スロープトリガーとは
スロープトリガーとは、オシロスコープのトリガー機能の一種で、信号が設定したしきい値(電圧レベル)を一定の立ち上がりまたは立ち下がりの速度(スロープ)で通過した場合にのみトリガーを発生させる条件設定です。一般的なエッジトリガーに加えて、信号の変化速度も監視することで、特定の波形だけを抽出するのに適しています。
基本原理
■ 通常のエッジトリガーでは「ある電圧を上昇または下降で通過した時点」でトリガーがかかる
■ スロープトリガーでは、これに加えて「変化速度(dV/dt)」も条件に加える
■ つまり、変化のスピードが速すぎたり遅すぎたりするとトリガーされない
主な設定項目
■ しきい値:スロープを測定する基準となる電圧レベル
■ スロープの傾き(スレッショルド):例)1V/μs以上の立ち上がりのみトリガー
■ 方向:立ち上がり(Positive)または立ち下がり(Negative)
使用シーン
■ 遅い信号と高速信号が混在している中で、高速なイベントだけを抽出したい場合
■ スパイクノイズ(瞬間的な高周波)など、鋭い立ち上がりを持つ波形の検出
■ 傾斜制限された制御信号(例:スローモードのPWM)の監視
■ 電源立ち上げ時の微細な挙動の検出や解析
操作方法の例
■ トリガーメニューから「スロープ」「Slope」を選択
■ 比較対象とするチャンネルを選び、トリガーレベルを設定
■ 必要に応じて立ち上がり/立ち下がり方向としきい値を調整
■ スロープしきい値(例:500mV/μsなど)を指定
メリット
■ 一般的なトリガーでは取得が難しい微小な過渡現象の検出に有効
■ 不要な遅い変化やゆるやかなノイズを無視して解析効率を高められる
■ 特定のイベントだけを確実に捉えることで、トラブル原因の特定が容易になる
注意点
■ スロープが正確に測定できるだけのサンプリング速度と帯域幅が必要
■ 設定が厳しすぎると、トリガーがかからないこともある
■ 変化が急すぎるノイズもトリガーしてしまう可能性があるため注意が必要
まとめ
スロープトリガーは、エッジの傾き(変化速度)を条件に加えることで、より細かいトリガー制御を実現します。電源立ち上がり検証や過渡ノイズ検出、特定パターンの識別に有効で、オシロスコープの高機能トリガーの一つとして活用されています。
もっと用語集
- 無線通信の開発におけるスペクトラムアナライザの活用法とは?
- OWON TAO3000シリーズ タブレット・オシロスコープの機能と活用ガイド
- OWON SPEシリーズ シングルチャンネル直流電源の使い方と機能解説
- OWON VDS6000シリーズ PCベース・オシロスコープ FAQ
- OWON VDS6000シリーズ PCベース・オシロスコープの特長と使い方
- OWON XDS3000シリーズ オシロスコープ FAQ
- OWON XDS3000シリーズ 4チャンネル デジタル・オシロスコープの特長と活用法
- OWON XSA800シリーズ スペクトラムアナライザ FAQ
- OWON XSA800シリーズ スペクトラムアナライザの機能と活用法
- スペクトラムアナライザとは?仕組み・使い方・活用例をわかりやすく解説
- ファンレス静音!実験室向けDC電源SPSシリーズ活用術
- EMI対策に必須!スペクトラムアナライザによるノイズ測定入門
- スペクトラムアナライザの選び方:帯域・RBW・DANLの意味と基準
- FFT vs スペクトラムアナライザ:どちらで周波数解析するべき?
- スペクトラムアナライザの測定例で学ぶ:チャネルパワー・ACP・OBWとは
- 測定現場で役立つスペアナの便利機能10選【マーカ・トレース・トリガ】
- 初心者向け!スペクトラムアナライザの使い方ステップガイド
- スペクトラムアナライザ導入事例:教育機関・開発・品質保証の現場から
- ハンドヘルド型 vs 据え置き型:スペクトラムアナライザの形状別メリット比較
- 1台2役!OWON SPMシリーズで電源と測定を同時に
- 300Wクラスで選ぶ直流電源ベスト3:SPE・SPM・SPS比較
- スペクトラムアナライザの基礎知識:オシロスコープとの違いとは?