シリアルバス解析とは
シリアルバス解析とは、オシロスコープを用いてI²C、SPI、UART、CAN、LINなどのシリアル通信プロトコルのデータ内容をデコード(解析)し、波形とともに視覚的に表示する機能です。組み込みシステムや通信機器の開発・デバッグに欠かせない機能です。
基本概念
■ シリアル通信は、データを1本または少数の信号線で時系列的に送受信する方式
■ オシロスコープでこの信号を観測し、規格に基づいてデータをバイナリや16進数、人間が読める形式に変換して表示する
■ 通常のアナログ波形だけでなく、アドレス、データ、ACK/NACK、エラービットなどの情報も取得可能
対応プロトコルの例
■ I²C(2線式)
■ SPI(3線式)
■ UART / RS-232(非同期)
■ CAN / CAN FD(車載ネットワーク)
■ LIN(低速車載通信)
■ USB, I²S, SENTなど(上位機種で対応)
表示内容の例
■ アナログ波形の上に、デコードされたアドレスやデータをオーバーレイ表示
■ トリガー条件に「特定アドレスの検出」「特定データ値の一致」などを設定可能
■ 一覧形式で通信履歴(タイムスタンプ付き)を表示するモードもあり
使用シーン
■ マイコンと周辺機器(センサ、メモリなど)間の通信内容確認
■ 通信エラー(ノイズ、タイミングミス)の原因特定
■ 設計通りにデータが送受信されているかの検証
■ 車載ネットワークの信頼性評価や異常通信の検出
操作方法の例
■ トリガーメニューまたは解析メニューから「バス解析」を選択
■ 対応プロトコルを選び、クロック/データ線のチャンネルを割り当て
■ 信号の極性、ビット順、ボーレート、アドレス幅などの設定を入力
■ デコード結果が波形に重ねて表示される
メリット
■ 複雑な通信内容を視覚的に把握でき、デバッグ効率が大幅に向上
■ プロトコルレベルでのトリガーが可能になり、対象イベントを正確に抽出
■ 専用ロジックアナライザを使用せずに通信内容の把握が可能
注意点
■ 波形品質が悪いとデコードエラーが発生する可能性あり
■ ボーレートやプロトコル設定が一致していないと正しく解析できない
■ 機種により対応するプロトコルやチャネル数が異なるため、事前確認が必要
まとめ
シリアルバス解析は、組み込み開発や通信系設計において不可欠な解析手段です。波形とデコード情報を同時に確認することで、通信エラーや設計ミスを迅速に特定でき、設計・評価・保守の現場で広く活用されています。
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