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初心者向け!スペクトラムアナライザの使い方ステップガイド
- 2025/7/6 -

初心者向け!スペクトラムアナライザの使い方ステップガイド


スペクトラムアナライザとは何か?

スペクトラムアナライザ(spectrum analyzer)は、信号に含まれる周波数成分をリアルタイムで可視化する測定器です。オシロスコープが「時間軸」で信号波形を表示するのに対し、スペアナは「周波数軸」で信号の強度を表示します。主にRF信号やノイズ、通信波形の解析に使われます。

無線通信の開発、EMI評価、アンテナ設計、フィルタ特性の確認など、幅広い場面で活用されています。

この記事では、初めてスペクトラムアナライザを操作する方が迷わず測定を進められるよう、ステップ形式で解説していきます。


ステップ1:測定環境と機器の準備

まずは測定環境と機器を整えましょう。

スペクトラムアナライザ本体(例:OWON XSA800など)
測定対象(発振器、通信モジュールなど)
SMA/BNCなど適切なケーブル
50Ω終端器またはアッテネータ(必要に応じて)
信号レベルが不明な場合は、入力が過大にならないよう、事前にアッテネータで保護します。RF入力に直接接続する前に、仕様を確認して最大入力電力を超えないように注意しましょう。


ステップ2:周波数範囲の設定(Start/StopまたはCenter/Span)

スペアナの画面には、横軸が「周波数」、縦軸が「信号強度(dBm)」として表示されます。まずは、観測したい信号が含まれる周波数範囲を設定します。

Start/Stop:観測範囲を明示的に設定(例:Start = 2.4GHz、Stop = 2.5GHz)
Center/Span:中心周波数と観測幅で設定(例:Center = 2.45GHz、Span = 100MHz)

信号の存在する帯域がわからないときは、まず広め(例:Start = 100MHz、Stop = 3GHz)に設定して全体像を把握しましょう。信号が確認できたら、スパンを狭めて詳細に観測します。


ステップ3:振幅(Amplitude)とアッテネーションの設定

次に、縦軸のスケールや基準レベルを設定します。

Reference Level(Ref):画面上部の基準レベル(例:−10dBm)
Scale/Div:1目盛あたりのdB数(例:10dB/div)
Attenuation:入力信号に対する内部減衰設定(自動/手動)

信号が画面外に出ている場合はRefレベルを上下させるか、アッテネータ設定を見直すことで波形を画面内に収めることができます。


ステップ4:RBW/VBWの設定

RBW(Resolution Bandwidth)は、どれだけ細かく周波数を分解して表示するかを決める重要なパラメータです。VBW(Video Bandwidth)は、表示のなめらかさを制御します。

RBWが小さいと分解能は上がりますが、スイープ時間が長くなります。

RBW例:100kHz(広帯域)、10kHz(中帯域)、100Hz以下(EMI測定)
VBWはRBWと同じかそれ以下に設定するのが一般的です。ノイズや細かな信号を見たいときはRBWを狭く設定しましょう。


ステップ5:トレース表示モードの選択

トレースとは、スペアナ画面に描かれる波形のことです。表示の仕方によって結果が変わることがあります。

Clear Write:常に最新の波形を表示
Max Hold:過去の最大値を保持(間欠信号の検出に有効)
Average:過去の波形を平均して滑らかに表示

無線信号の瞬間的な変化を捉えたい場合はMax Hold、ノイズの傾向を安定して見たい場合はAverageが便利です。


ステップ6:マーカで周波数とレベルを読み取る

波形が表示されたら、「マーカ」機能で特定周波数の信号強度を数値で確認しましょう。

マーカを手動で動かす、または「Peak Search(ピーク探索)」を使えば、最大信号位置を自動で検出してくれます。2点間の周波数差や振幅差を測る「デルタマーカ」も活用すると便利です。


ステップ7:測定機能の活用(チャネルパワー・OBW・ACPなど)

スペクトラムアナライザには、便利な測定専用機能も搭載されています。

チャネルパワー:指定した帯域内の総合出力(dBm)を測定
OBW(占有帯域幅):信号の99%のパワーを含む帯域を自動で算出
ACP(隣接チャネル漏洩電力):隣接帯域への干渉を数値化

通信機器の評価やEMC対策の事前確認において、これらの測定は非常に役立ちます。


ステップ8:波形の保存とレポート出力

観測した波形や数値データは、USBメモリやSDカードに保存することで、後からレポート作成や比較に利用できます。

保存形式には以下のような種類があります。

画面キャプチャ(PNG、BMPなど)
CSV形式のデータ出力
設定ファイル(再現性のある再測定に便利)

データを他部署や顧客に共有する場合は、画像や数値データをセットで保存しておくと説明がスムーズになります。


ステップ9:トリガ機能の活用(必要な場合)

スペアナによっては、外部トリガやレベルトリガを使用して特定のイベントだけを測定することができます。突発的なノイズや断続的な送信波形を正確に捕らえたいときに有効です。

外部トリガ:外部信号で測定開始
ビデオトリガ:画面上のレベル変化に基づいて測定開始

通常は常時スイープで問題ありませんが、一瞬だけ発生するような信号を捕捉したいときにはトリガ設定を活用しましょう。


ステップ10:繰り返し測定と結果の比較

最後に、測定した結果が安定しているかを繰り返し確認しましょう。また、必要に応じてフィルタや部品を変更して、スペクトルがどう変化するかを比較すると、設計の最適化に役立ちます。

トレースAとトレースBを使った比較や、デルタマーカを用いたビフォーアフターの差分計測もおすすめです。


まとめ

スペクトラムアナライザは、最初は難しそうに見えるかもしれませんが、基本的なステップを押さえれば誰でも使いこなせる測定器です。

周波数範囲を設定し
振幅とRBWを調整し
トレースとマーカで信号を観察し
必要な測定機能で数値化する

という流れを身につければ、測定の精度も効率も格段に上がります。初めての方はこの記事を参考に、ぜひ実機での操作に挑戦してみてください。



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