【オシロ・機種選定に役立つ】メモリ長が重要な理由
メモリ長(レコード長)は、オシロスコープが「どれだけ長い波形を高解像度で記録できるか」を決める重要な仕様である。サンプリングレートだけ高くても、メモリが短いとすぐにデータが途切れ、波形全体を正しく観測できなくなる。機種選定では、帯域幅・サンプリングレートと並んで必ずチェックすべき項目である。
メモリ長とは何か
メモリ長とは、オシロが一度の測定で保存できるサンプル点数のこと。
単位は「ポイント(Pts)」で表される。
例
10Mポイント → 1,000万点記録可能
100kポイント → 10万点記録可能
同じサンプリングレートであれば、メモリが長いほど記録できる時間が長くなる。
メモリ長が短いとどうなるか
メモリ長が不足すると、以下のような問題が起こる。
・波形が途中で切れる
・高速サンプリングが維持できない
・長い時間の解析ができない
・異常波形を捉えにくい
・FFTの周波数分解能が低下する
つまり、メモリ不足は「情報の欠落」を招く。
メモリ長・サンプリングレート・記録時間の関係
記録できる時間は次の式で求められる。
記録時間 = メモリ長 ÷ サンプリングレート
例
メモリ 10Mポイント
サンプリング 1GSa/s の場合
→ 0.01秒(10ms)しか記録できない
同じ条件で
メモリ 100Mポイントなら
→ 0.1秒(100ms)記録できる
メモリが10倍になると、記録時間も10倍に伸びる。
メモリ長が重要になるケース
・長時間の信号を高解像度で記録したいとき
電源の立ち上がり/異常時のトリガ/シリアル通信など。
・デジタル通信解析(I2C、SPI、UART)
波形全体を保持しないと解析が途中で途切れる。
・機械動作や制御信号のログ取り
数十ミリ秒〜秒レベルの測定で必須。
・FFT解析を高精度で行いたいとき
メモリが多いほど、FFTの周波数分解能が向上する。
快適に使えるメモリ長の目安
オシロ用途に応じた推奨メモリ長は以下の通り。
・一般電子回路(I2C、UART)
10M〜28Mポイントで十分。
・高速通信、スイッチング電源
50M〜100Mポイント以上が推奨。
・車載・長時間ログ
100M〜200Mポイント以上があると安心。
・FFTを高精度で使いたい
メモリが長いほど有利。
SIGLENTやOWONはコンパクトな機種でも長いメモリを搭載しており、コストに対して性能が高い点が強みとなる。
メモリ長が長いほど測定の自由度が上がる
メモリが長いと、次のようなメリットが得られる。
・後からズームして詳細を確認できる
・全体の流れと細部の両方を1回の測定で把握できる
・高サンプリングレートを維持したまま長時間記録できる
短いメモリでは実現できない測定が可能になるため、導入後の使いやすさが大きく変わる。
まとめ
・メモリ長はオシロの“記録できる情報量”を決める重要仕様
・メモリ不足は波形欠落や解析の失敗につながる
・サンプリングレートとセットで考える必要がある
・用途に応じて10M〜100M以上のメモリが推奨される
・メモリが長いほど後処理・解析がしやすい
関連製品
もっと用語集
- オシロスコープは「見えている=正しい」ではない
- 【技術コラム・入門〜初級】電気回路におけるインピーダンスの意味とは?
- 【技術コラム・入門〜初級】電気回路におけるコンデンサの重要な働きとは?
- OWONを「安心して選べる」人・選ばないほうがよい人
- 「測定が合わない」と言われたとき、まず考えること
- なぜ高級機と“まったく同じ測定”はできないのか
- 「十分な性能」と言える基準はどこか
- 安いオシロスコープは本当に危険なのか
- スペック表の数字は、どこまで信じていいのか
- 【技術コラム・入門〜初級】電気回路でよく見かける dB(デシベル)の意味とは?
- なぜ「帯域幅」だけ見てオシロを選んではいけないのか
- なぜ同じ測定なのに、測定値が毎回違うのか
- オート測定は信用していいのか
- ノイズはどこから来るのか(測定しているつもりで、実は拾っているもの)
- プローブをつなぐとなぜ波形が変わるのか
- 入力インピーダンス(50Ω / 1MΩ)をもう一段やさしく分解する
- トリガ(Trigger)をもう一段やさしく分解する
- 分解能(Resolution)をもう一段やさしく分解する
- 帯域幅(Bandwidth)をもう一段やさしく分解する
- 【技術コラム・入門〜初級】なぜ差動プローブが必要なのか?
- オシロスコープを替える前に、まず疑うべき3つのこと
- 【技術コラム・入門〜初級】なぜ帯域幅が重要なのか?足りないと何が起きるのか
- FFT 解析なのに、なぜ波形(スペクトル)が汚く見えるのか
- 【技術コラム・入門〜初級】アンプで欠かせない NFB(負帰還)とは?
- 【技術コラム・入門〜初級】プローブで測定結果が変わる理由とは?
- 【技術コラム・入門〜初級】なぜ高速信号は測りにくいのか?
- 【技術コラム・入門〜初級】帯域幅と立ち上がり時間の関係とは?
- 【技術コラム・入門〜初級】なぜ100MHzオシロスコープで10MHz信号が見えるのか?
- 【技術コラム・入門〜初級】スペクトラムアナライザとFFT解析は何が違うのか?
- 【技術コラム・入門〜初級】パッシブプローブとアクティブプローブの違いとは?
- 【技術コラム・入門〜初級】FFTで分かること・分からないこと
- 【技術コラム・入門〜初級】FFTで分かること・分からないこと
- 【技術コラム・入門〜初級】ノイズとは何か?なぜ見えないのに回路に影響するのか
- 【技術コラム・入門〜初級】FFT解析で失敗しない設定のコツとは?
- 【技術コラム・入門〜初級】FFT解析とは何か?周波数で見ると何が分かるのか
- 【技術コラム・入門〜初級】オシロスコープ設定で結果が変わる理由とは?
- 【技術コラム・入門〜初級】測定ミスはなぜ起きるのか?初心者が陥りやすい原因
- 【技術コラム・入門〜初級】なぜ波形は安定しないのか?よくある原因と考え方
- 【技術コラム・入門〜初級】オシロスコープでノイズを見るコツとは?
- 【技術コラム・入門〜初級】時間波形と周波数解析はどう使い分けるべきか?
- 【技術コラム・入門〜初級】チャタリングとは?なぜ起きるのか、どう対策するのか
- 【技術コラム・入門〜初級】プルアップ・プルダウンとは?知らないと起きるトラブル
