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周波数解析におけるFFTの活用
- 2025/6/30 -

周波数解析におけるFFTの活用

オシロスコープでは、時間軸に対する波形(時間波形)を観測するのが基本ですが、ノイズ源の特定や信号成分の解析には「周波数軸」での観測が欠かせません。ここで活躍するのが、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)です。

■ FFTとは
FFTとは、時間軸の信号を周波数成分に分解して表示する数学的手法です。入力された波形に含まれる複数の周波数成分を検出し、それぞれの周波数と強度(振幅)をスペクトル表示します。

■ オシロスコープでFFTを使う意味
・時間波形からは見えない周波数成分を可視化できる
・ノイズの周波数帯域を特定できる
・複数の信号が混在する際の解析に有効
・高調波や不要輻射の可視化に役立つ
・フィルタやアンプの周波数特性をチェックできる

■ FFT表示の基本的な構成
オシロスコープでFFTモードを選択すると、次のような構成で画面が切り替わります。

・横軸:周波数(Hz、kHz、MHz単位)
・縦軸:振幅(dBV、dBm、またはリニア)
・表示:パワースペクトル/振幅スペクトル

■ FFTでよく使われるオプション設定
サンプル数(ポイント数):FFT演算の解像度を決める。多いほど細かく周波数を分解できる。
ウィンドウ関数(Window):信号を処理する際に、端部の歪みを抑えるための関数。Hanning、Hamming、Flat Topなどがある。
スケーリング:dBスケール(対数)とリニアスケールが選べる。ノイズレベルや高調波の観察にはdBスケールが便利。

■ 実用的な活用例
電源ノイズ解析:DC-DCコンバータ出力に重畳するスイッチングノイズの周波数特性を観察。EMI対策の第一歩。
オーディオ評価:音声信号に含まれる高調波、ノイズ、ひずみ成分を視覚化。周波数レンジ20Hz~20kHzで観察。
高周波回路のスプリアス測定:PLLや発振器から出る意図しない周波数成分を特定。
センサ出力の帯域評価:加速度・振動センサなど、動的特性を周波数域で解析。
モータ制御の干渉チェック:PWM制御の基本周波数や高調波をスペクトルで確認し、ノイズ源を特定。

■ OWON製品におけるFFT機能
OWONのADS800AシリーズやADS900シリーズなど、12ビット分解能のデジタル・オシロスコープでは、FFT機能も標準装備されています。高い垂直分解能により、微弱な信号やノイズをより正確にスペクトル化でき、以下のような特長があります。

12ビット分解能の効果:微小な振幅差でも明確に表現でき、dBスケール表示においてノイズの有無をより厳密に判断可能。
高速サンプリング:最大2GSa/sの高速サンプリングにより、広帯域な周波数成分を逃さず観測。
波形とFFTの同時表示:時間波形とFFTスペクトルを同一画面に表示し、相関解析が可能。

■ FFTを使う際の注意点
サンプリングレートと観測周波数の関係:Nyquistの定理により、観測可能な最大周波数はサンプリングレートの1/2まで。
時間分解能とのトレードオフ:FFT演算には一定の波形時間が必要。短時間の突発波形とは同時観測が難しい場合もある。
信号の安定性:周期性がない信号やノイズが多い波形では、スペクトルがぶれることがある。ウィンドウ関数の工夫が必要。

■ FFT機能とスペクトラムアナライザとの違い
FFT表示はあくまでオシロスコープの補助機能です。スペクトラムアナライザのように超高感度・高ダイナミックレンジの分析は難しいものの、波形測定と周波数分析を1台でこなせる手軽さがあります。初期段階のノイズ調査や、簡易EMCチェックなどには十分実用的です。

■ まとめ
FFT機能は、オシロスコープにおける周波数解析の要です。とくに12ビットオシロスコープのように高精細な信号観測が可能な機種では、FFT結果の信頼性も高くなります。OWONのADS800AやADS900シリーズでは、時間波形とFFT表示を組み合わせることで、より高度な信号解析を誰でも簡単に実現できます。

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