FFTと周波数ドメイン解析 第3回「ノイズ解析への応用」
電子機器の性能や安定性に大きく関わるのが「ノイズ」です。ノイズは目視や時間軸の波形では捉えにくいこともあり、FFTを用いた周波数ドメインでの解析が非常に有効です。今回は、FFT機能を活用したノイズ解析の基本と、現場での具体的な応用例について紹介します。
ノイズ解析が重要な理由
■ ノイズは信号品質を劣化させ、誤動作や通信エラーの原因となる
■ 低周波から高周波まで、様々な周波数帯域にノイズが存在する
■ 外部要因(電源、モーター、無線機器)や内部回路からもノイズは発生するため、設計段階での可視化が不可欠
■ 時間ドメインでは埋もれて見えないノイズ成分も、周波数ドメインではピークとして現れる
FFTでできるノイズの分類
■ 低周波ノイズ(電源由来の50/60Hz成分、リップル)
■ 高周波ノイズ(スイッチングノイズ、EMI源)
■ 広帯域ノイズ(ランダムな高周波成分を含む)
■ スプリアス(本来不要な特定周波数成分)や高調波(基準信号の整数倍成分)など
実際の測定手順とポイント
■ オシロスコープのFFT機能を使い、対象波形に対してリアルタイムで周波数分布を確認
■ 特定のノイズ周波数が存在するか、信号のスペクトルに異常なピークがないかを観察
■ ノイズ源を特定するためには、システムの電源ON/OFF、外部接続の着脱、信号経路の切替などの比較が有効
■ ノイズが時間変動する場合は、ピークホールドや平均化機能を併用すると全体傾向を把握しやすくなる
ノイズ対策につながる活用法
■ ノイズ周波数に対して適切なフィルタを設計・適用する
■ ケースや配線のシールド効果の確認(FFTでノイズレベルの差を見る)
■ 電源ラインに入る不要成分の確認(スイッチング電源のノイズ評価など)
■ デジタル回路のクロストークやEMC対策にもFFTが活用できる
解析時の注意点
■ 使用するプローブやケーブルもノイズを拾う可能性があるため、測定系の整備が重要
■ 測定対象と機器のGNDが正しく接続されていないと、誤ったノイズ成分が観測されることがある
■ FFT解析は帯域や分解能に制限があるため、信号の選定や設定値の調整が必要
■ ノイズ成分が小さすぎると、オシロスコープのノイズフロアに埋もれてしまうことがある
まとめ
FFTを活用したノイズ解析は、回路設計・評価・トラブルシューティングにおいて非常に重要な手法です。周波数ドメインでノイズを「見える化」することで、問題の早期発見と対策に直結します。次回は「スプリアスや高調波の測定テクニック」について紹介します。
■ 「FFTと周波数ドメイン解析」シリーズ(全5回)
Previous: FFTと周波数ドメイン解析 第4回「オーディオ信号や電源リップルの解析」
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