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オシロスコープ サンプリングレート
- 2025/6/17 -

オシロスコープ サンプリングレート

サンプリングレート(またはサンプルレート)とは、オシロスコープが1秒間に信号を何回測定(サンプリング)するかを示す指標です。単位は「サンプル/秒(Sa/s)」で表され、1GSa/s(ギガサンプル/秒)は1秒間に10億回の測定を行うことを意味します。

 

サンプリングレートの役割

オシロスコープは、信号を連続的に観測しているように見えますが、実際には一定の間隔で電圧を測定し、そのデータを元に波形を再構成しています。つまり、波形は無限の連続データではなく、離散的な点の集合です。この「点の密度」を決定づけるのがサンプリングレートです。サンプリングレートが高いほど、より細かく波形を描画することができ、急峻なエッジや過渡的な現象も正確に捉えることが可能になります。

 

ナイキストの定理とエイリアシング

サンプリングレートを語る上で欠かせないのが、ナイキストの定理です。これは「正確に波形を再現するためには、信号の最高周波数成分の少なくとも2倍以上のサンプリングレートが必要」という原理です。たとえば、50MHzの信号を正確に観測するには、最低でも100MSa/sのサンプリングが必要になります。

サンプリングレートが不足すると「エイリアシング(折り返し現象)」が発生します。これは、本来の波形とは異なる偽の波形が表示される現象で、測定誤差の原因になります。したがって、サンプリングレートは高ければ高いほど安全という側面があります。

 

実効レートと仕様表の見方

製品カタログには「最大サンプリングレート」が記載されていますが、これは通常1チャネルのみ使用した場合の値です。複数チャネルを同時に使用すると、サンプリングレートが分配され、実効値が低下する場合があります。たとえば「2.5GSa/s(1ch)/1.25GSa/s(2ch)」といったように記載されている製品では、2チャネル同時使用時はそれぞれのレートが半分になります。

また、等価時間サンプリング(ETS)と実時間サンプリング(RTS)を区別することも重要です。ETSは周期信号専用で、高い見かけ上のレートを実現できますが、非周期信号には対応できません。ほとんどの用途では、実時間サンプリングが基本となります。

 

サンプリングレートと時間軸の関係

サンプリングレートは、時間軸の設定(time/div)とも密接に関係しています。時間軸を細かく設定した場合には、波形を表示するためにより多くのサンプルが必要になります。逆に、時間軸を広げて長時間の波形を記録する場合、サンプル数が制限されるとサンプリング間隔が広がり、波形が粗くなることがあります。したがって、長時間の観測と高解像度を両立するには、サンプリングレートだけでなく「レコード長(メモリ深度)」も併せて確認する必要があります。

 

用途に応じたサンプリングレートの目安

以下は、用途ごとの推奨サンプリングレートの目安です。

■ 低速信号(センサ、電源ラインなど):100kSa/s~10MSa/s
■ PWM波形、マイコンIO、CAN/LIN通信:100MSa/s~500MSa/s
■ クロック波形(50~100MHz):1GSa/s以上
■ 高速デジタル信号(USB、LVDS、DDR等):2GSa/s~5GSa/s
■ RF信号や立ち上がりの速いパルス波形:5GSa/s以上

必要に応じて「サンプリングレートが高く、レコード長も長い」モデルを選ぶことで、詳細な解析が可能になります。

 

12ビット機種におけるサンプリング性能の進化

近年の12ビット高分解能オシロスコープでは、サンプリングレートの向上とノイズ低減の両立が進んでいます。たとえば、OWONのADS3000シリーズでは、最大2.5GSa/sのサンプリングに対応しつつ、12ビットADCによる高精度測定が可能です。ADS900Aシリーズも2GSa/sの実時間サンプリングを備え、複数チャネル・デジタル入力・任意波形出力を1台で実現しています。

 

まとめ

サンプリングレートは、オシロスコープで波形を正確に再現するために不可欠な性能です。測定対象の信号に応じて、必要なレートをしっかりと見極めることが大切です。高すぎてもコストやノイズの面で不利になることがあるため、「測定目的に応じた適正なサンプリング性能」を基準に選定することが、効果的な測定につながります。

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