通信・RS485・シリアル信号の波形と基礎診断(OWON入門)
工場設備、空調機、太陽光パワコン、BEMS、ビル管理システムなど、多くの現場で使用されているのが「RS485」や「UART(シリアル通信)」です。これらの通信異常は、DMMではまったく原因が分からず、“なぜ通信が途切れるのか”“機器が応答しないのか”を判断できないままトラブルが長引くことがよくあります。本記事では、OWONのハンディオシロを使った通信信号の基礎観測と、現場で使える一次診断方法をまとめます。
■ なぜRS485やシリアル通信はトラブルが多いのか
理由は以下の通りです。
・長距離配線で信号減衰が起こる
・ノイズの影響を受けやすい(インバータ、モーター等)
・終端抵抗の設定ミス
・接触不良・芯線断線
・GND電位差が大きい
通信トラブルの8割は“電気的問題”であり、プロトコル以前の話で止まっていることが多いです。
■ RS485の基本動作(差動信号)
RS485は A(+)と B(ー)の2本の信号線の電位差で通信します。
正常
・A と B の波形が対称的
・差動電圧が規定値を維持
異常
・振幅が低い
・片側だけ波形が崩れる
・立ち上がりが遅い
・ノイズが重なる
差動信号は波形を比較することで、状態が非常によく分かります。
■ UART(シリアル)信号の特徴
UARTは TX、RX の片方向信号で通信します。
波形の特徴
・スタートビット → データビット → ストップビット
・一定のタイミングで送受信
正常
・立ち上がりが鋭い
・ビット幅が安定
異常
・ビットがつぶれる
・形が丸い(配線長すぎ)
・ノイズでビット誤認識
通信の乱れは波形に必ず現れます。
■ DMMでは通信異常は絶対に分からない
DMMで測れるのは電圧だけであり、信号の“形”や“周期”を見ることはできません。
通信が不安定なときに大事なのは
・データが正しいタイミングで出ているか
・波形が十分な振幅を保っているか
・ノイズが乗っていないか
これらはオシロでしか確認できません。
■ HDSシリーズで通信波形を見るメリット
・片手で扱えるため制御盤内で便利
・トリガ機能で通信開始タイミングを捉えられる
・ノイズの影響を明確に確認できる
・A/Bラインを同時に観測すれば差動が簡単に判断可能
現場の一次診断に向いた最も手軽な方法です。
■ 終端抵抗ミスの典型波形
RS485で特に多いのが終端抵抗の設定不備です。
終端抵抗なし
・波形が反射し、揺れが大きい
・立ち上がりが丸くなる
終端抵抗の付けすぎ
・信号振幅が弱くなる
反射がある波形はすぐに判別できるため、HDSでの観測が非常に有効です。
■ ノイズ混入時の波形
通信ラインにノイズが乗ると、以下のような波形になります。
・細かい高周波ノイズが乗る
・急峻なスパイクが入る
・周期が乱れる
ノイズ源の例
・インバータ
・モーター
・蛍光灯・LEDドライバ
波形を見れば、どのタイミングでノイズが来ているか分かります。
■ 配線・接触不良の波形
配線トラブルも通信不良の主因です。
特徴
・波形がランダムに欠ける
・振幅が突然低下
・誤ったビットに見える
・周期が揺れる
特に長距離RS485ラインでは、接触不良は非常に多い事象です。
■ GND電位差の問題
通信機器間でGNDが大きく異なると、
・波形が上下にシフト
・差動振幅が不足
・誤動作
などが発生します。
オシロで波形の中心位置を見ることで、電位差の有無を確認できます。
■ 現場での一次診断フロー
通信が“不安定・つながらない”場合、以下でほぼ原因が切り分けできます。
・A/Bラインの波形を観測し、差動振幅を確認
・反射(終端抵抗不備)がないか見る
・ノイズの有無を確認
・振幅が弱い場合はケーブル長・劣化を疑う
・周期が揺れる場合は機器側の不具合も想定
DMMでは不可能な診断も、オシロなら数十秒で判別できます。
■ OWON測定器が通信診断で重宝される理由
・小型で制御盤内でも扱いやすい
・A/Bラインの比較が容易
・ノイズが可視化できる
・信号欠損などの現象が一瞬でわかる
通信の一次診断では最高のコストパフォーマンスを発揮します。
■ まとめ
通信トラブルの多くは“ソフトやプロトコル”ではなく“電気的問題”によって発生します。
RS485やUARTの波形をOWONハンディオシロで確認するだけで、反射・ノイズ・振幅不足・接触不良といった問題を短時間で特定できます。
通信波形を理解することで、現場での診断スピードは大きく向上し、復旧時間も短縮できます。
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