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FFTと周波数ドメイン解析 第1回「時間ドメイン vs 周波数ドメインとは」
- 2025/6/15 -

FFTと周波数ドメイン解析 第1回「時間ドメイン vs 周波数ドメインとは」

電子計測において波形を扱う際、基本となるのが「時間ドメイン(Time Domain)」と「周波数ドメイン(Frequency Domain)」の考え方です。どちらも波形を解析する上で重要な視点であり、使い分けによって見える情報が大きく異なります。第1回では、両者の違いとそれぞれの特徴について解説します。

時間ドメインとは

■ 電圧や電流などの信号を「時間の経過に対する変化」として表示する方式
■ オシロスコープで一般的に表示される横軸が時間、縦軸が電圧の波形が該当する
■ パルスの立ち上がり時間や信号の遅延、タイミングのずれなどを視覚的に確認できる
■ 信号の形状(方形波・三角波・パルス波など)を直接観察できるため、直感的な理解に適している

周波数ドメインとは

■ 信号を構成する「周波数成分の強さ」として表示する方式
■ 通常は横軸に周波数(Hz)、縦軸に振幅(dBやVrmsなど)をとって表示される
■ 1つの信号がどのような周波数の波で構成されているかを解析できる
■ 高周波ノイズや特定の周波数ピークの確認、スペクトル分布の可視化に用いられる

なぜ周波数ドメインが必要なのか

■ 時間軸では見えにくい高周波ノイズや混入信号を識別するため
■ オーディオ信号やRF信号、電源ノイズなど、周波数特性が性能に直結するケースが多いため
■ 信号の中に隠れた周期性のある異常(スプリアス、ハーモニクスなど)を検出するのに有効
■ 周波数フィルタや増幅器などの応答特性を測定・評価する場面で不可欠

FFT(高速フーリエ変換)との関係

■ オシロスコープでは、FFT機能を使うことで時間ドメイン波形を周波数ドメインに変換できる
■ FFTは、任意の時間波形を多数の正弦波に分解し、それぞれの周波数成分を抽出するアルゴリズム
■ 高速処理によりリアルタイムでスペクトル解析を行うことが可能

まとめ

時間ドメインと周波数ドメインは、信号を異なる角度から観察する手段です。両者を適切に使い分けることで、より深い信号理解とトラブルの早期発見につながります。次回は「FFT表示の基本操作とスケーリング」について解説します。

■ 「FFTと周波数ドメイン解析」シリーズ(全5回)