■ファンクションジェネレータの選び方
ファンクションジェネレータは、電子回路や測定器の評価・実験に欠かせない信号源です。さまざまなモデルが市販されていますが、選定を誤ると用途に適さず、測定結果にも影響が出る恐れがあります。ここでは、ファンクションジェネレータを選ぶ際のポイントを分かりやすく解説します。
■波形の種類と任意波形の必要性
まず、必要な波形が出力できるかを確認しましょう。一般的なファンクションジェネレータは、正弦波、方形波、三角波などの基本波形を出力できます。さらにノコギリ波やパルス波、ノイズなどを生成できる機種もあります。
最近では、任意波形(Arbitrary Waveform)に対応したモデルが増えており、ユーザーが自作した複雑な波形や特定の再現信号を出力することも可能です。センサ信号の模擬や異常波形の再現など、高度な評価用途には任意波形機能付きが適しています。
■最大周波数(帯域幅)
信号の周波数範囲は、ファンクションジェネレータ選定において最も基本的な要素です。例えば、オーディオ回路や低速アナログ回路の評価には1MHz程度でも十分ですが、高速なデジタル回路やRF信号の模擬には数十MHzから数百MHzの帯域が必要になります。
周波数帯域は、用途に対して20~30%程度の余裕を見て選ぶのが無難です。必要以上に高帯域な機種はコストが高いため、目的に合った仕様で選定しましょう。
■振幅とオフセットの設定範囲
出力電圧(振幅)の範囲も重要です。一般的に、50Ω終端時で最大10Vpp程度、オープン(高インピーダンス)時には20Vpp程度まで出力できるモデルが多いです。TTLやCMOSロジックに使う場合は、3.3Vや5Vに対応できるか確認しましょう。
また、DCオフセット機能が必要かどうかもチェックしてください。オフセットが使えると、信号の基準電圧を上下にシフトできるため、バイアス電圧付き信号や単極性パルスなどの生成が容易になります。
■出力インピーダンス
ほとんどのファンクションジェネレータは、出力インピーダンス50Ωで設計されています。接続先の負荷(回路側)が高インピーダンスの場合、出力電圧が高くなるため、実際に負荷をかけたときに希望の信号が出力されているか確認が必要です。
アナライザや測定器と組み合わせて使う場合は、終端抵抗などでインピーダンス整合を取るか、出力電圧の補正機能付き機種を選ぶと便利です。
■発振方式(DDSかアナログか)
最近のファンクションジェネレータは、ほとんどがDDS(Direct Digital Synthesis)方式を採用しています。DDSは周波数の設定精度が高く、周波数変更もスムーズに行えるため、一般用途では非常に扱いやすいです。
ただし、一部の高精度アナログ波形が必要な用途では、アナログ方式のジェネレータのほうが良い結果が出る場合もあります。特に、超低歪みの正弦波が必要な場合は、アナログ発振方式の有無を確認するとよいでしょう。
■付加機能(スイープ、バースト、変調など)
より高度な測定や試験を行う場合、以下のような機能が搭載されていると便利です。
スイープ機能
周波数を連続的に変化させ、フィルタ特性などの評価に使えます。
バースト出力
一定回数の波形だけを出力する機能。立ち上がり応答やワンショット試験などに役立ちます。
AM/FM変調機能
搬送波に対して、外部信号や内部信号で変調をかける機能。通信回路の模擬試験に活用されます。
外部トリガ入力
外部イベントと同期して波形出力を開始する場合に使用します。センサやタイミング信号との同期が求められる場面で有効です。
■出力チャンネル数
1chのみのモデルもありますが、2chモデルでは異なる波形を同時出力したり、チャンネル間に位相差を設けて差動出力することが可能です。マルチチャンネルでの制御や複数信号の同期が必要な用途では、2ch以上の機種を選ぶ価値があります。
■操作性と表示部
タッチパネル式や大型ディスプレイを採用したモデルは、視認性や操作性が高く、初心者にも扱いやすいのが特徴です。一方、ローエンドモデルでは物理ボタン主体のものも多く、設置スペースが限られている環境には向いています。
USBやLANなどのインターフェース、PC制御ソフトウェアの有無も事前に確認すると安心です。
■まとめ
ファンクションジェネレータを選ぶ際は、波形の種類、周波数帯域、振幅、出力数、制御機能など、使用目的に応じた仕様をしっかりと確認することが大切です。特に教育用途や簡易試験用には、操作が簡単で基本波形に対応したモデルがコストパフォーマンスに優れています。一方で、製品開発や精密評価には、任意波形や変調、同期出力などを備えた中上位モデルが適しています。
測定対象と求める精度・柔軟性を明確にしたうえで、最適な1台を選びましょう。
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