オシロスコープで見るノイズ ― 電気信号の“ゆらぎ”を正しく理解する
電子回路を設計・測定していると、理想とは違う波形の「ゆらぎ」に気づくことがあります。
これがノイズ(Noise)です。
オシロスコープは、電圧の時間変化を直接観測できるため、
ノイズの発生源を見つける上で最も有効な計測器のひとつです。
ここでは、オシロスコープでノイズを正しく観測・理解する方法を、実際の波形をイメージしながら解説します。
ノイズとは何か ― 電気信号に混ざる“不要な変化”
ノイズとは、本来の信号に意図せず重なった電圧の変動を指します。
電子回路では、電源、スイッチング素子、モーター、通信信号、周囲の電磁波など、
さまざまな要因でノイズが発生します。
・高周波ノイズ(スイッチング素子・電磁干渉)
・低周波ノイズ(電源リップル・周期ゆらぎ)
・突発ノイズ(静電気・スパイク)
ノイズは“異常”ではなく、“存在して当然の現象”でもあります。
重要なのは、「どの程度のノイズが問題か」を定量的に把握することです。
オシロスコープでノイズを観測する準備
ノイズを正しく測るには、測定環境とプローブの接続方法が重要です。
・グラウンドを短く接続する
プローブのアースリードを長いまま使うと、そこに誘導ノイズが乗ります。
できるだけ短く接続し、ループを小さくするのが基本です。
・ACカップリングを使う
DC成分を除き、微小な交流ノイズだけを観測できます。
信号の平均値ではなく“揺れ幅”に注目したいときに便利です。
・帯域制限(Bandwidth Limit)をONにする
オシロスコープの高周波成分を制限し、実際のノイズだけを抽出しやすくなります。
一般的に20MHzリミット機能を使うと、低周波ノイズ観測に適しています。
波形で見るノイズの特徴
オシロスコープでノイズを観測すると、波形に細かな“ざらつき”や“突起”が見られます。
高周波ノイズ
細かいギザギザの波形として現れます。スイッチング電源やデジタル回路で発生しやすく、
周期が短く、振幅が小さいのが特徴です。
低周波ノイズ
波形全体がゆっくりと上下に揺れる現象です。主に電源リップルや不安定な基準電圧が原因です。
スパイクノイズ
一瞬だけ高いピークが出る尖った波形です。リレーやモーターのON/OFF、静電気放電などで発生します。
これらを時間軸で観察することで、ノイズの「性質」と「発生タイミング」が明確になります。
FFT解析でノイズの周波数成分を確認する
OWONのデジタル・オシロスコープには、FFT解析(周波数スペクトル表示)機能が搭載されています。
これは、時間波形を周波数軸に変換して、ノイズがどの周波数帯に集中しているかを確認できる機能です。
・50Hz/60Hz付近 → 商用電源由来のハムノイズ
・数十kHz付近 → スイッチング電源やPWM制御のノイズ
・数MHz〜数十MHz → 高速デジタル回路やクロックの放射ノイズ
FFT表示を使うと、「どこからノイズが入っているのか」を定量的に判断できます。
ノイズの原因を特定するための観測ポイント
ノイズ解析では、波形を観るだけでなく、発生源を切り分けることが重要です。
・電源ラインで観測 → リップル、スイッチングノイズ
・信号ラインで観測 → クロストーク、反射
・グラウンドで観測 → ループノイズ、電位差
複数のポイントを比較して、どこにノイズが多いかを見つけることで、
原因の回路やデバイスを特定できます。
安全にノイズを観測するために
ノイズ観測は微小信号を扱うため、誤接続や静電気の影響を受けやすい作業です。
・高電圧ラインを直接測定しない(必要な場合は差動プローブを使用)
・金属部に不用意に触れない
・絶縁マット上での作業を徹底する
また、プローブの補正(キャリブレーション)を定期的に行うことで、
ノイズレベルをより正確に比較できます。
OWONのオシロスコープがノイズ解析に適している理由
OWONのデジタル・オシロスコープは、
・12ビット高分解能モデル(細かなノイズ成分を視認しやすい)
・FFT解析・トレンド表示など多彩な解析機能
・USB/LANによるデータ記録・共有対応
を備えており、ノイズ測定に必要な要素をコンパクトにまとめています。
また、教育現場や研究室でも扱いやすい直感的なUIで、
「ノイズを見る → 分析する → 改善する」という一連の流れを効率化できます。
まとめ ― ノイズを“見る”ことが回路改善の第一歩
ノイズは、すべての電子機器に存在する自然現象です。
しかし、オシロスコープでその波形を観察し、発生源を推定することで、
製品の安定性や信頼性を大きく高めることができます。
OWONのオシロスコープは、
ノイズの発生状況を正確に“見える化”し、
開発・教育・検証の現場で活躍する頼もしいツールです。
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