オシロスコープ 自作回路
はじめに
オシロスコープは電子信号の波形を可視化するための必須ツールだが、特にホビー用途や教育現場においては、自作の電子回路を用いて観測を行うケースが多い。ここでいう「自作回路」とは、市販の完成基板ではなく、ブレッドボードやユニバーサル基板上に構築した電子回路を指す。本記事では、そうした自作回路にオシロスコープを接続・活用する際の基本的な考え方や注意点、さらに観測のコツについて解説する。
自作回路とオシロスコープの接続
自作回路の電圧や信号の動作確認を行うには、まずオシロスコープのプローブを正しく接続する必要がある。一般的なプローブには信号ラインとグランドラインがあるが、グランドの取り方を誤ると最悪の場合、短絡や破損の原因となるため注意が必要である。
電源回路やオペアンプ回路、PWM出力回路など、使用するICや構成によって信号の電圧範囲や基準電位は異なる。必ず測定対象のグランドとオシロスコープのグランドを共通にする必要があるが、その際にオシロスコープが接地されているかどうかも確認すべきである。アース付き三つ穴コンセントに接続された据え置き型オシロスコープの場合、プローブのグランドはシャーシグランド=大地と接続されていることがあるため、回路と電源の接地構成によっては注意が必要だ。
ブレッドボード使用時の注意点
初学者や試作段階ではブレッドボードを使って回路を組むことが多い。ブレッドボードは手軽に配線できるが、接触抵抗や寄生容量が大きいため、高周波信号や微小信号の測定には不向きなこともある。特に、デジタル信号の立ち上がり時間が早い場合、波形が乱れたり、想定と異なる挙動をする可能性がある。
オシロスコープで波形を観察する際には、できるだけプローブのリード線を短くし、プロービングポイントを安定させる工夫が求められる。ブレッドボードには専用のプローブアダプタやグランドスプリングなどを使用することで、測定の安定性が向上する。
よくある測定対象とポイント
オシロスコープによって自作回路の動作確認を行う際には、以下のような信号や部位を観測対象とすることが多い。
発振回路の出力波形
マイコンやセンサのデジタル信号
オペアンプの入力・出力電圧
モータ駆動回路のPWM波形
DC-DCコンバータのスイッチング信号やリップル
これらの測定対象に応じて、垂直スケールや時間軸設定、トリガ条件を調整する。例えばPWM波形であればトリガモードをエッジに設定し、パルスの立ち上がりで安定させる。また、発振回路などでは波形が安定しない場合があるが、これはプロービングやグランドの影響によることが多い。
自作回路で起きやすいノイズと対策
自作回路で特に悩まされやすいのがノイズの混入である。ブレッドボードやジャンパワイヤは高インピーダンスでノイズを拾いやすく、オシロスコープにもノイズ成分がそのまま表示される。信号が意図しない動きをしているように見える場合、その原因が回路の不具合なのか、配線由来のノイズなのかを見極めることが重要である。
対策としては、配線をできるだけ短くする、デカップリングコンデンサを各ICの近くに設ける、グランドラインを太くするなどの基本に加え、必要に応じてシールドやフェライトビーズを使うこともある。
高分解能オシロスコープの活用
OWON製品のように12ビット分解能を持つ高分解能オシロスコープは、自作回路の微小信号やリップルの観測に特に適している。たとえば電源ノイズやアナログセンサ出力などの小信号領域では、一般的な8ビットの機種では表示されない細かな変動を捉えることができる。自作回路の改良やトラブルシューティングを行う上で、大きなアドバンテージとなる。
教育用途やプロトタイピングにも有効
自作回路とオシロスコープの組み合わせは、電子工学を学ぶ学生にとっても非常に有益である。自分の手で組んだ回路がどのように動作しているのかを目で確認できるため、理論と実践の橋渡しとなる。また、プロトタイプ開発の初期段階でも簡易に信号確認ができる点で、タブレット型やバッテリー駆動型のオシロスコープは特に使いやすい。
まとめ
オシロスコープは、自作回路の動作確認やトラブルシューティングにおいて極めて有効なツールである。ただし接続方法や測定環境を誤ると、誤った結果を導いたり、機器の破損を招く可能性もある。安全かつ正確な測定を行うには、基礎的な測定スキルと、正しいプロービング、適切な設定が求められる。
OWONをはじめとした高分解能・高機能な計測器を活用することで、教育・研究・開発などあらゆる場面で、より信頼性の高い測定が可能となる。
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