上昇時間(Rise Time)とは?
上昇時間(Rise Time)とは、パルス波形やステップ状の信号において、信号が低いレベル(通常10%)から高いレベル(通常90%)へ到達するのにかかる時間を指します。単位は秒(s)やナノ秒(ns)で表され、信号の立ち上がりの速さを示す重要なパラメータです。
たとえば、デジタル回路においては、クロック信号やデータ信号の立ち上がり速度が遅いと、誤動作やタイミングずれの原因になる可能性があります。そのため、上昇時間は高速デジタル信号の設計・評価において非常に重要です。
オシロスコープでは、波形を測定して自動的に上昇時間を算出する機能が備わっていることが一般的です。これにより、回路や信号源の特性確認、信号品質の評価、不具合原因の特定などが効率よく行えます。
なお、オシロスコープ自身にも「上昇時間の限界」が存在します。これはオシロスコープの帯域幅(BW)に依存し、次の近似式で計算されます:
オシロスコープの理論的上昇時間 ≒ 0.35 ÷ 帯域幅(Hz)
たとえば、帯域幅が100MHzのオシロスコープで測定可能な最短の上昇時間は、おおよそ3.5nsとなります。このため、観測対象の信号の上昇時間が非常に短い場合には、それを正確に測定できるだけの帯域幅を持つオシロスコープが必要です。
OWON製のオシロスコープでは、モデルに応じてさまざまな帯域幅が用意されており、上昇時間の測定用途にも対応可能です:
■OWON ADS800Aシリーズ:帯域幅200MHz・1GSa/sの高性能で、数ナノ秒レベルの高速信号の上昇時間を測定可能。
■OWON XDSシリーズ:帯域幅100MHz~300MHzのモデルがあり、上昇時間やパルス応答の測定に適しています。
■OWON HDS200シリーズ:簡易測定に適した携帯型モデルながら、信号の立ち上がりの視覚的確認が可能です。
上昇時間の測定は、単に信号の速度を知るだけでなく、回路設計の品質管理やノイズ対策の評価にも役立ちます。信号の遅延・反射・リンギングといった現象とあわせて観察することで、より高度な波形解析が可能になります。
Previous: 入力インピーダンス(Input Impedance)とは?
もっと用語集
-
オシロスコープの基本操作 第1回「接続と初期設定」
-
位相測定とは
-
波形演算機能とは
-
アラーム設定とは
-
スロープトリガーとは
-
パルストリガーとは
-
シリアルバス解析とは
-
プロトコルデコード(I2C, SPI, UARTなど)とは
-
オシロスコープの基本操作 第10回「オシロスコープの活用事例と応用テクニック」
-
インバータ測定とは
-
波形ズームとは
-
オシロスコープの基本操作 第2回「トリガー設定」
-
オシロスコープの基本操作 第3回「スケーリングと測定機能」
-
オシロスコープの基本操作 第4回「波形の保存とデータ活用」
-
オシロスコープの基本操作 第5回「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」
-
オシロスコープの基本操作 第6回「プローブの種類と選び方」
-
オシロスコープの基本操作 第7回「プローブの正しい使い方と接続方法」
-
オシロスコープの基本操作 第8回「オシロスコープで測定できる代表的な波形と活用例」
-
オシロスコープの基本操作 第9回「よくある測定ミスとその対策」
-
電源波形測定とは
-
トリガー設定とは
-
オシロスコープのLAN接続とは
-
LAN接続とは
-
HDMI出力とは
-
RS-232とは
-
オシロスコープ 校正機能とは
-
校正証明書とは
-
波形ファイル形式(.csv, .bmpなど)とは
-
SCPIコマンドとは
-
周波数分解能とは
-
プローブ補正とは
-
FFT解析とは
-
ゼロ調整とは
-
マーカー機能とは
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第8回「複数チャネルの同時測定と相関分析」
-
データエクスポートとは
-
リモート制御とは
-
自動スケーリングとは
-
スクロール機能とは
-
スクリーンショット保存とは
-
デモモードとは
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第7回「保存・エクスポート・PC転送トラブルの対処法」
-
オシロスコープ入門講座 第7回「波形の種類と読み取り方(矩形波/三角波など)」
-
オシロスコープの基本操作 第11回「オシロスコープ購入時のチェックポイントとおすすめ仕様」
-
オシロスコープ入門講座 第9回「簡単なトラブルシューティング(波形が出ないとき等)」
-
オシロスコープ入門講座 第10回「よくある使い方の事例(電源・通信・オーディオ)」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第1回「波形が表示されないときのチェックリスト」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第2回「プローブの誤接続で起こる問題と対処法」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第3回「トリガーが安定しない原因と解決策」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第4回「ノイズだらけの波形を改善する方法」
-
オシロスコープ入門講座 第5回「信号の入力方法とトリガーの考え方」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第6回「測定値が信用できないときに見直すポイント」
-
オシロスコープ入門講座 第6回「時間軸・電圧軸のスケール調整と見方」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第1回「電源回路の基本測定(リップル/過渡応答)」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第2回「センサー出力の確認(温度/加速度)」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第3回「PWM信号のデューティ比確認」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第4回「アナログ vs デジタル信号の測定方法の違い」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第5回「マイコンI/Oの応答チェック」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第6回「オーディオ波形の確認とひずみの可視化」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第7回「FFTを使ったノイズ源の分析」
-
測定カーソルとは
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第5回「信号が途中で切れている?帯域幅とメモリの落とし穴」
-
信号発生器 入門ガイド 第5回「オシロスコープとの連携測定」
-
プローブの基礎と活用術 第1回「プローブの種類と役割」
-
プローブの基礎と活用術 第2回「正しい接続方法と注意点」
-
プローブの基礎と活用術 第3回「減衰比と入力インピーダンスの関係」
-
プローブの基礎と活用術 第4回「プローブ補正のやり方」
-
プローブの基礎と活用術 第5回「測定精度を保つためのメンテナンスと保管」
-
プローブの基礎と活用術 第6回「プローブ故障のサインと交換時期」
-
信号発生器 入門ガイド 第1回「信号発生器の基本と種類」
-
信号発生器 入門ガイド 第2回「正弦波・方形波・パルス波などの用途と設定」
-
オシロスコープ入門講座 第8回「基本的な測定項目(周期/周波数/振幅など)」
-
信号発生器 入門ガイド 第4回「任意波形の作成と活用事例」
-
オシロスコープ入門講座 第4回「プローブの基礎知識と使い方」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第1回「時間ドメイン vs 周波数ドメインとは」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第2回「FFT表示の基本操作とスケーリング」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第3回「ノイズ解析への応用」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第4回「オーディオ信号や電源リップルの解析」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第5回「帯域幅と分解能の関係」
-
オシロスコープ入門講座 第1回「オシロスコープとは何か?基本概念と用途」
-
オシロスコープ入門講座 第2回「アナログ vs デジタルオシロスコープ」
-
オシロスコープ入門講座 第3回「基本構造と各部名称(ディスプレイ/つまみなど)」
-
信号発生器 入門ガイド 第3回「周波数・振幅・オフセットの調整方法」