FFTと周波数ドメイン解析 第5回「帯域幅と分解能の関係」
FFT解析を活用する上で、「帯域幅」と「分解能」の正しい理解は不可欠です。これらの概念は相反する側面も持っており、測定目的によって最適な設定が異なります。本記事では、FFTにおける帯域幅と分解能の定義、そして両者の関係について解説します。
帯域幅とは何か
■ 帯域幅(Bandwidth)とは、FFT表示で観測できる最大周波数範囲を指す
■ 最大周波数は、オシロスコープのサンプリングレートに依存し、理論上の上限は「ナイキスト周波数(サンプリングレートの1/2)」となる
■ 例えば1GSa/sであれば、最大で500MHzまでの周波数が観測可能
■ 高い帯域幅は広範囲なノイズや高調波の観測に有利だが、分解能とのトレードオフがある
分解能とは何か
■ 分解能(Frequency Resolution)は、周波数軸における最小の区切り(ステップ)を意味する
■ 分解能は「観測時間の長さ(サンプル数)」によって決まる
■ 一般的には「分解能 = サンプリングレート ÷ FFTポイント数」として表される
■ 長時間の信号をFFT処理すると、分解能が高まり、隣接した成分をより細かく区別できる
帯域幅と分解能の関係
■ FFT解析では、「広い帯域幅を観測するほど、分解能は粗くなる」
■ 逆に、「高い分解能を得るためには、帯域幅を絞る(狭くする)」必要がある
■ つまり、1画面に表示できる周波数範囲を広げると、その中の細かな違いが見えにくくなる
■ たとえば、分解能1Hzを実現するには、1秒間の波形を処理しなければならない
実用上の設定の工夫
■ ノイズの発生源を特定するなら帯域幅重視、微小な成分を分析するなら分解能重視
■ FFTポイント数(1024, 2048, 8192など)を増やすことで、分解能を改善できる
■ 観測時間を延ばすと分解能が向上するが、ノイズの変動や平均化の影響にも注意が必要
■ 適切な帯域/分解能バランスを見つけることが、FFTの効果的な活用に直結する
まとめ
FFTにおける帯域幅と分解能は、設定によって互いに影響し合います。広く見るか、細かく見るか。その目的によって設定を使い分けることで、より精度の高い周波数解析が可能になります。次回は「ウィンドウ関数の役割と選び方」について解説します。
■ 「FFTと周波数ドメイン解析」シリーズ(全5回)
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