高電圧差動プローブとは|安全で正確なフローティング測定の必須ツール
高電圧差動プローブとは、2点間の電位差(差動信号)を安全かつ高精度に測定するためのプローブで、特に数百ボルトから1000Vを超えるような高電圧回路のフローティング測定に適しています。一般的なプローブでは測定が困難な状況でも、差動構造と絶縁設計により、ノイズや危険を最小限に抑えて測定できるのが特長です。
高電圧差動プローブの主な用途
インバータやモーター制御回路の出力波形測定
フルブリッジ/ハーフブリッジ回路の電圧挙動確認
スイッチング電源やDC-DCコンバータの差動信号測定
高電圧ACラインのリップル・ノイズ評価
フローティング回路におけるON/OFF制御波形の解析
このような用途では、通常のパッシブプローブやグランド基準のアクティブプローブではショートや誤動作のリスクがあるため、高電圧差動プローブの使用が推奨されます。
特長とメリット
高耐電圧対応:±700V、±1000V、±2000V以上の入力に対応したモデルもあり、産業機器や電源開発に対応可能。
高コモンモード除去比(CMRR):回路の共通ノイズを抑え、正確な差動信号を取得。
絶縁設計:光アイソレーションやガルバニック絶縁により、安全性が高く、測定器本体への影響も最小限。
高帯域幅モデルも豊富:数十MHz〜100MHz超の高速信号にも対応する製品が多数。
バッテリー駆動モデルあり:現場計測やポータブルな使用にも適している。
使用時の注意点
定格電圧を厳守:入力が仕様上限を超えるとプローブやオシロスコープを破損するおそれがあります。
極性に注意:差動入力(+/−)を誤接続しないようにし、正しい電位差を測定してください。
正確な測定のためには補正(キャリブレーション)も重要:測定前には信号源を用いたゼロ調整やオフセット確認を推奨します。
測定対象の絶縁レベルにも配慮:接続する回路側が接地されていないか、十分に確認してから使用してください。
高電圧差動プローブを選ぶポイント
測定対象の最大電圧:プローブの耐電圧が測定対象に適しているか確認する
帯域幅:スイッチング周波数や高速応答が必要な用途には高帯域モデルを選ぶ
CMRR性能:コモンモードノイズが多い現場では、CMRRの高いモデルを推奨
出力インターフェース:使用中のオシロスコープとの互換性(BNCなど)を確認
使用環境:フィールド使用には軽量でバッテリー駆動のモデルが便利
まとめ
高電圧差動プローブは、通常のプローブでは測定困難な高電圧・フローティング信号の観測を、安全かつ正確に実現するための専門ツールです。特に電源開発やモータードライブ、インバータ制御などを扱うエンジニアにとっては必須とも言える存在です。
プローブを選定する際は、電圧・帯域・安全性など複数の観点をもとに、自身の用途に合った製品を選ぶことが成功の鍵となります。
Previous:
電流プローブとは
もっと用語集
-
オシロスコープの基本操作 第1回「接続と初期設定」
-
位相測定とは
-
波形演算機能とは
-
アラーム設定とは
-
スロープトリガーとは
-
パルストリガーとは
-
シリアルバス解析とは
-
プロトコルデコード(I2C, SPI, UARTなど)とは
-
オシロスコープの基本操作 第10回「オシロスコープの活用事例と応用テクニック」
-
インバータ測定とは
-
波形ズームとは
-
オシロスコープの基本操作 第2回「トリガー設定」
-
オシロスコープの基本操作 第3回「スケーリングと測定機能」
-
オシロスコープの基本操作 第4回「波形の保存とデータ活用」
-
オシロスコープの基本操作 第5回「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」
-
オシロスコープの基本操作 第6回「プローブの種類と選び方」
-
オシロスコープの基本操作 第7回「プローブの正しい使い方と接続方法」
-
オシロスコープの基本操作 第8回「オシロスコープで測定できる代表的な波形と活用例」
-
オシロスコープの基本操作 第9回「よくある測定ミスとその対策」
-
電源波形測定とは
-
トリガー設定とは
-
オシロスコープのLAN接続とは
-
LAN接続とは
-
HDMI出力とは
-
RS-232とは
-
オシロスコープ 校正機能とは
-
校正証明書とは
-
波形ファイル形式(.csv, .bmpなど)とは
-
SCPIコマンドとは
-
周波数分解能とは
-
プローブ補正とは
-
FFT解析とは
-
ゼロ調整とは
-
マーカー機能とは
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第8回「複数チャネルの同時測定と相関分析」
-
データエクスポートとは
-
リモート制御とは
-
自動スケーリングとは
-
スクロール機能とは
-
スクリーンショット保存とは
-
デモモードとは
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第7回「保存・エクスポート・PC転送トラブルの対処法」
-
オシロスコープ入門講座 第7回「波形の種類と読み取り方(矩形波/三角波など)」
-
オシロスコープの基本操作 第11回「オシロスコープ購入時のチェックポイントとおすすめ仕様」
-
オシロスコープ入門講座 第9回「簡単なトラブルシューティング(波形が出ないとき等)」
-
オシロスコープ入門講座 第10回「よくある使い方の事例(電源・通信・オーディオ)」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第1回「波形が表示されないときのチェックリスト」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第2回「プローブの誤接続で起こる問題と対処法」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第3回「トリガーが安定しない原因と解決策」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第4回「ノイズだらけの波形を改善する方法」
-
オシロスコープ入門講座 第5回「信号の入力方法とトリガーの考え方」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第6回「測定値が信用できないときに見直すポイント」
-
オシロスコープ入門講座 第6回「時間軸・電圧軸のスケール調整と見方」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第1回「電源回路の基本測定(リップル/過渡応答)」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第2回「センサー出力の確認(温度/加速度)」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第3回「PWM信号のデューティ比確認」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第4回「アナログ vs デジタル信号の測定方法の違い」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第5回「マイコンI/Oの応答チェック」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第6回「オーディオ波形の確認とひずみの可視化」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第7回「FFTを使ったノイズ源の分析」
-
測定カーソルとは
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第5回「信号が途中で切れている?帯域幅とメモリの落とし穴」
-
信号発生器 入門ガイド 第5回「オシロスコープとの連携測定」
-
プローブの基礎と活用術 第1回「プローブの種類と役割」
-
プローブの基礎と活用術 第2回「正しい接続方法と注意点」
-
プローブの基礎と活用術 第3回「減衰比と入力インピーダンスの関係」
-
プローブの基礎と活用術 第4回「プローブ補正のやり方」
-
プローブの基礎と活用術 第5回「測定精度を保つためのメンテナンスと保管」
-
プローブの基礎と活用術 第6回「プローブ故障のサインと交換時期」
-
信号発生器 入門ガイド 第1回「信号発生器の基本と種類」
-
信号発生器 入門ガイド 第2回「正弦波・方形波・パルス波などの用途と設定」
-
オシロスコープ入門講座 第8回「基本的な測定項目(周期/周波数/振幅など)」
-
信号発生器 入門ガイド 第4回「任意波形の作成と活用事例」
-
オシロスコープ入門講座 第4回「プローブの基礎知識と使い方」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第1回「時間ドメイン vs 周波数ドメインとは」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第2回「FFT表示の基本操作とスケーリング」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第3回「ノイズ解析への応用」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第4回「オーディオ信号や電源リップルの解析」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第5回「帯域幅と分解能の関係」
-
オシロスコープ入門講座 第1回「オシロスコープとは何か?基本概念と用途」
-
オシロスコープ入門講座 第2回「アナログ vs デジタルオシロスコープ」
-
オシロスコープ入門講座 第3回「基本構造と各部名称(ディスプレイ/つまみなど)」
-
信号発生器 入門ガイド 第3回「周波数・振幅・オフセットの調整方法」