オシロスコープにおける波形とは
オシロスコープは、時間軸に対して電圧の変化を波形として表示する電子測定機器です。ここでは「波形」そのものの意味から、オシロスコープで観測される主な波形の種類、注意点までを解説します。
■ 波形とは
波形とは、電気信号の時間的な変化をグラフ化したものです。オシロスコープでは、横軸が「時間(Time)」、縦軸が「電圧(Voltage)」を表します。波形を通じて信号の周期性や歪み、ノイズ、突発的な異常などが可視化されます。
■ オシロスコープにおける波形表示の意義
・目に見えない電気信号を直感的に把握できる
・周波数、周期、振幅、ノイズなどを視覚的に確認できる
・異常発生箇所や信号の乱れをすばやく特定できる
・設計・検証・故障診断において不可欠なツール
■ 一般的な波形の種類
オシロスコープ上で観測される波形には、次のような代表的な形があります。
・正弦波(Sine wave)
もっとも基本的な周期波。AC電源やオーディオ信号などに見られます。
・方形波(Square wave)
デジタル信号やクロック信号に多い波形で、ON/OFFの切り替えが明確です。
・矩形波(Rectangular wave)
デューティ比が変動する方形波。PWM制御やセンサ出力などに使用されます。
・三角波/のこぎり波
発振器や信号源で使用される信号。リニアな変化を持つ波形です。
・インパルス波(パルス波)
瞬間的な変化を捉えるのに有効。過渡現象の検出などに使われます。
■ 波形観測のための設定ポイント
正確な波形観測には、以下のパラメータ設定が重要です。
・時間軸(Time/div):波形1周期が見やすい倍率に調整
・電圧軸(Volt/div):波形が画面に収まるようにスケーリング
・トリガ設定:波形の表示を安定させるための発生条件の指定
・プローブ倍率:プローブの減衰比(×10/×1)をオシロ本体に合わせる
・オフセット/ポジション:波形の縦横位置の調整
■ 波形の分析に便利な機能
OWONのADS800Aシリーズなどには、波形観測と解析を補助する各種機能が搭載されています。
・自動測定機能:周期、周波数、最大値、立ち上がり時間などを自動で計算
・カーソル機能:任意の2点間の時間/電圧差を測定
・波形記録/比較:保存した波形との比較が可能
・FFT表示:時間波形を周波数成分に変換してノイズやスペクトル成分を分析
・ZOOM表示:詳細観察用に一部波形を拡大表示
■ 波形が正しく表示されないときの原因例
・プローブの接続ミスやGND未接続
・トリガレベルやモードの設定ミス
・信号レベルが小さすぎる/大きすぎる
・周波数や周期に対して時間軸設定が不適切
・ノイズ環境(接地不良や近接機器の影響)
■ 12ビットオシロスコープと波形の関係
一般的な8ビットオシロでは、256段階(2⁸)の分解能ですが、OWONのADS800AやADS900シリーズのような12ビットオシロでは4096段階(2¹²)の分解能で波形を表示します。これにより、微小な信号やゆるやかな波形変化も滑らかに表示できるため、アナログ信号やセンサ波形の可視化に有効です。
■ 波形活用の実例
・DC-DCコンバータの出力電圧波形(リップル測定)
・マイコンI/Oポートのパルス波形確認
・オーディオ信号の波形と歪み確認
・センサの応答波形(加速度・温度・圧力など)
・ノイズや過渡異常波形のキャプチャ
■ まとめ
オシロスコープで観測される波形は、電子機器の「状態」をそのまま映し出す指標です。適切な設定と観察技術を身につけることで、より高度な測定やトラブル解析が可能になります。とくに12ビット高分解能のオシロスコープを活用すれば、アナログ的な微細変化も見逃すことなく把握できるため、応用範囲がさらに広がります。
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