OWON XSA800シリーズ スペクトラムアナライザの機能と活用法
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OWONのXSA800シリーズは、最大7.5GHzまでの広帯域をカバーする高性能スペクトラムアナライザです。EMC評価や無線機器の設計、電波干渉解析など、周波数領域での精密な測定が求められる多くの場面で活躍しています。本記事では、XSA800シリーズの仕様・操作性・代表的な機能・活用シーンについて詳しく解説します。
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スペクトラムアナライザとは?
スペクトラムアナライザは、時間領域ではなく周波数領域における信号の成分や強度を可視化するための計測器です。アナログまたはデジタル信号が持つ複数の周波数成分を分離して表示することにより、信号の歪み、ノイズ、干渉源の特定などが可能になります。
特に無線通信やRF(高周波)設計分野では、スペクトラムアナライザは不可欠な存在です。信号の安定性や帯域幅の測定、通信規格に準拠しているかの検証などにも利用されます。
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XSA800シリーズの概要と主な仕様
XSA800シリーズには、モデルごとに異なる最大周波数帯域が設定されています。
・XSA815:9kHz~1.5GHz
・XSA832:9kHz~3.2GHz
・XSA875:9kHz~7.5GHz
すべてのモデルに共通する仕様として、以下のような特長があります。
・分解能帯域幅(RBW):10Hz~3MHz(連続可変)
・表示平均ノイズレベル(DANL):最大−161dBm(プリアンプON時)
・トレース数:最大4本(CLEAR/WRITE、MAX HOLD、MIN HOLD、AVERAGE)
・マーカ数:最大6本、差分マーカ対応
・トリガ:外部、ビデオ
・インターフェース:USBデバイス/ホスト、LAN、HDMI
これらの仕様により、広範囲な周波数解析と高精度なスペクトル観測が可能となっています。
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直感的な操作性と豊富な表示モード
XSA800シリーズは、7インチの高解像度液晶ディスプレイを搭載しており、複数トレースを同時表示して比較できます。各トレースは異なる表示モードに設定できるため、動的変化やピークの捕捉、長期的な傾向の観察が可能です。
・CLEAR/WRITE:リアルタイムの更新表示
・MAX HOLD:ピーク保持
・MIN HOLD:最小値の記録
・AVERAGE:指定回数の平均表示
このように、用途に応じて表示方式を切り替えることで、信号の安定性やノイズの影響を視覚的に評価できます。
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RBW/VTBW設定で解析精度を最適化
RBW(分解能帯域幅)は10Hz~3MHzの範囲で調整可能で、狭帯域信号の測定精度を高めたり、広帯域信号の応答速度を改善したりといったチューニングが行えます。VBW(ビデオ帯域幅)との組み合わせで、より滑らかなスペクトル表示や詳細なノイズ成分の分析も可能です。
この柔軟なフィルタ制御によって、信号の種類や測定目的に合わせた最適な解析が実現できます。
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多機能マーカと測定機能の活用
XSA800シリーズは最大6本までのマーカを設定可能で、ピークの自動検索や差分測定、ノイズフロアの確認が簡単に行えます。マーカ間の周波数差・振幅差をリアルタイムで表示することで、信号間の距離や干渉源の位置特定がしやすくなります。
また、以下のような高機能測定モードにも対応しています。
・チャネルパワー測定(Channel Power)
・隣接チャネル漏洩電力比(ACP)
・占有帯域幅(OBW)
・EMIプリテストモード
これらは、無線通信機器の規格試験やEMC対策評価において、非常に有用な機能群です。
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外部トリガやビデオトリガによる同期測定
外部信号によるトリガ入力や、ビデオトリガ機能を使えば、特定のイベントや周期信号のタイミングに合わせた波形取得が可能です。これにより、時間軸と周波数軸をまたいだ観測や再現性のある測定を実現できます。
たとえば、無線送信の立ち上がり瞬間を正確に観測したい場合など、トリガの有効活用が測定精度を左右します。
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USB・LAN・HDMIなど多彩な接続性
XSA800シリーズは以下の接続オプションを備えています。
・USBホストポート(USBメモリ保存)
・USBデバイスポート(PC接続)
・LANポート(リモート操作)
・HDMI出力(外部ディスプレイ表示)
PCとの接続によって、OWONの専用ソフトウェアを使ったリモート制御、データの自動取得・解析が可能です。測定画面をそのまま外部モニタに出力すれば、チーム内での波形共有や報告資料のスクリーンショット取得もスムーズです。
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測定結果の保存とレポート作成も簡単
測定波形は、USBメモリへ以下の形式で保存可能です。
・CSV形式(スペクトルデータ)
・BMP形式(画面画像)
・設定ファイル(パラメータ保存)
これにより、測定結果をPCで再利用したり、測定条件を再現したりするのが容易になります。トラブル解析の記録やレポート作成に大きく貢献します。
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XSA800シリーズの活用例
XSA800シリーズは、以下のような現場で多く活用されています。
・無線通信機器の設計開発(Bluetooth、Wi-Fi、LTEなど)
・アンテナ設計および放射特性の評価
・EMC対策の事前評価(EMIプリスキャン)
・高周波機器の干渉・混信の原因調査
・製造ラインでの無線出力検査
可搬性がありながら、EMIやチャネルパワー測定にも対応しているため、開発から検査まで幅広く運用できます。
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まとめ
OWON XSA800シリーズは、コンパクトながら高性能なスペクトラムアナライザであり、RF・無線・EMC・通信分野での信号解析に最適なツールです。最大7.5GHzまでの測定レンジ、RBW/VTBWの細かい制御、マーカ・トリガ・FFT・多様な測定モードを備えており、専門的な要求にも十分応える仕様です。
初めてスペクトラムアナライザを導入する方から、既存機の置き換えを検討するエンジニアまで、幅広いユーザーにとってコストパフォーマンスに優れた選択肢となるでしょう。
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