OWON VDS6000シリーズ PCベース・オシロスコープの特長と使い方
OWONの「VDS6000シリーズ」は、PCに接続して使用するUSB接続型の4チャンネル・デジタル・オシロスコープです。最大250MHzの帯域幅と1GS/sのサンプリングレートを備え、安定した性能と手頃な価格帯で、多くの開発現場や教育機関に導入されています。本記事では、VDS6000の機能・特徴・操作方法、そして導入メリットについて、わかりやすく解説します。
■
PCベース・オシロスコープとは?
PCベース・オシロスコープは、オシロスコープ本体にディスプレイやインターフェースを内蔵せず、PCを通じて測定・制御・表示を行うタイプの測定器です。VDS6000シリーズは、USBケーブルでPCと接続し、専用ソフトウェアを介して波形表示や解析を行う構成となっています。
この形式の最大のメリットは、PCの高解像度画面を活かして快適に波形を観察できること、保存・編集・解析などの作業がPC上でそのまま完結する点にあります。
■
VDS6000シリーズのラインナップとスペック
VDS6000シリーズには帯域幅別に複数のモデルが存在し、主に以下のような仕様となっています。
・帯域幅:70MHz / 100MHz / 150MHz / 250MHz
・チャンネル数:4チャンネル(全モデル)
・サンプリングレート:最大1GS/s
・メモリ長:最大24Mポイント
・インターフェース:USB(デバイス側)
・電源供給:USBバスパワーまたはACアダプタ
また、外部トリガ入力端子やパス/フェイル出力端子も装備されており、テストシステムへの統合も可能です。
■
専用ソフトウェアによる直感的な操作性
VDS6000は、OWONが提供する専用ソフトウェア(Windows用)をインストールすることで、すぐに測定が可能になります。UIはOWON独自のインターフェースで、タブ構成やグラフィカルなボタン配置によって、直感的な操作が実現されています。
操作は全てマウスまたはキーボードで行え、チャンネルのON/OFF切り替え、スケール設定、トリガ条件設定などがすべてソフト上で完結します。
■
4チャンネル入力で複雑な波形も同時解析
VDS6000シリーズは4チャンネル入力を標準搭載しており、マルチ信号の同時観測に強みがあります。複数のアナログ信号を同時に観測・比較したい場面では、4CHオシロスコープの力が発揮されます。
たとえば、マイコンのI/OやADC/DAC出力のモニタ、電源ラインと制御信号の比較、CAN/LIN信号のタイミング確認などにおいて、4チャンネルを活用することで、タイムラグや異常検出が効率的になります。
■
豊富なトリガ機能で正確な波形取得
VDS6000には、以下のような多彩なトリガモードが搭載されています。
・エッジトリガ
・ビデオトリガ(NTSC, PAL, SECAM)
・パルストリガ
・スロープトリガ
・ウィンドウトリガ
・オルタネートトリガ
これにより、単純な信号から複雑なイベント信号まで、安定して波形を捕捉することが可能です。
■
FFT解析で周波数領域の分析も
VDS6000はFFT(高速フーリエ変換)機能を搭載しており、時間波形を周波数スペクトルに変換して表示することができます。ノイズの周波数成分を確認したり、フィルタ通過後の信号変化を評価するなど、アナログ回路設計時の周波数特性解析に活用できます。
表示形式もdBVまたはVrmsで選べ、スパン設定やスケーリングも柔軟に行えます。
■
演算機能・測定機能も充実
加算・減算・乗算・除算といった波形演算や、CH1−CH2などの差分波形表示にも対応しています。また、周期・周波数・RMS・平均値・最大/最小などの自動測定機能も搭載されており、複数のパラメータを同時に画面に表示可能です。
それにより、波形の数値的な定量評価や比較が効率的に行えます。
■
波形保存・共有が簡単にできる
測定データはCSVやBIN形式で保存でき、後からExcelや他のツールで再解析することが可能です。また、画面のキャプチャはPNG/BMP形式で出力できるため、報告書作成や他部署との情報共有にも便利です。
波形保存はワンクリックで可能で、記録作業のストレスもありません。
■
SCPI対応で外部制御も可能
VDS6000はSCPIコマンドに対応しており、USB経由で外部制御が可能です。PythonやLabVIEW、C++などの開発環境から制御することで、自動試験装置や連続測定システムの構築にも対応します。
オープンなインターフェース仕様により、テスト環境の柔軟な構築が可能です。
■
主な用途と導入メリット
VDS6000シリーズは、以下のような現場での活用に適しています。
・研究・開発部門でのアナログ回路検証
・大学・高専での教育実習や実験
・PCベースでの信号監視・記録用途
・コストを抑えた多チャンネル測定の導入
・据え置き型より省スペースなラボ環境の構築
本体が非常にコンパクトであり、ノートPCと組み合わせれば持ち運びも容易なため、屋外測定やフィールド試験でも有効に活用できます。
■
まとめ
OWON VDS6000シリーズは、4チャンネル対応の高機能PCベース・オシロスコープとして、多くの測定現場で高い評価を得ています。最大250MHzの帯域幅、FFT解析、波形演算、多彩なトリガに対応しながら、リーズナブルな価格帯で導入できる点が大きな魅力です。
従来型の据え置き型オシロスコープに比べて柔軟性が高く、測定から保存・解析までをPC上で完結できる本機は、今後の電子計測スタイルにマッチした選択肢と言えるでしょう。
関連製品
Previous: OWON XDS3000シリーズ オシロスコープ FAQ
もっと用語集
- OWON XDS3000シリーズ オシロスコープ FAQ
- スペクトラムアナライザの選び方:帯域・RBW・DANLの意味と基準
- OWON TAO3000シリーズ タブレット・オシロスコープの機能と活用ガイド
- OWON SPEシリーズ シングルチャンネル直流電源の使い方と機能解説
- OWON VDS6000シリーズ PCベース・オシロスコープの特長と使い方
- OWON XDS3000シリーズ 4チャンネル デジタル・オシロスコープの特長と活用法
- OWON XSA800シリーズ スペクトラムアナライザ FAQ
- OWON XSA800シリーズ スペクトラムアナライザの機能と活用法
- スペクトラムアナライザとは?仕組み・使い方・活用例をわかりやすく解説
- スペクトラムアナライザの基礎知識:オシロスコープとの違いとは?
- EMI対策に必須!スペクトラムアナライザによるノイズ測定入門
- 無線通信の開発におけるスペクトラムアナライザの活用法とは?
- OWON VDS6000シリーズ PCベース・オシロスコープ FAQ