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オシロスコープにおける波形の一部を詳しく見る方法(ズーム機能の活用)
- 2025/7/1 -

オシロスコープにおける波形の一部を詳しく見る方法(ズーム機能の活用)

ズーム機能とは何か

オシロスコープにおけるズーム機能とは、波形の一部分を拡大表示し、詳細な変化や微小な異常を視覚的に確認するための機能である。通常の表示では波形全体の流れを把握できるが、高速な信号や微細な変化を捉えるには、部分的な拡大が不可欠である。ズーム機能はこの目的を果たすための強力なツールとして、多くの現場で活用されている。

ズーム機能の基本的な使い方

ズーム機能を使用するには、まず通常の波形を取得した状態でズームモードを有効にする。機種により操作方法は異なるが、多くの場合、ズームボタンを押すと画面が上下または左右に分割され、上段に全体波形、下段にズーム表示が現れる。この下段に表示された波形が、ユーザーが選択した拡大領域となる。

拡大領域の範囲は、カーソルやマーカー、あるいは専用のスケールノブで設定可能である。拡大する部分を指定し、時間軸(横軸)や電圧軸(縦軸)の分解能を細かく設定することで、より鮮明な波形の観察が可能になる。

どのようなときにズームが有効か

ズーム機能が最も有効に働くのは、長時間にわたる信号の中から特定の一部分だけを詳細に確認したいときである。たとえば、数百万ポイントにおよぶ長時間のデータを記録した際、その中に一瞬だけ現れる異常信号やノイズを発見するには、ズームによる拡大が不可欠である。

また、プロトコル信号の解析や複雑なマルチパルス波形、電源立ち上げ時の過渡現象など、時間的に狭い範囲に集中した現象の観察にも適している。

垂直ズームと水平ズーム

ズーム機能には、時間軸方向の拡大(水平ズーム)と電圧軸方向の拡大(垂直ズーム)の2種類がある。時間軸のズームでは、波形の変化するタイミングや間隔を詳細に見ることができ、垂直ズームでは、波形の振幅や微細なリップル、ノイズの有無などを観察するのに役立つ。

特に電源設計やEMC評価では、ノイズレベルの確認が重要な課題となるため、垂直ズームを併用することで微小な成分を視覚的に把握できる。

ズーム機能とトリガの併用

波形の一部を詳細に見るには、ズーム機能に加えて正確なトリガ設定も重要である。トリガ条件を適切に設定して、観測したい波形を安定表示させた上でズームを行うことで、目的の現象を効率的に捉えることができる。

たとえば、バースト波形の一発目だけを見たい場合や、突発的に現れるスパイクノイズを観察したい場合など、トリガとズームの連携は強力な解析手段となる。

高分解能データとズームの関係

オシロスコープによっては、ズーム機能を使うことでメモリ内の高分解能データを直接表示できる機種もある。通常の波形表示では圧縮処理により平均化された波形が表示されるが、ズームにより細かな点まで再現された波形を確認できるため、波形解析の精度が格段に向上する。

12ビットや14ビットなどの高分解能オシロスコープでは、このようなズーム機能が特に重要になる。せっかくの高精度を活かすためにも、ズームによる拡大表示を積極的に活用すべきである。

波形解析の実践例

たとえば、あるPWM信号の立ち上がり時間を正確に確認したい場合、全体の周期を見るための通常表示と、立ち上がり部分だけを拡大したズーム表示を併用することで、非常に高い精度で確認できる。また、通信信号においては、1ビットのデータが送られる期間を拡大し、アイパターンやジッターの影響を評価するのにも役立つ。

このように、ズーム機能は単なる視認性向上にとどまらず、測定精度を高めるための鍵となる機能である。

まとめ

ズーム機能は、オシロスコープを用いた測定の中で非常に有用なツールであり、波形の一部を詳細に観察することで、微細な現象や異常の発見に大きく貢献する。時間軸や電圧軸の拡大、カーソルやトリガとの連携など、複数の機能と組み合わせることでその効果を最大限に発揮できる。

日々の測定において、ズームを使いこなすことで、より高度な波形解析が可能となり、トラブルの早期発見や製品開発の効率化につながる。

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