BNCコネクタとは|電子計測機器に広く使われる定番コネクタ
BNCコネクタ(Bayonet Neill–Concelmanコネクタ)は、同軸ケーブルを用いた信号接続に使われる、小型で着脱が簡単な高周波コネクタの一種です。電子計測機器、オシロスコープ、信号発生器、スペクトラムアナライザなどの分野で最も広く使用されています。
「BNC」という名称は、発明者の名前(Paul NeillとCarl Concelman)と、バイヨネットロック方式(回して固定する構造)に由来しています。
主な特徴
ワンタッチで着脱可能なロック構造:スリーブをひねるだけで接続・固定が可能。手早く接続でき、現場作業でも扱いやすい設計です。
優れた信号伝送特性:高周波信号でもロスや反射が少なく、50Ωまたは75Ωのインピーダンス整合に対応。測定精度を損なわずに伝送できます。
幅広い周波数対応:50Ωタイプは最大数GHzの周波数帯まで対応でき、計測機器での高周波信号の接続に最適です。
業界標準インターフェース:多くのオシロスコープ、信号源、アンテナ系機器がBNC端子を標準装備しており、測定系統の統一・互換性を保つうえで便利です。
BNCコネクタの使用例
オシロスコープとプローブの接続:パッシブプローブやアクティブプローブの多くがBNCタイプのプラグを採用しており、オシロスコープ本体のBNC端子に直接接続します。
ファンクションジェネレータからの信号出力:信号発生器の出力端子も多くがBNCで、BNCケーブルを用いて回路へ直接接続できます。
クロック信号・トリガー信号の同期用接続:計測機器同士の外部トリガー入力/出力としても広く使用されています。
通信・映像伝送:高周波のアナログ信号やビデオ信号、RF信号の伝送にもBNCが使われるケースがあります。
50Ωと75Ωの違いに注意
BNCコネクタには主に50Ωと75Ωのインピーダンス仕様があります。オシロスコープやRF測定機器には50Ωが主流で、75Ωは主に映像伝送や一部の通信分野で使用されます。
見た目はほとんど同じですが、誤って異なるインピーダンスのコネクタを組み合わせると、反射や信号劣化の原因となるため注意が必要です。
使用時の注意点
定期的に端子の清掃・点検を行うこと:BNC端子内部に汚れや酸化があると、接触不良や信号品質の劣化につながります。
強引な抜き差しは避ける:無理な力をかけると、内部ピンが変形し、接続不良や測定誤差の原因になります。
延長や分岐には専用アクセサリを使用:BNCのT字コネクタや延長ケーブルを使用することで、複数機器の接続が可能です。ただし、反射や減衰に注意しましょう。
まとめ
BNCコネクタは、電子計測機器において最も一般的かつ信頼性の高い信号接続手段です。特にオシロスコープや信号発生器では標準的な端子として使われており、対応プローブやケーブルも豊富に流通しています。
正しい知識と取り扱いを習得することで、測定精度の維持と安全な運用につながります。今後も変わらぬ定番インターフェースとして、あらゆる計測現場で活躍し続けることでしょう。
Previous:
SSMBコネクタとは
Next:
電流プローブとは
もっと用語集
-
オシロスコープの基本操作 第1回「接続と初期設定」
-
位相測定とは
-
波形演算機能とは
-
アラーム設定とは
-
スロープトリガーとは
-
パルストリガーとは
-
シリアルバス解析とは
-
プロトコルデコード(I2C, SPI, UARTなど)とは
-
オシロスコープの基本操作 第10回「オシロスコープの活用事例と応用テクニック」
-
インバータ測定とは
-
波形ズームとは
-
オシロスコープの基本操作 第2回「トリガー設定」
-
オシロスコープの基本操作 第3回「スケーリングと測定機能」
-
オシロスコープの基本操作 第4回「波形の保存とデータ活用」
-
オシロスコープの基本操作 第5回「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」
-
オシロスコープの基本操作 第6回「プローブの種類と選び方」
-
オシロスコープの基本操作 第7回「プローブの正しい使い方と接続方法」
-
オシロスコープの基本操作 第8回「オシロスコープで測定できる代表的な波形と活用例」
-
オシロスコープの基本操作 第9回「よくある測定ミスとその対策」
-
電源波形測定とは
-
トリガー設定とは
-
オシロスコープのLAN接続とは
-
LAN接続とは
-
HDMI出力とは
-
RS-232とは
-
オシロスコープ 校正機能とは
-
校正証明書とは
-
波形ファイル形式(.csv, .bmpなど)とは
-
SCPIコマンドとは
-
周波数分解能とは
-
プローブ補正とは
-
FFT解析とは
-
ゼロ調整とは
-
マーカー機能とは
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第8回「複数チャネルの同時測定と相関分析」
-
データエクスポートとは
-
リモート制御とは
-
自動スケーリングとは
-
スクロール機能とは
-
スクリーンショット保存とは
-
デモモードとは
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第7回「保存・エクスポート・PC転送トラブルの対処法」
-
オシロスコープ入門講座 第7回「波形の種類と読み取り方(矩形波/三角波など)」
-
オシロスコープの基本操作 第11回「オシロスコープ購入時のチェックポイントとおすすめ仕様」
-
オシロスコープ入門講座 第9回「簡単なトラブルシューティング(波形が出ないとき等)」
-
オシロスコープ入門講座 第10回「よくある使い方の事例(電源・通信・オーディオ)」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第1回「波形が表示されないときのチェックリスト」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第2回「プローブの誤接続で起こる問題と対処法」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第3回「トリガーが安定しない原因と解決策」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第4回「ノイズだらけの波形を改善する方法」
-
オシロスコープ入門講座 第5回「信号の入力方法とトリガーの考え方」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第6回「測定値が信用できないときに見直すポイント」
-
オシロスコープ入門講座 第6回「時間軸・電圧軸のスケール調整と見方」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第1回「電源回路の基本測定(リップル/過渡応答)」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第2回「センサー出力の確認(温度/加速度)」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第3回「PWM信号のデューティ比確認」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第4回「アナログ vs デジタル信号の測定方法の違い」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第5回「マイコンI/Oの応答チェック」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第6回「オーディオ波形の確認とひずみの可視化」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第7回「FFTを使ったノイズ源の分析」
-
測定カーソルとは
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第5回「信号が途中で切れている?帯域幅とメモリの落とし穴」
-
信号発生器 入門ガイド 第5回「オシロスコープとの連携測定」
-
プローブの基礎と活用術 第1回「プローブの種類と役割」
-
プローブの基礎と活用術 第2回「正しい接続方法と注意点」
-
プローブの基礎と活用術 第3回「減衰比と入力インピーダンスの関係」
-
プローブの基礎と活用術 第4回「プローブ補正のやり方」
-
プローブの基礎と活用術 第5回「測定精度を保つためのメンテナンスと保管」
-
プローブの基礎と活用術 第6回「プローブ故障のサインと交換時期」
-
信号発生器 入門ガイド 第1回「信号発生器の基本と種類」
-
信号発生器 入門ガイド 第2回「正弦波・方形波・パルス波などの用途と設定」
-
オシロスコープ入門講座 第8回「基本的な測定項目(周期/周波数/振幅など)」
-
信号発生器 入門ガイド 第4回「任意波形の作成と活用事例」
-
オシロスコープ入門講座 第4回「プローブの基礎知識と使い方」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第1回「時間ドメイン vs 周波数ドメインとは」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第2回「FFT表示の基本操作とスケーリング」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第3回「ノイズ解析への応用」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第4回「オーディオ信号や電源リップルの解析」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第5回「帯域幅と分解能の関係」
-
オシロスコープ入門講座 第1回「オシロスコープとは何か?基本概念と用途」
-
オシロスコープ入門講座 第2回「アナログ vs デジタルオシロスコープ」
-
オシロスコープ入門講座 第3回「基本構造と各部名称(ディスプレイ/つまみなど)」
-
信号発生器 入門ガイド 第3回「周波数・振幅・オフセットの調整方法」