FFTと周波数ドメイン解析 第4回「オーディオ信号や電源リップルの解析」
FFT解析は、オーディオ信号や電源ラインの品質評価にも広く活用されています。これらはどちらも一見シンプルな波形に見えますが、周波数ドメインで見ることで隠れた情報を明確に可視化できます。本記事では、オーディオや電源リップルにおけるFFTの具体的な応用について解説します。
オーディオ信号のFFT解析
■ オーディオ信号は人間の可聴域(20Hz〜20kHz)の範囲に主成分を持つ
■ FFTを用いることで、周波数スペクトル上に音の成分がどのように分布しているかを確認できる
■ ディストーション(ひずみ)は、基音に対する高調波成分の出現として現れる
■ ノイズフロアの高さやスプリアスの有無から、アンプやDACの性能を評価可能
■ チャンネルごとにスペクトルを比較することで、左右バランスやノイズの偏りも把握できる
解析時のポイント(オーディオ)
■ FFTウィンドウはハニングが一般的。音の変化を滑らかに観察できる
■ ログスケール表示に切り替えると、低レベルノイズや高調波が見やすくなる
■ 平均化機能を使えば、短時間では見えない成分の傾向を確認できる
■ ピークホールドで最大振幅を記録し、過大信号や異常波形の検出に役立てられる
電源リップルのFFT解析
■ 電源ラインに現れる不要な交流成分(AC)は「リップル」と呼ばれる
■ 主に電源スイッチングの周波数(数kHz〜数百kHz)やその高調波成分として観測される
■ 時間ドメインでは小さな波形にしか見えないが、FFTを使うと特定周波数でのピークとして可視化される
■ 電源フィルタやコンデンサの性能評価、ノイズ対策の確認に有効
解析時のポイント(リップル)
■ 入力には高分解能のオシロスコープやアクティブプローブの使用が推奨される
■ 帯域幅が不十分だとリップルの高周波成分が捉えられないため、装置の性能に注意
■ 電源ON直後や負荷変動時に発生する一過性のリップルも観測対象になる
■ FFT結果を使って、ノイズ源の周波数と一致するかどうかを検証することで対策が立てやすくなる
まとめ
オーディオや電源といったアナログ系の信号も、FFTを使えば非常に多くの情報が得られます。時間ドメインでは捉えきれない細かなひずみやノイズ成分の解析により、設計や検証、改善に大きく貢献します。次回は「スペクトルのピーク解析とパラメータの読み取り」について解説します。
■ 「FFTと周波数ドメイン解析」シリーズ(全5回)
Previous: FFTと周波数ドメイン解析 第5回「帯域幅と分解能の関係」
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