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オシロスコープ プローブ入門(5)測定トラブル事例と対処法
- 2025/7/1 -

オシロスコープ プローブ入門(5)測定トラブル事例と対処法

■はじめに

オシロスコープとプローブを用いた測定では、さまざまなトラブルが発生することがある。波形が乱れる、ノイズが多い、期待した信号が表示されないといった問題の多くは、基本的な確認や接続方法を見直すことで解消できる。本稿では、実際に現場で起こりやすいトラブル事例を紹介しながら、その原因と対策について解説する。

■波形が大きく歪む

矩形波や三角波など、本来直線や角が明確な波形が歪んで表示されることがある。この原因として最も多いのが、プローブの補正が適切に行われていないことである。特に十対一のパッシブプローブは、入力側の容量を調整する可変コンデンサがあり、これが測定器との間でずれていると波形がオーバーシュートしたり、丸くなったりする。

対策として、測定前に必ずプローブ補正端子に接続して矩形波を確認し、ドライバで補正用ネジを回してフラットな波形になるよう調整することが重要である。

■ノイズが多く波形が安定しない

微小信号や高速信号を測定する際、波形が常にゆらいでいたり、明らかに本来の信号ではないノイズ成分が重なって表示されたりすることがある。これは、グラウンドの取り方が適切でないことや、プローブケーブルが他の信号線と近すぎることが原因である場合が多い。

対策として、グラウンドリードを短くする、ショートグラウンドアダプタを使う、プローブと信号線の間隔を取るといった工夫が必要となる。また、オシロスコープ本体側で帯域制限機能を有効にして不要な高周波ノイズをカットするのも有効である。

■波形がまったく表示されない

信号を入力しているはずなのに、オシロスコープに何も波形が表示されない場合、入力チャンネルやスケール設定、トリガ条件の誤りが疑われる。また、プローブが正しく接続されていなかったり、プローブ自体の断線が原因であることもある。

まずは、プローブの先端で導通を確認し、正しいチャンネルに接続されているかを確認する。加えて、垂直軸のスケールを広めに設定して信号が画面内に入るようにし、トリガのレベルやモードが適切であるかも再確認する。これだけで多くの問題は解消する。

■波形が上下に揺れる

一定の直流信号や繰り返し波形が、上下にぶれて見える現象は、グラウンドが不安定であるか、信号源自体が浮いている場合に発生しやすい。また、外部からの電磁ノイズの影響で波形が変動して見えるケースもある。

こうした場合には、測定対象の回路とオシロスコープが同一のグラウンドを共有しているかを確認する。フローティング状態であれば、差動プローブや絶縁型プローブの使用を検討する。また、周辺の電源ケーブルや高電圧信号線から離れた場所で測定を行うことも効果的である。

■接触不良による波形のちらつき

プローブの先端が測定ポイントにうまく当たっていなかったり、接触が不安定であると、波形がちらついたり消えたりすることがある。特に古くなったプローブや、基板上のパッドに酸化や汚れがある場合に顕著に現れる。

解決策としては、プローブの先端を清掃する、接触ポイントを磨く、または専用のプロービングピンやアダプタを使用することで安定性を確保できる。また、プローブスタンドや専用治具を使ってプローブを固定することも推奨される。

■波形が遅延して見える

波形が本来のタイミングよりも遅れて表示されるように感じられる場合、プローブのケーブル長やプローブ自体の遅延特性が原因であることがある。特に複数チャンネルを同時測定する際、チャンネル間でケーブル長やプローブの種類が異なると、数ナノ秒から数十ナノ秒の時間差が生じることがある。

このような場合には、同一種類・同一長のプローブを使用することで、タイミング整合性が取れた波形を得ることができる。また、高精度なタイミング比較が必要な測定では、オシロスコープ側でディレイ補正機能を活用することもある。

■実際より高い電圧が表示される

プローブの減衰比が誤って設定されていると、表示される電圧が実際の信号と異なってしまう。たとえばプローブが十対一であるにも関わらず、オシロスコープ側が一対一に設定されていると、波形の電圧値が十倍に表示される。

このようなミスは意外と多く、特にプローブを交換した直後や設定の引き継ぎ時に起こりやすい。使用するプローブの減衰比に応じて、オシロスコープ側の設定を正しく変更することを忘れないようにしたい。

■まとめ

オシロスコープの波形測定におけるトラブルは、基本的な操作や接続ミスに起因することが多い。測定前の準備として、プローブ補正、グラウンド接続、減衰比設定などを確認するだけで、多くの問題を未然に防ぐことができる。万一、想定と異なる波形が表示された場合も、慌てずに一つずつ原因を探っていくことで、確実に正しい測定結果へとたどり着ける。

次回は、プローブの種類や仕様を比較する際に役立つ選定基準について、具体的なスペックや実用面から整理して解説する予定である。

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