オシロスコープの基本操作 第3回「スケーリングと測定機能」
前回は波形を安定表示させるためのトリガー設定について解説しました。今回は、表示された波形を見やすく調整し、数値的に評価するための「スケーリング」と「測定機能」に焦点を当てます。測定対象に応じてスケールを調整し、自動測定機能を活用することで、効率的で再現性のある観測が可能になります。
垂直スケール(電圧軸)の調整
■ 「V/div」は、1目盛りあたりの電圧値を意味し、信号の振幅に応じて適切に調整します
■ 波形の上端・下端が画面に収まるようにスケールを広げたり狭めたりします
■ 入力信号が小さすぎて見えない場合はスケールを細かく設定し、詳細波形を確認します
■ プローブの減衰比と本体設定が一致していないと、電圧表示が誤ってしまうため注意が必要です
水平スケール(時間軸)の調整
■ 「Time/div」は、横軸の1目盛りあたりの時間を表します
■ 周期が短い信号(高速パルスなど)には短い時間/divを設定して詳細を確認します
■ 逆に、周期が長い信号には広いスケールを設定して全体の流れを観測します
■ スケール変更は波形の観察だけでなく、トリガーの効果にも影響を与えるため連携して調整します
自動測定機能の活用
■ 多くのデジタルオシロスコープは自動測定機能を搭載しており、波形の数値的な評価が可能です
■ 代表的な自動測定項目には以下のようなものがあります
- 周期
- 周波数
- ピーク電圧(最大値、最小値)
- 平均電圧
- RMS(実効値)
- パルス幅、立ち上がり/立ち下がり時間
■ 波形が安定している状態で自動測定を有効にすることで、再現性のあるデータ取得が可能になります
カーソル測定との違い
■ 自動測定は測定項目を選ぶだけで数値が表示されるのに対し、カーソル測定は2点間の差分を自分で指定します
■ 精密な区間測定や特殊な部分の観察には、カーソル測定が適しています
■ 画面上の波形と数値が連動するため、実際の信号の変化に即した判断がしやすくなります
まとめ
スケーリングと測定機能を理解することで、オシロスコープは単なる波形表示器から、定量的な評価ツールへと進化します。画面上の調整だけでなく、測定モードの活用によって作業効率と精度が大きく向上します。次回は「波形の保存とデータ活用」について詳しく解説します。
オシロスコープの基本操作 シリーズタイトル一覧
■ 第1回「接続と初期設定」
■ 第2回「トリガー設定の基本」
■ 第3回「スケーリングと測定機能」
■ 第4回「波形の保存とデータ活用」
■ 第5回「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」
■ 第6回「プローブの種類と選び方」
■ 第7回「プローブの正しい使い方と接続方法」
■ 第8回「オシロスコープで測定できる代表的な波形と活用例」
■ 第9回「よくある測定ミスとその対策」
■ 第10回「オシロスコープの活用事例と応用テクニック」
■ 第11回「オシロスコープ購入時のチェックポイントとおすすめ仕様」
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