CH活用テクニック集
複数信号の同時測定でタイミングを可視化する
オシロスコープの最大の利点の一つは、複数のチャンネルを使って同時に複数の信号を観測できることにある。たとえば、マイコンのGPIO出力(CH1)と、それに応答するセンサの信号(CH2)を同時に観測することで、タイミングの遅延や信号の正確な応答関係を目視で確認することができる。
CANやI2Cなどバス信号のタイミング関係を追う
CAN通信では、データ信号とACKのタイミング、バスの休止状態とアクティブ状態の変化などを同時に観測したいことが多い。CH1にCAN_H、CH2にCAN_Lをつなぎ、CH3にトリガ信号源を設定すれば、通信イベントを起点に複数のデータやシーケンスが時系列で可視化できる。I2CでもSCLとSDAをそれぞれ別CHで観測することで、クロックとデータの同期ズレを確認できる。
差動信号の疑似測定にCH差分機能を使う
専用の差動プローブがない場合でも、CH1に正側、CH2に負側を接続し、オシロスコープの「CH1−CH2」機能を使うことで、差動信号を擬似的に再現することが可能。ただし、グランドが共通になっている機種では使用方法に注意が必要で、浮遊電圧やショートを防ぐ対策が求められる。
ロジックとアナログの融合表示で波形を深く理解する
4CH以上ある場合は、CH1〜CH2にアナログ信号、CH3〜CH4にロジック出力を観測することで、アナログとデジタルの動作関係を同時に把握できる。たとえば、温度センサのアナログ電圧と、同時に出力されるON/OFF信号を比較することで、スレッショルドのずれや異常挙動が見えてくる。
複数CHで異なるトリガ条件を活用する
機種によっては、複数のチャンネルに対して異なるトリガ条件を設定できる機能を持つモデルもある。たとえばCH1で立ち上がりエッジ、CH2でスロープトリガをかけて観測すると、それぞれの信号イベントをきっかけに詳細波形を捉えることができ、複雑なシーケンスの確認に役立つ。
クロックとデータの位相ずれ検出に使う
クロック信号(CH1)とデータ信号(CH2)を同時に表示し、カーソル機能を使って立ち上がりエッジ同士の時間差を測定することで、タイミングエラーやジッターの傾向を把握できる。複数CHがあれば、クロック分周後の各段の波形を比較することも可能。
電源ラインと負荷応答の同時解析
CH1に電源入力、CH2に負荷の応答信号を接続することで、電源投入時や過渡応答の解析が可能となる。さらにCH3に制御信号、CH4に外部トリガを加えることで、系全体の安定性や制御の有効性を一度に評価できる。
周波数ごとの挙動を分けて観測する
1CHで低周波、2CHで高周波、3CHで中間帯域というように、周波数フィルタやカップリングを使い分けてCHごとに異なる信号を観測する方法も有効である。たとえば、スイッチング電源回路では、入力のリップル(低周波)とスイッチングノイズ(高周波)を分けて測定することで、対策すべきノイズ源を特定しやすくなる。
トラブル再現時の記録に活用
全CHを使って長時間波形を記録し、突発的な異常現象がどの信号に起因するかを追跡する。たとえば、8CHオシロスコープを使えば、複数のセンサ信号や電源、制御信号をすべて同時に観測でき、異常発生の時刻や波形の相関関係をあとから解析できる。
CHごとのカラー設定とラベリングで視認性向上
CHごとに固定の色分けがある場合でも、機種によっては自由に配色を変更できるものもある。視認性を高めるために、実際の配線色に合わせたり、ラベル表示でCH1=Vin、CH2=Voutなどと明示したりすると、ミスの防止に役立つ。
まとめ
CHをうまく活用することで、オシロスコープの解析力は飛躍的に高まる。ただ単に多いだけではなく、それぞれのCHに適切な信号と設定を割り当て、構成的に測定することで、複雑な電子システムのふるまいも正確に捉えることができる。CH数が多いほど同時観測の自由度が広がるため、用途に応じて柔軟に活用したい。
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