300Wクラスで選ぶ直流電源ベスト3:SPE・SPM・SPS比較
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はじめに:300WクラスのDC電源は実験・開発に最適な中核モデル
電子回路の開発や評価、実験において、出力300Wクラスの直流電源は「ちょうどいいスペック」として多くの現場で採用されています。
小型ながら十分な出力を確保できるため、測定器の駆動、電子負荷の供給源、通信機器の安定動作など幅広い用途で活用されます。
OWONでは、このクラスに複数のラインアップを展開しており、代表的なのが次の3シリーズです。
・SPEシリーズ(堅牢な定番電源)
・SPMシリーズ(表示機能付きマルチ機能電源)
・SPSシリーズ(ファンレス静音設計)
本記事では、これら3シリーズを仕様・価格・使い勝手の面で比較し、ニーズ別に最適なモデルを紹介します。
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比較対象その1:SPEシリーズ(最大出力300W・拡張性重視)
SPEシリーズは、OWONの中でも古くから展開されている信頼性の高いDC電源シリーズです。安定した出力性能と高い応答性が特徴で、開発現場や評価工程でも長く使用されてきました。
【代表モデル】
SPE6053(60V / 5A / 300W)
SPE3103(30V / 10A / 300W)
SPE6103(60V / 10A / 300W)
【主な特長】
・10mV / 1mAの出力分解能
・過電圧、過電流、過熱の各種保護搭載
・3組のプリセット設定を保存可能
・USB接続によるSCPI制御対応
・2.8インチLCD搭載、視認性良好
【メリット】
・300Wでも幅広い電圧/電流選択肢あり
・操作性に優れ、ベンチトップ向き
・長時間安定供給に強い
【こんな方におすすめ】
・汎用性が高く、長期間使える「基幹電源」を探している方
・多様な電圧・電流パターンを試したい開発担当者
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比較対象その2:SPMシリーズ(測定表示機能つき・省スペース重視)
SPMシリーズは、出力機能に加えて「リアルタイム測定表示機能」を搭載した1台2役のDC電源です。電源としての役割と、マルチメーター的な計測確認を1台でこなせるのが最大の魅力です。
【代表モデル】
SPM6053(60V / 5A / 300W)
SPM3103(30V / 10A / 300W)
SPM6103(60V / 10A / 300W)
【主な特長】
・出力と測定表示を同時に可能
・10mV / 1mA分解能
・CV/CCモード自動切替
・USB経由でPC制御可能
・バックライト付きLCD表示パネル
【メリット】
・出力電圧/電流の確認が簡単にできる
・別途テスターを用意せずとも計測可能
・省スペースかつ操作性に優れる
【こんな方におすすめ】
・実験やトラブル対応で現場作業が多い方
・電源と測定を簡易にまとめたい個人ユーザー
・教育現場や学生実習でも直感的に使いやすいモデル
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比較対象その3:SPSシリーズ(ファンレス静音・低価格志向)
SPSシリーズは、低ノイズ・ファンレス設計が特徴のDC電源です。静音性を重視した実験環境や、連続稼働時の熱と音の対策が求められる場所で特に重宝されます。
【代表モデル】
SPS6051(60V / 5.1A / 150W)
※300Wモデルは未展開のため、近似モデルとして比較
【主な特長】
・完全ファンレス設計
・10mV / 1mAの高分解能出力
・過電圧、過電流保護搭載
・コンパクトかつ軽量設計
・低価格設定で導入しやすい
【メリット】
・音が静かで実験環境を乱さない
・機械内部にホコリが入りにくい
・ベーシック機能に特化しているためシンプルに扱える
【こんな方におすすめ】
・音の静かな測定環境を重視したい方
・制御や表示機能よりコスパ優先の導入を考える方
・スペースに制限がある研究机や教卓での運用
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仕様一覧比較:SPE・SPM・SPS(300Wクラス)
比較項目 | SPEシリーズ | SPMシリーズ | SPSシリーズ(150W) |
---|---|---|---|
最大出力 | 300W | 300W | 150W |
電圧レンジ | 最大60V | 最大60V | 最大60V |
電流レンジ | 最大10A | 最大10A | 最大5.1A |
測定表示機能 | なし | あり | なし |
ファン音 | あり | あり | なし(静音) |
USB制御 | 対応 | 対応 | 非対応 |
SCPIコマンド | 対応 | 対応 | 非対応 |
本体重量 | 約1.8kg | 約2kg | 約1.6kg |
価格帯 | 約19,800〜22,000円 | 約28,600〜33,000円 | 約26,400円 |
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結論:重視するポイントで選ぶ300Wクラスの最適解
300Wクラスの直流電源を選ぶ際、どのモデルがベストかは「何を重視するか」で変わります。以下に簡単にまとめます。
■高信頼性と汎用性を重視するなら:SPEシリーズ
→ 豊富なモデルと高安定性。研究開発向けの基幹モデル。
■操作性と測定表示の手軽さを重視するなら:SPMシリーズ
→ 電源+モニタ表示の1台2役。作業効率の向上を狙うなら最適。
■静音性と価格重視なら:SPSシリーズ
→ 小型、ファンレスで導入コストも抑えられる省スペース電源。
どのシリーズにもOWONらしい「価格以上の機能性」が詰め込まれており、いずれも現場やユーザーの声に応える優れた製品です。
用途・環境・目的に応じて、最適な1台を選定いただく参考になれば幸いです。
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