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スペクトラムアナライザ導入事例:教育機関・開発・品質保証の現場から
- 2025/7/6 -

スペクトラムアナライザ導入事例:教育機関・開発・品質保証の現場から


スペクトラムアナライザは誰のための測定器か?

スペクトラムアナライザは、無線信号やノイズ、電子回路からの放射を周波数成分として可視化できる高性能測定器です。以前は高価で専門家向けの機器というイメージがありましたが、近年では小型・低価格モデルの登場により、教育現場や一般の製品開発、品質保証部門でも幅広く導入が進んでいます。

本記事では、スペアナの具体的な導入シーンとして、「教育機関」「研究開発現場」「品質保証部門」の3つの視点から、実際の活用例とメリットを紹介します。


教育機関での導入事例:工学実験を「見える化」

【導入先例】
大学の電子工学科・高専の電気科・職業訓練校の通信講座など

【活用内容】
授業内のRF実験、アンテナ測定、AM/FM復調、ノイズ観察など

【導入目的】
教科書では理解しづらい「信号の周波数特性」や「帯域幅」「スプリアス」といった概念を、実際の波形として可視化することで、学生の理解を深めることを目的としています。

【効果】
例えば、矩形波に高調波が含まれることや、フィルタ通過後にスペクトルがどう変化するかなどを、学生が自ら確認できることで、抽象的な理論と実際の測定現象のギャップが埋まり、応用力が高まるという効果が報告されています。

【導入機種例】
OWON XSA800シリーズ(最大3.2GHz、RBW 10Hz〜)などは、教育機関向けにも多数採用実績があります。低価格かつUSB保存・スクリーンキャプチャ対応でレポート作成にも便利な点が好評です。


開発現場での導入事例:無線通信の信号確認と対策

【導入先例】
IoT機器メーカー、電子回路開発企業、ベンチャー系ハードウェア開発企業など

【活用内容】
BluetoothやWi-Fiの通信確認、LoRaやZigBeeの帯域評価、スプリアス測定、アンテナ整合のチェック、トラブル解析など

【導入目的】
開発段階での無線機能の実装確認や、意図しない周波数成分の漏洩チェック、基板レイアウトによる信号干渉の評価など、**「時間軸では見えない問題の発見」**を目的にスペアナが活用されています。

【効果】
たとえば、Wi-Fiモジュールのファーム更新後に通信不良が発生した際、スペアナで確認するとチャネルの帯域外にまで信号が広がっていたことがわかり、原因の特定と修正が迅速に行われたという事例もあります。

【導入メリット】
・ノイズ源の特定により基板設計の最適化
・法規制対応の事前チェック(EMC試験前のプリスキャン)
・送信出力の調整による消費電力の最適化

製品化前の段階でスペアナを活用することで、手戻りコストの削減と開発期間短縮が実現されました。


品質保証部門での導入事例:量産品の電波特性検査

【導入先例】
無線機器メーカー、医療機器メーカー、電源機器製造業、車載電子部品メーカーなど

【活用内容】
最終製品の無線出力検査、規格内動作確認、製造ばらつきの監視、不良品の原因解析、EMIノイズの検出など

【導入目的】
製造ラインにおいて、最終検査項目としてスペクトラム特性の安定性を確認することで、量産品の品質を保証するのが目的です。

【活用効果】
ある通信機器メーカーでは、ラインでの抜き取り検査にスペアナを導入したことで、トランシーバー基板の一部で不定期に発生するスプリアスを検出し、部品の個体差が原因であることを特定しました。

【導入機能のポイント】
・トレース保存機能による前回製品との比較
・マーカ+トリガを用いた周波数シフトの自動監視
・データログ保存による製品トレース管理

また、USB保存やCSV出力を活用し、検査記録をレポートに即活用できる点も工数削減に貢献しています。


スペアナ導入における選定ポイント

各業種で導入されているスペアナには以下のような共通ポイントがあります。

周波数帯域:対象信号に応じて最低でも2GHz以上を推奨
RBW:EMI評価や微弱信号確認には10Hz対応が望ましい
DANL(ノイズフロア):−130dBm以下であれば実用性あり
トレース機能:Max Hold、Averageなど波形比較が可能か
保存/出力機能:USB、CSV、LAN接続対応などがあると便利
コストパフォーマンス重視なら、OWONやSIGLENT、RIGOLといった中堅メーカーの3GHz前後のモデルが現場でよく選ばれています


まとめ:現場で活きるスペアナの導入効果

教育機関では「見える化による理解の促進」
開発現場では「問題の早期発見と対策」
品質保証では「安定性と信頼性の確保」

と、スペクトラムアナライザはそれぞれの現場で異なる価値を発揮しています。

以前は高価で扱いにくいというイメージのあったスペアナも、近年では操作性が改善され、小型・軽量化・多機能化が進み、誰でも導入しやすい測定器になりました。

これからスペアナ導入を検討する方は、ぜひ各事例を参考に、現場のニーズに合ったモデルを選定してみてください。

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