オシロスコープの基本操作 第8回「オシロスコープで測定できる代表的な波形と活用例」
オシロスコープは、さまざまな種類の信号波形をリアルタイムで可視化する測定器です。測定対象によって、波形の特性や観察ポイントは異なります。今回は、代表的な波形とその測定目的、そして活用シーンについて解説します。
代表的な波形とその特徴
■ 正弦波(サイン波):交流電源やオーディオ信号などで一般的。周波数や振幅、歪みの確認に使用
■ 矩形波(スクエア波):デジタル回路のクロック信号やパルス信号。立ち上がり時間やデューティ比が重要
■ 三角波:発振器やテスト信号として利用。線形性の確認や回路応答のチェックに適している
■ パルス波:一時的な信号変化やトリガー信号。立ち上がり/立ち下がり時間、パルス幅、繰返し周期の測定がポイント
■ ランダム波形:ノイズや高周波干渉の分析に用いられる。不規則性の把握や統計解析が必要
測定波形と回路の関連性
■ 電源回路:スイッチング波形、過渡応答、リップル電圧などを測定し、安定性とノイズの評価に使用
■ マイコン・デジタル回路:クロック波形やI/OのON/OFF状態、デジタルバスの解析に役立つ
■ アナログ回路:フィルター特性や信号増幅後の波形、オフセット電圧などを観察し、回路動作の確認に使われる
■ センサ信号:周期的な出力やアナログ出力を波形として記録し、動作確認や応答遅延を測定する
活用例と測定意図
■ 設計検証:理論通りの波形が出力されているか、ノイズやタイミング誤差がないかをチェック
■ 不具合解析:異常時に発生する過電圧、振動、変調信号などを特定し、原因追及に利用
■ 生産ライン:製品検査工程で規定波形との一致確認により、出荷基準をクリアしているか判断
■ 教育・研究:波形の観察を通じて、回路動作や信号処理の基礎を体感的に理解できる
測定時の注意点
■ 波形が正しく表示されない場合、トリガー条件やタイムベース設定を見直す必要があります
■ 高速信号や微小信号を扱う場合、プローブや入力インピーダンスの影響を考慮する必要があります
■ 測定対象に応じたカップリング設定(AC/DC)を適切に選択することも重要です
まとめ
オシロスコープは、単に波形を見るだけでなく、その背後にある電気的現象を理解するための強力なツールです。測定対象ごとに波形の意味を正しく把握することで、設計の精度や製品品質の向上につながります。次回は「よくある測定ミスとその対策」について解説します。
オシロスコープの基本操作 シリーズタイトル一覧
■ 第1回「接続と初期設定」
■ 第2回「トリガー設定の基本」
■ 第3回「スケーリングと測定機能」
■ 第4回「波形の保存とデータ活用」
■ 第5回「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」
■ 第6回「プローブの種類と選び方」
■ 第7回「プローブの正しい使い方と接続方法」
■ 第8回「オシロスコープで測定できる代表的な波形と活用例」
■ 第9回「よくある測定ミスとその対策」
■ 第10回「オシロスコープの活用事例と応用テクニック」
■ 第11回「オシロスコープ購入時のチェックポイントとおすすめ仕様」
Previous: オシロスコープの基本操作 第9回「よくある測定ミスとその対策」
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