CHを活かしたノイズ源特定の手法
ノイズ解析の基本は“同時比較”にあり
電子回路におけるノイズの原因を突き止めるためには、「いつ・どこで・どのような波形が現れたか」を正確に把握することが重要である。1CHでの観測では局所的な波形しか見えず、ノイズ発生源と影響先との因果関係を特定することが難しい。複数CHを活用することで、ノイズ源と影響を受ける信号を同時に観測し、時系列やタイミングの相関関係から発生源を特定することができる。
電源ラインのリップルとデジタル信号の干渉を追う
ノイズトラブルで最も多いのが電源ラインから他の回路へのノイズ混入である。CH1にDC電源入力、CH2にレギュレータ出力、CH3にデジタル回路のVcc、CH4にUARTなどの通信ラインを接続し、複数の電源経路と信号経路を同時に観察する。突発的なリップルやスパイクが通信エラーや誤動作と同時に観測される場合、その電源ラインがノイズの出発点である可能性が高い。
スイッチングノイズの発生源を絞り込む
スイッチング電源を使った回路では、MOSFETのスイッチング動作が高周波ノイズの原因となる。CH1でMOSFETのゲート信号、CH2でドレイン電圧、CH3でグランドラインの電圧、CH4で回路出力を測定することで、スイッチ動作とノイズの出現タイミングを照合できる。ノイズがスイッチの立ち上がりと一致していれば、対策すべきノードは明確になる。
グランドバウンスを多CHで可視化する
複数のデジタルICが同時に動作すると、共通グランドに電圧差(グランドバウンス)が生じ、それが原因で誤動作を招くことがある。CH1〜CH4を異なるグランドポイント(電源IC周辺、MCUグランド、センサグランド、信号グランド)に接続し、同時に観測することで、電位差や瞬間的なグランドレベルの揺れを検出できる。グランドの取り回しや配線の見直しの根拠になる。
FFT機能と組み合わせてノイズ周波数を特定する
一部の高性能オシロスコープでは、各CHにFFT解析を適用できる機種もある。CH1〜CH4で異なる測定ポイントにノイズが含まれる波形を取り込み、各地点の周波数スペクトルを確認することで、同一周波数帯域のノイズが共通して観測される箇所を特定できる。ノイズ源のクロックやスイッチング周波数との一致を見つけることで、発生源の同定につながる。
外部トリガCHの活用で再現性のない現象に対応する
再現性の低いノイズ問題は、観測タイミングを合わせるのが難しい。外部イベント(例:リレーの駆動信号や外部装置のON/OFF)をトリガとしてCH5またはEXTに設定し、CH1〜CH4で信号の変化を捉えることで、イベント発生の瞬間から波形を遡って観察することができる。トリガを工夫することで、希にしか発生しない問題にも対応可能となる。
パッシブプローブとアクティブプローブの併用で精度を上げる
ノイズ解析では、プローブ自体の影響でノイズが再現できないこともある。高周波成分が多い箇所にはアクティブプローブを、電源ラインや低速信号にはパッシブプローブを用いることで、信号に応じた最適な観測が可能になる。複数CHで異なる種類のプローブを適用するのも有効な手法である。
ノイズ伝播経路の可視化にも多CHは有効
スイッチング動作や外部ノイズが、配線や基板上をどう伝播するかを把握するには、多点測定が欠かせない。CH1に入力、CH2〜CH4に途中の経路や出力を配置し、波形やノイズの遅延時間を測定することで、伝播経路や反射による影響を分析できる。高速デジタル回路やRF回路では特に有効である。
まとめ
ノイズ源の特定には、多CHの同時観測による“因果関係の見える化”が鍵を握る。ただ波形を表示するだけでなく、時系列や波形の関連性、トリガやFFTといった補助機能を活用して、ノイズの発生源と影響範囲を明確にしていくことが求められる。CH数が多いほど、測定の自由度と解析の精度が高まり、原因究明への近道となる。
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