FFT vs スペクトラムアナライザ:どちらで周波数解析するべき?
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周波数解析には2つのアプローチがある
電子回路や無線通信の開発・評価において、信号の周波数成分を分析する手段としてよく使われるのが「FFT」と「スペクトラムアナライザ」です。一見するとどちらも周波数を表示できる機器であり、「どちらを使えばよいのか」「どう違うのか」がわかりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、FFTとスペクトラムアナライザの仕組みと特性の違い、そして用途ごとの使い分け方についてわかりやすく解説します。
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FFTとは?オシロスコープで使える周波数解析機能
FFT(Fast Fourier Transform)は、オシロスコープに搭載されている機能のひとつで、取得した時間波形データを周波数領域に変換して表示するものです。時間軸に対する波形を、周波数軸に変換することで、どの成分がどの程度含まれているかを確認できます。
オシロスコープでFFTを使うと、短時間で以下のような情報が得られます。
信号に含まれる基本周波数と高調波の分布
ノイズ成分のスペクトル
信号の帯域幅や周波数ドリフト
ただし、FFTはあくまで「オシロスコープで取得した波形に対する後処理」であり、表示可能な周波数範囲や分解能には制限があります。
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スペクトラムアナライザとは?周波数解析に特化した測定器
一方、スペクトラムアナライザは周波数領域に特化した専用測定器です。入力された信号を直接周波数成分に変換して表示する構成になっており、より高精度・広帯域の解析が可能です。
スペクトラムアナライザは以下のような特長を持っています。
広い周波数レンジ(例:9kHz〜3GHz以上)
高い周波数分解能(RBW設定により10Hz〜)
低いノイズフロア(DANL −150dBmなど)
チャネルパワー、OBW、ACPなど通信規格に特化した解析機能
FFTに比べて価格は高くなりがちですが、無線通信やEMI測定、高周波設計など、周波数解析の精度と信頼性が求められる現場ではスペクトラムアナライザが主流です。
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FFTとスペクトラムアナライザの比較一覧
以下に、FFT(オシロスコープ)とスペクトラムアナライザの機能・性能の比較をまとめます。
比較項目
解析方式:FFTはデジタル処理、スペアナはRF回路+IF変換
周波数レンジ:FFTはオシロスコープの帯域まで(例:200MHz)、スペアナは数GHz以上も可
分解能(RBW):FFTは固定や粗め、スペアナは10Hz単位で可変
ノイズフロア:FFTは−80~−100dBm程度、スペアナは−140dBm以下
測定精度:FFTは粗め、スペアナは高精度
スイープ速度:FFTは高速、スペアナは設定により可変
便利機能:FFTは基本波形解析に特化、スペアナはマーカ・トリガ・OBWなど多数
このように、FFTは「手軽にざっくり確認したいとき」、スペクトラムアナライザは「正確な測定や規格確認が必要なとき」に向いていると言えます。
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FFTが適している場面
以下のような用途では、FFT機能でも十分な解析が可能です。
信号の基礎スペクトルを確認したい(例:矩形波に含まれる高調波)
パワーアンプやローパスフィルタの出力変化を観察したい
オシロスコープですぐに簡易的なノイズ解析を行いたい
異常発振や突発的なスパイクを時間軸+周波数軸で分析したい
特に8ビットや12ビット高分解能のオシロスコープでは、FFT表示の精度もある程度向上しており、ラボや教育用としては非常に有用です。
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スペクトラムアナライザが必須となる場面
以下のような用途では、FFTでは不十分であり、スペクトラムアナライザが必須となります。
無線通信(Bluetooth、Wi-Fi、LTEなど)の送信出力測定
EMI対策やノイズ評価(スプリアス測定、EMCプリスキャン)
チャネルパワー・OBW・ACPなどの規格測定
広帯域信号や微弱信号の精密測定(−120dBm以下)
周波数精度が重要な測定(例:PLLのジッタや周波数変動)
また、規格試験前の事前チェックや製品評価の信頼性確保のためにも、ノイズフロアの低いスペクトラムアナライザが必要になります。
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FFT+スペアナの併用で解析精度を高める
実務では、FFTとスペクトラムアナライザを使い分けるのではなく、「併用」することも多くあります。たとえば、
異常が出たときにFFTで概要をつかみ
その周波数帯をスペクトラムアナライザで詳細測定する
という使い方です。また、FFTで観察した信号の周波数ピークが意図しない帯域に出ていた場合、その原因をスペアナで特定するというアプローチも有効です。
コストや操作性を考慮すれば、まずはFFT付きのオシロスコープで基本確認し、必要に応じてスペクトラムアナライザにステップアップするという選択肢も現実的です。
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まとめ
FFTとスペクトラムアナライザは、どちらも信号の周波数成分を分析する手段ですが、測定精度や解析範囲には大きな違いがあります。
FFTは手軽に使えてオシロスコープ1台で済む手法ですが、測定精度やノイズフロアには限界があります。
スペクトラムアナライザは高価ではありますが、広帯域・高分解能・低ノイズといった点で信頼性のある周波数解析が可能です。
どちらか一方ではなく、目的に応じて適切に使い分ける、または両方を併用することで、信号解析の精度と効率を大きく高めることができます。
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