オシロスコープの基本操作 第2回「トリガー設定」
前回は接続と初期設定について解説しました。今回は、オシロスコープで波形を安定して観測するために欠かせない「トリガー設定」について説明します。トリガーは、波形をどのタイミングで描画するかを決める基準点であり、正しく設定することで波形のずれや不安定な表示を防ぐことができます。
トリガーの基本概念
■ トリガーとは、波形のある条件を検出したタイミングで波形表示を開始させる仕組みです
■ 繰り返し発生する信号でも、トリガーを設定しないと波形が画面上で流れてしまいます
■ トリガーが適切に動作すると、波形が固定されて安定した観測が可能になります
主なトリガー条件の種類
■ エッジトリガー:立ち上がりまたは立ち下がりの電圧が設定値を超えた瞬間でトリガーをかけます
■ パルストリガー:一定幅のパルスに反応してトリガーがかかります。パルス幅の異常検出に有効です
■ スロープトリガー:信号の変化速度(スロープ)を条件にトリガーを設定します
■ ビデオトリガー:NTSCやPALなどの映像信号に対応した専用トリガーです
■ オート/ノーマル/シングル:トリガーモードの違いにより動作が変わります
トリガーモードの使い分け
■ オート:信号がなくても自動的に波形を更新。波形がない場合でも画面が真っ暗にならず便利
■ ノーマル:指定したトリガー条件が満たされたときのみ表示を更新。波形の安定性重視に向いています
■ シングル:1回だけトリガーをかけて波形を捕捉。過渡現象や一度きりの現象観測に最適
設定手順の例
■ トリガーメニューからトリガーソース(通常はCH1など)を選択します
■ トリガータイプを「エッジ」や「パルス」などの中から用途に応じて選びます
■ トリガーレベルを調整し、波形のどの位置でトリガーをかけるかを指定します
■ 波形が安定して画面に表示されるまでスケールや位置を微調整します
活用例
■ デジタル信号の立ち上がり時間の確認
■ パルス信号の異常な幅を検出
■ 特定条件下の一度だけ発生するノイズの観測
■ モータ起動時の突入電流の捕捉
まとめ
トリガー設定を正しく行うことで、波形が安定し、必要なタイミングの信号を的確に観測できます。オシロスコープの性能を最大限に活用するためには、トリガーの種類とモードの理解が不可欠です。次回は波形のスケーリングと測定機能について解説します。
オシロスコープの基本操作 シリーズタイトル一覧
■ 第1回「接続と初期設定」
■ 第2回「トリガー設定の基本」
■ 第3回「スケーリングと測定機能」
■ 第4回「波形の保存とデータ活用」
■ 第5回「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」
■ 第6回「プローブの種類と選び方」
■ 第7回「プローブの正しい使い方と接続方法」
■ 第8回「オシロスコープで測定できる代表的な波形と活用例」
■ 第9回「よくある測定ミスとその対策」
■ 第10回「オシロスコープの活用事例と応用テクニック」
■ 第11回「オシロスコープ購入時のチェックポイントとおすすめ仕様」
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