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オシロスコープ 原理
- 2025/7/2 -

オシロスコープの基本的な役割

オシロスコープとは、電圧信号の変化を時間軸に対して波形として可視化する計測器です。
回路や機器から出力される信号をリアルタイムに表示し、異常検出や設計確認などに幅広く使用されます。
とくに電子回路、通信機器、自動車、医療機器、教育分野などで重宝されています。

基本構造と測定の流れ

オシロスコープの動作原理は、以下のような基本構成によって成り立っています。

1.入力アンプ
 プローブを通じて信号を受け取ると、まず入力アンプで電圧の増幅や減衰を行います。
 この段階でスケール(Volt/div)に応じたレベルに調整され、必要に応じて絶縁やバッファリングも実施されます。

2.A/D変換(アナログ・デジタル変換)
 デジタル・オシロスコープでは、入力されたアナログ信号を高速サンプリングしてデジタルデータに変換します。
 このときのサンプリングレート(例:1GSa/s)分解能(例:8ビットや12ビット)が、波形の精度を決定します。

3.トリガ回路
 波形の観測を安定させるため、信号の特定の条件(電圧の立ち上がり、立ち下がり、特定パターンなど)で観測のタイミングを決定します。
 トリガがなければ波形は流れてしまい、安定して表示されません。

4.メモリ(記憶)
 デジタル化された波形データは、一時的にメモリに保存されます。
 これにより、一定期間の波形を静止画のように表示・解析できます。
 メモリ長(例:2Mpts, 100Mpts)が長いほど、より詳細な波形を長時間保存できます。

5.ディスプレイと制御系
 保存された波形データはディスプレイにグラフとして描画されます。
 縦軸は電圧、横軸は時間で構成され、ユーザーはスケールの変更、カーソル計測、FFT解析、演算処理などを行えます。

トリガの重要性

オシロスコープで波形を正確に観測するためには、トリガの設定が非常に重要です。
たとえば、「立ち上がりエッジで開始する」「特定電圧を超えたときだけ表示する」「シリアル通信の特定パターンを検出する」など、多彩なトリガ機能が用意されています。
これにより、ノイズに埋もれた信号の中から目的の波形だけを表示できます。

表示される波形は何を意味するか

画面に表示される波形は、時間と電圧の関係をリアルタイムに視覚化したもので、
例えば以下のような情報を読み取ることができます。

信号の周期と周波数
ピーク電圧(最大・最小)
パルス幅やデューティ比
立ち上がり/立ち下がり時間
ノイズや異常波形の有無

アナログとデジタルの違い

アナログ・オシロスコープは、CRT(ブラウン管)を使って連続信号をリアルタイムで描写します。
対して、現在主流のデジタル・オシロスコープは一度信号をデジタル化し、処理後に画面に表示する構造です。
デジタル型は保存・解析・通信との連携に優れており、多機能化が進んでいるのが特徴です。

内部クロックと同期性

オシロスコープは内部のクロック(タイマー)を基準にサンプリング処理を行います。
信号とクロックの同期性が悪いと、波形がずれて表示されたり、歪みが生じることもあります。
そのため、高速信号や微細波形の観測には、高精度クロックと時間軸分解能が不可欠です。

まとめ:原理を知れば、活用の幅が広がる

オシロスコープの原理を理解することで、ただの波形表示器ではなく、強力な分析ツールとしての活用が可能になります。
トリガやスケーリング、メモリ制御、解析機能などを組み合わせることで、複雑な電子信号の中から必要な情報を抽出しやすくなります。

初心者の方も、「波形がなぜこう見えるのか?」「この波形は何を示しているのか?」といった視点で使うことで、測定の理解度が深まります。

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