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メモリ長と観測時間の関係 ― 長時間波形を正確に記録するために
- 2025/10/14 -

メモリ長と観測時間の関係 ― 長時間波形を正確に記録するために

オシロスコープで信号を観測する際、「メモリ長(Memory Depth)」という項目を見かけます。
これは測定結果を保存できる“サンプル数の上限”を示す性能指標で、
観測できる時間の長さや波形の細かさを左右する重要な要素です。
メモリ長を正しく理解すると、短い現象から長時間の挙動まで、
目的に応じた最適な設定ができるようになります。


メモリ長とは何か

メモリ長とは、オシロスコープが一度に記録できるサンプル点の数を表します。
単位はポイント(pts:points)で示され、1Mpts(100万点)や100Mpts(1億点)などと表記されます。

この値が大きいほど、長時間の波形を詳細に記録できます。
一方で、メモリ長が短いと短期間しか記録できず、波形が途中で切れることがあります。
つまり、メモリ長は「どれだけ長く」「どれだけ細かく」波形を保存できるかを決める要素です。


メモリ長とサンプリングレートの関係

観測時間(T)は、メモリ長(N)とサンプリングレート(Fs)の比で求められます。

 T = N / Fs

たとえば、サンプリングレートが1GSa/sで、メモリ長が10Mptsの場合、
T = 10M / 1G = 0.01秒(10ミリ秒)分の波形が記録できます。

もし同じ設定で100Mptsのメモリを使えば、
観測時間は0.1秒まで伸ばすことができます。

このように、メモリ長を増やすことで、より長い時間の信号を1回で観測できるようになります。


メモリを増やせば良いわけではない理由

一見すると「メモリは多いほど良い」と思われがちですが、
メモリを増やすと内部処理が重くなり、波形更新レートが低下する場合があります。

長時間波形を詳細に記録すると、その分データ転送や表示処理にも時間がかかるため、
リアルタイムの表示が遅れたり、操作がもたつくこともあります。

また、波形全体を高いサンプリングレートで長時間記録する場合、
膨大なデータを保存する必要があり、メモリ容量を使い切ってしまうこともあります。

このため、オシロスコープでは「必要な範囲だけを高精度で記録する」工夫が重要です。


時間軸の拡大とメモリの使い方

メモリ長が長いオシロスコープでは、
波形を拡大表示してもデータが粗くならず、詳細な解析が可能です。
短いメモリでは、拡大するとサンプル点が不足して波形がギザギザになってしまいます。

たとえば、ノイズやトランジェント(過渡応答)のような瞬間的な現象を
長時間記録した波形の中から探したい場合、
長いメモリとズーム機能を組み合わせることで効率的に解析できます。

この“全体を見てから詳細を拡大する”アプローチは、
教育・研究・製品評価のいずれでも有効です。


メモリ使用量を抑える工夫

長時間観測を行う際は、次のような工夫でメモリを効率的に使うことができます。

・必要な信号区間をトリガで絞り込む
・ロールモード(低速スキャン)を活用する
・サンプリングレートを観測対象に合わせて調整する
・波形記録を分割(シーケンス)モードで行う

特にシーケンスモードでは、信号の特定イベントごとに分割して記録できるため、
無駄なデータを省きながら、トリガ発生ごとの変化を比較できます。


長時間観測での注意点

長時間の波形記録では、時間ドリフトやノイズの影響も考慮する必要があります。
電源や温度の変化で基準レベルが少しずつずれる場合があるため、
定期的にキャリブレーションを行うことが望ましいです。

また、メモリが大きいほど保存ファイルの容量も増えるため、
USBやLAN経由でのデータ転送時間が長くなることにも注意が必要です。


OWONオシロスコープのメモリ設計と特長

OWONのオシロスコープは、メモリ長と更新性能の両立を重視しています。
シリーズによっては最大1Gポイント級のメモリを備え、
長時間記録と高分解能表示を両立できます。

さらに、ズーム機能・分割記録・USB保存機能を組み合わせることで、
教育実験や現場試験でも柔軟な解析を実現します。

これにより、「短時間の過渡現象を逃さず、長時間挙動も確認する」
という二つのニーズを1台で満たすことができます。


まとめ ― メモリ長は“時間の視野”を決める

メモリ長は、オシロスコープの「観測できる時間の幅」を決める性能です。
長いメモリは広い視野を提供し、短いメモリは高速なレスポンスを実現します。
どちらを優先するかは、観測の目的によって異なります。

・現象を逃さず見る → 高速更新・短メモリ
・長時間の挙動を追う → 大容量メモリ・シーケンスモード

このバランスを理解して使い分けることが、
正確で効率的な測定を行うための第一歩です。

OWONのオシロスコープは、メモリ容量と処理速度の最適設計により、
“速さ”と“長さ”の両立を実現しています。
信号の全体像と瞬間の変化、その両方を捉えるための理想的なツールです。