オシロスコープの基本操作 第6回「プローブの種類と選び方」
オシロスコープでの測定において、プローブは非常に重要な役割を果たします。どんなに高性能なオシロスコープでも、プローブが適切でなければ正確な測定はできません。本記事では、プローブの種類や特徴、用途に応じた選び方のポイントについて解説します。
プローブの基本的な役割
■ 信号を被測定回路からオシロスコープ本体に正確に伝えるための中継機器です
■ 電気的な特性(インピーダンス、減衰比、帯域幅など)が測定精度に大きく影響します
■ 使用するオシロスコープと回路の特性に合ったプローブを選ぶ必要があります
主なプローブの種類
■ パッシブプローブ:最も一般的で扱いやすく、多くのオシロスコープに標準付属されています。高インピーダンスで低周波測定に向いています
■ アクティブプローブ:高速・高周波信号の測定に適しており、内部にアンプを持ちます。高感度でノイズに強い反面、価格が高めです
■ 差動プローブ:2点間の電圧差を測定するためのプローブで、フローティング信号や高電圧差動信号の測定に使用されます
■ 高電圧プローブ:電源回路やインバータなど、高電圧を扱う測定対象に対応するプローブです。安全性を確保するために専用設計されています
■ 電流プローブ:電流波形の測定に特化したプローブで、クランプ型やシャント型があります
プローブ選定時のポイント
■ 測定対象の最大電圧と周波数帯域を確認し、それに対応したプローブを選ぶ必要があります
■ プローブの帯域幅がオシロスコープの帯域と一致または上回っていることが望ましいです
■ 減衰比(例:10:1)は入力インピーダンスとの組み合わせで電圧測定範囲や負荷に影響を与えます
■ 差動や高電圧の信号を測定する場合、一般的なパッシブプローブでは対応できないため、専用のプローブを選定します
誤った選択によるリスク
■ 帯域幅が不足していると、高速信号の立ち上がりが遅く見えてしまい、波形が歪むことがあります
■ 減衰比設定が不一致だと、オシロスコープに表示される電圧値が正確ではなくなります
■ 接地ミスや高電圧測定時の誤接続は、機器やユーザーの安全に重大な影響を与える可能性があります
まとめ
プローブは、オシロスコープ測定の成否を左右する重要なアクセサリです。測定対象や使用目的に応じて最適な種類を選ぶことで、信頼性の高いデータ取得と作業効率の向上が期待できます。次回は「プローブの正しい使い方と接続方法」について解説します。
オシロスコープの基本操作 シリーズタイトル一覧
■ 第1回「接続と初期設定」
■ 第2回「トリガー設定の基本」
■ 第3回「スケーリングと測定機能」
■ 第4回「波形の保存とデータ活用」
■ 第5回「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」
■ 第6回「プローブの種類と選び方」
■ 第7回「プローブの正しい使い方と接続方法」
■ 第8回「オシロスコープで測定できる代表的な波形と活用例」
■ 第9回「よくある測定ミスとその対策」
■ 第10回「オシロスコープの活用事例と応用テクニック」
■ 第11回「オシロスコープ購入時のチェックポイントとおすすめ仕様」
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