プローブの基礎と活用術 第1回「プローブの種類と役割」
オシロスコープを正しく活用するうえで、プローブの選定と使い分けは非常に重要です。プローブは信号を正確に測定器へ伝えるための橋渡しであり、誤った種類を使うと測定結果に大きな影響が出ます。本シリーズでは、プローブの基本から実践的な使い方までを順に解説していきます。第1回は、各種プローブの特徴と役割について紹介します。
パッシブプローブ
■ 最も一般的なプローブで、ほとんどのオシロスコープに標準付属
■ 回路に電源を供給せず、シンプルで安価な構造
■ 減衰比(10:1や1:1など)によって信号のスケーリングを行う
■ 高インピーダンス入力で回路への負荷が少なく、一般的なアナログ信号に向いている
■ 高周波特性や応答速度はアクティブプローブに比べて劣る
アクティブプローブ
■ 内部にアンプを内蔵しており、高速信号や微小信号の測定に適する
■ 高帯域かつ高入力インピーダンスを実現し、信号劣化を抑える設計
■ 電源供給が必要で、価格も高め
■ ロジックICやRF回路など、高周波の測定に用いられることが多い
■ 一般的な用途にはオーバースペックになることもあるため、選定は慎重に行う
差動プローブ
■ 2つの入力間の電位差を測定する専用プローブ
■ GNDを共通にしない測定(フローティング)に対応
■ インバータ出力やACライン、絶縁回路の測定に不可欠
■ ノイズの多い環境でも高いコモンモード除去性能を発揮する
高電圧プローブ
■ 数百ボルトから数キロボルトの高電圧を安全に測定するためのプローブ
■ 絶縁構造や放電対策が施されており、感電防止の安全設計がなされている
■ 電源装置の2次側や商用電源の測定などに使用される
■ 定格を超える電圧を測定しないよう、仕様の確認が必須
電流プローブ
■ 回路に流れる電流波形を非接触またはクランプ方式で測定
■ CT方式やホール素子方式など、検出原理により特性が異なる
■ 電流トランジェントや突入電流、スイッチング電流の波形観測に用いる
■ 電圧プローブとの併用により、波形演算機能で電力測定も可能
まとめ
プローブは、測定の正確さと安全性を左右する極めて重要な要素です。測定対象の特性や必要な帯域、信号レベルに応じて、適切なプローブを選ぶことがトラブルの回避と効率的な作業につながります。次回は「正しい接続方法と注意点」について解説します。
■「プローブの基礎と活用術」シリーズ
第1回:プローブの種類と役割(パッシブ/アクティブ/差動/電流など)
第2回:正しい接続方法と注意点
第3回:減衰比と入力インピーダンスの関係
第4回:プローブ補正のやり方
第5回:測定精度を保つためのメンテナンスと保管
第6回:プローブ故障のサインと交換時期
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