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電子回路の基本知識(3)‐直流と交流の違いと使い方
- 2025/7/1 -

電子回路の基本知識(3)‐直流と交流の違いと使い方

電子回路を構成する上で欠かせない「電源」には、直流(DC)と交流(AC)という2つの異なる形式があります。家電やパソコン、LED照明、自動車など、私たちの身の回りにある電子機器の多くは、この2種類の電源を適切に使い分けています。本稿では、直流と交流の違いやそれぞれの特徴、回路における使い方について解説します。

■ 直流(DC)とは

直流とは、時間が経っても電流の向きが変わらず一定の方向に流れる電気のことです。電池やUSB電源、スマートフォンの充電器などはすべて直流電源です。

特徴は以下の通りです。

・常に一定方向に流れる
・電圧が一定(ただしバッテリーは徐々に電圧低下)
・取り扱いが簡単で、小型機器に最適
・ノイズが少なく、精密機器に向いている

たとえば乾電池1本(1.5V)は、プラス極からマイナス極に向けて一定の電流を流し続けます。電子回路の多く(特にデジタル回路)は、安定した直流を必要とします。

■ 交流(AC)とは

交流は、電流の向きと大きさが周期的に変化する電気です。日本の家庭用コンセントは、東日本では50Hz、西日本では60Hzの交流で供給されています(Hz=ヘルツは1秒間の変化の回数を表す単位)。

特徴は以下の通りです。

・電流の向きと大きさが周期的に変化する
・長距離伝送に向いている
・変圧器で電圧を容易に変えられる
・主に電力用途に使われる(モーターやヒーター等)

家庭の壁コンセントに差し込まれている電力は、時間とともに正負を繰り返す「サイン波」の波形を描いています。正方向の電流が流れたあと、すぐに逆方向の電流が流れるというサイクルが1秒間に50回ある(50Hz)というのが、交流の特徴です。

■ 直流と交流の主な違い

比較項目 直流(DC) 交流(AC)
電流の向き 一定 周期的に変化
波形 一定の直線 正弦波(サイン波)
主な供給元 電池、アダプター、USBなど 発電所、家庭用電源
適した用途 小型電子機器、デジタル回路 家電、照明、大型機器
長距離伝送 不向き(電圧損失が大) 向いている(変圧器で対応可)

直流は安定した電圧が必要な電子機器に向いています。一方、交流は電力の効率的な供給や高出力機器に最適です。

■ 整流回路とAC-DC変換

交流は送電や大電力用途に優れていますが、電子回路の多くは直流で動作します。そのため、ACをDCに変換する「整流回路」が必要になります。これを担っているのがACアダプターや電源装置(スイッチング電源)です。

整流回路には以下のような構成が一般的です。

・ダイオード:交流の片側だけを通す(半波整流)または両側を正方向に変換(全波整流)
・平滑コンデンサ:整流後の電圧の波形を安定させる
・レギュレータ:最終的な電圧値を一定に保つ

これらを組み合わせることで、家庭用コンセント(100VのAC)からスマートフォンに適した5VのDCを安全に供給することができます。

■ 電源の極性に注意

直流電源には極性(+極と−極)があるため、電子部品の接続方向に注意が必要です。特にLEDや電解コンデンサなどの極性部品は、逆接続すると故障や破損につながります。

一方、交流には極性がないため、接続の向きに左右されません。ただし、機器の安全上、コンセントの「極性付きプラグ」が使われることがあります。

■ 実用例と用途の違い

【直流の実用例】
・パソコン、スマートフォン、電子辞書などのデジタル機器
・自動車内の12V回路(バッテリー)
・ArduinoやRaspberry Piなどの電子工作キット

【交流の実用例】
・家庭用冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの家電製品
・産業用モーター、エレベーター、電車などの動力用途
・高出力ヒーターや照明器具

電力の供給は交流で行い、必要に応じて直流に変換して使うというのが、現代の電子機器の基本構造です。

■ まとめ

直流(DC)と交流(AC)は、電気の流れ方という観点で大きく異なります。電子回路を設計・運用するうえで、どちらを使うのか、どのように変換・制御するのかを理解しておくことが非常に重要です。

次回は、「コンデンサとコイルの基礎」と題して、直流・交流に対する反応の違いや、信号の変化に対する役割について解説していきます。

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