電子回路の基本知識(6)‐論理回路と基本ゲート
これまでの回で、電圧・電流・抵抗・コンデンサ・トランジスタなど、アナログ電子回路の基礎を学んできました。今回は、電子回路のもう一つの柱である「デジタル回路」の基本となる「論理回路(ロジック回路)」と「基本ゲート」について解説します。
■ 論理回路とは何か
論理回路とは、電気信号を「0」または「1」の2つの状態として扱い、それらを論理的に組み合わせて特定の動作を実現する回路のことです。ここでの「0」は電圧が低い状態(例:0V)、「1」は電圧が高い状態(例:5Vや3.3V)を指します。
論理回路は、計算機やマイコン、メモリ、タイマー、センサー処理など、デジタル機器の中核を成す構成要素です。
■ 基本ゲートとは
論理回路は「ゲート」と呼ばれる基本部品で構成されます。ゲートとは、複数の入力信号を受け取り、それに基づいて特定のルールに従って出力を決める単純な論理演算器です。
主な基本ゲートは以下の6つです。
-
NOTゲート(否定)
入力が「1」なら出力は「0」、「0」なら「1」になる単一入力の反転回路です。
記号:○─> (丸が付いている三角形)
論理式:Y = ¬A -
ANDゲート(論理積)
すべての入力が「1」のときのみ出力が「1」になる回路です。
論理式:Y = A・B
真理値表:
A B|Y
0 0|0
0 1|0
1 0|0
1 1|1 -
ORゲート(論理和)
どれか一つでも入力が「1」なら出力が「1」になります。
論理式:Y = A + B
真理値表:
A B|Y
0 0|0
0 1|1
1 0|1
1 1|1 -
NANDゲート(否定AND)
ANDゲートの出力を反転させたものです。
論理式:Y = ¬(A・B)
すべての入力が「1」のときだけ出力が「0」になります。 -
NORゲート(否定OR)
ORゲートの出力を反転させたものです。
論理式:Y = ¬(A + B)
どれかが「1」なら出力は「0」、すべて「0」で初めて出力が「1」となります。 -
XORゲート(排他的論理和)
入力が異なるときだけ出力が「1」になります。
論理式:Y = A ⊕ B
真理値表:
A B|Y
0 0|0
0 1|1
1 0|1
1 1|0
■ 論理式と真理値表
論理回路は、数式(論理式)と表(真理値表)で表現できます。これは入力と出力の関係を明確にするための手段で、設計や動作検証に使われます。例えば、XORゲートは暗号処理やパリティチェックに使われるなど、複雑な機能の基礎になっています。
■ ゲートICと実装
これらの基本ゲートは、単体のIC(集積回路)として販売されています。たとえば:
・7400:4回路入りNANDゲートIC
・7404:6回路入りNOTゲートIC
・7432:4回路入りORゲートIC
これらをブレッドボードなどに配置して、論理回路の動作を確認することができます。電源(Vcc)とGNDの接続、入力ピンへのスイッチ接続、出力のLED表示などで動作が目に見える形で確認できます。
■ 組み合わせ回路と順序回路
論理回路は大きく以下の2つに分類されます。
【組み合わせ回路】
現在の入力だけに応じて出力が決まる回路。加算器や比較器、デコーダ、エンコーダなどが該当。
【順序回路】
入力の状態だけでなく「過去の状態(履歴)」も考慮する回路。フリップフロップ、カウンタ、レジスタなど。
次回以降では、このうち「フリップフロップ」や「タイマー回路」などの順序回路にも触れていく予定です。
■ 実用例:センサと制御
センサ信号が「1」になったときにだけLEDを点灯させる、2つの条件が同時に満たされたときだけアラームを鳴らすなど、論理ゲートは身近な制御に頻繁に使われています。
例えば次のような応用:
・温度センサがしきい値を超えた(A=1)
・ドアが開いている(B=1)
→ A・B(AND回路)で警告灯を点灯
■ まとめ
論理回路は、0と1の世界で構成される「デジタル電子回路」の基礎中の基礎です。基本ゲートの動作原理や組み合わせ方を理解することで、マイコン制御やロボット制御、センサ応用など、さまざまな実用回路への理解が深まります。
次回は、「電子回路の基本知識(7)‐フリップフロップと記憶の仕組み」として、論理回路が時間的な変化や状態をどう記憶・保持するかを解説する予定です。
Previous: 電子回路の基本知識(7)‐フリップフロップと記憶の仕組み
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