波形更新レート(Waveform Update Rate)とは?
波形更新レートとは、オシロスコープが1秒間に何回まで波形を画面上に表示(更新)できるかを示す性能指標で、単位は波形/秒(wfms/s:waveforms per second)で表されます。これはオシロスコープの“見える力”とも言える重要なスペックであり、高い更新レートを持つほど、信号の異常や一時的なノイズを捉えやすくなります。
たとえば、更新レートが30,000 wfms/sのオシロスコープでは、1秒間に最大3万回の波形を画面に描画できることになります。これは、信号の中にごく短い間だけ現れるグリッチや過渡異常、ランダムなノイズ現象などを“見逃さずに”検出できる可能性が高いということを意味します。
逆に、更新レートが低いと「波形が滑らかに表示されない」「異常波形を見落とす」といった問題が生じることがあり、デバッグや不具合解析の効率に大きく影響します。
OWON製のデジタルオシロスコープにおいても、波形更新レートは製品選定の重要なポイントです。たとえば:
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OWON XDSシリーズでは、最高75,000 wfms/sの高速更新性能を実現し、複雑な信号変化や一過性の異常検出に対応しています。
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OWON ADS800Aシリーズも、12ビットの高分解能と高速波形更新の両立により、微小な異常検出と高精度観測を同時に可能にしています。
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一方、コンパクトで低価格なOWON HDS200シリーズでも、現場での基本的なトラブルシューティングに必要な更新性能を備えています。
なお、波形更新レートはトリガモード、時間軸、メモリ長、処理設定などによって実際の値が変化するため、カタログスペックだけでなく、実測性能や使用環境に応じた選定が重要です。
また、波形更新の高速化には、内部処理エンジンやFPGA構造の最適化が必要であり、近年ではメーカーごとの技術力の差が現れる部分とも言えます。
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