を区別できる性能が高いということになります。
【RBWのイメージ】
・RBWが広い(例:1MHz) → ノイズや信号が重なって見える
・RBWが狭い(例:10Hz) → 個々の成分が細かく分離されて見える
RBWが小さいほど観測精度は上がりますが、スイープ時間が長くなります。したがって、以下のようなバランスが求められます。
【RBWの設定と用途例】
・10Hz~100Hz:EMI測定、微弱信号観測
・100kHz:高速スイープが必要な一般信号観測
・1MHz以上:Wi-Fiなどの広帯域信号を大まかに観察する用途
EMI評価やノイズ解析を行う予定があるなら、最小RBWが10Hzまたは30Hzに対応している機種を選ぶのが理想的です。
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DANL(表示平均ノイズレベル)とは?
DANL(Displayed Average Noise Level)は、信号が何も入力されていない状態での測定器自体のノイズフロアを表します。dBm単位で示され、値が小さい(=マイナスが大きい)ほど微弱な信号が観測できます。
【DANLの数値と意味】
・−100dBm:一般的な精度
・−120dBm:中級クラス(微小信号の観測が可能)
・−150dBm以下:高性能機(EMI評価・受信信号の検出など)
DANLの性能は、RBWの設定値やプリアンプの有無によっても変化します。プリアンプON時に−155dBm程度まで下がるモデルもあり、ノイズ評価や電波漏洩測定ではDANLの低さが大きな武器になります。
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その他の重要仕様も確認しよう
スペアナを選ぶときは、帯域・RBW・DANLに加えて、以下のような仕様もチェックしておくと失敗がありません。
・スパン(周波数レンジの表示幅)
・トレースモード(MAX HOLD、AVERAGEなど)
・マーカ機能(ピーク検出、差分表示)
・トリガ入力(外部イベントによる測定開始)
・OBW/ACP測定(占有帯域幅、隣接チャネル漏洩)
・データ保存・インターフェース(USB/LAN/HDMI)
機種によっては、チャネルパワー、EMIプリスキャンモード、SCPIコマンド対応などの高機能オプションが搭載されていることもあります。
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価格帯と性能のバランスを見極める
スペクトラムアナライザは、性能に比例して価格が大きく変動します。以下のように、用途に応じたモデル選定がコストパフォーマンス向上の鍵です。
【簡易確認・教育用途】
→ 1GHzまで、RBW = 1kHz以上、DANL = −100dBm程度でも十分
【無線通信の送信確認】
→ 3GHz以上、RBW = 100Hz以下、DANL = −120dBm以上
【EMI/EMC対策・法規制評価】
→ 7GHz以上、RBW = 10Hz対応、DANL = −150dBm、EMIモードあり
低価格ながら高性能な製品を提供しているメーカーには、OWON等の中国メーカーがあります。たとえばOWONの「XSA800シリーズ」は、9kHz~3.2GHzの帯域、10HzのRBW、−161dBmのDANLに対応しており、コストと性能のバランスに優れたモデルです。
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まとめ:スペックを理解すれば最適な選定ができる
スペクトラムアナライザは高機能な測定器ですが、「帯域」「RBW」「DANL」といった基本仕様を正しく理解することで、用途に合った最適なモデル選定が可能になります。
・測定対象の周波数帯をカバーしているか(帯域)
・必要な分解能で信号を見分けられるか(RBW)
・微小信号を捉えられるか(DANL)
この3点を押さえたうえで、トリガ、マーカ、トレース、インターフェースなどの周辺機能も比較すると、長く使える1台が見つかるはずです。
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