オシロスコープ入門講座 第9回「簡単なトラブルシューティング(波形が出ないとき等)」
オシロスコープを使っていて「画面に波形が表示されない」「測定値が異常」といったトラブルに直面することは少なくありません。初心者の方でも確認しやすい、基本的なトラブルシューティングのポイントをまとめました。機器の故障ではない場合が多いため、落ち着いて一つずつ確認することが重要です。
波形が表示されない場合の確認ポイント
■ 入力信号が出ているか、信号源を確認(ファンクションジェネレータや回路側)
■ プローブの接続が正しいか、しっかり挿さっているかを確認
■ プローブのスイッチ(1:1 / 10:1)と本体の設定が一致しているか確認
■ 使用しているチャンネルが「ON」になっているか確認
■ 垂直スケール(V/div)が適切か(波形が小さすぎて見えない場合がある)
■ 時間軸(Time/div)が大きすぎないか(波形が細くて見えにくいことがある)
■ トリガー条件が適切に設定されているか確認(Auto / Normal / Single)
■ トリガーレベルが波形の範囲内にあるかどうかを確認
波形が安定しない・ちらつく場合
■ トリガーモードが「Auto」になっているかを確認(NormalやSingleでは安定しにくい)
■ トリガーソース(CH1 / CH2 など)が合っているかを確認
■ 波形が周期的でない場合は、「Single」モードで一度だけ捕捉してみる
■ 波形が細かすぎる場合はTime/divを調整して周期を見やすくする
測定値が異常・信号が正しく見えない場合
■ プローブの減衰比設定(10:1 / 1:1)が間違っていると、振幅が大きく誤表示される
■ プローブ補正がずれていると、波形に歪みが出る(定期的な補正が必要)
■ 接触不良や断線によって、信号が途中で失われている可能性もある
■ GNDクリップの接続忘れにより、ノイズが乗る、波形が崩れることがある
機器自体の確認
■ 電源が安定しているか、再起動で改善しないか試す
■ 設定が大きく乱れている場合は、初期化(Default設定)も有効
■ 他のチャンネルやプローブで同じ信号を確認して比較することで、故障の切り分けが可能
■ それでも解決しない場合は、取扱説明書またはメーカーサポートに相談
まとめ
オシロスコープのトラブルの多くは、設定ミスや接続ミスが原因です。基本をひとつずつ確認するだけで、多くの問題は解決します。初心者のうちは、初期設定に戻してから再設定してみることも有効な手段です。次回は最終回「おすすめの使い方と今後のステップアップ」について解説します。
【シリーズ】オシロスコープ入門講座(全10回)
対象読者:初めて使う方/学生/新入社員の研修用
■ 第1回:オシロスコープとは何か?基本概念と用途
■ 第2回:アナログ vs デジタルオシロスコープ
■ 第3回:基本構造と各部名称(ディスプレイ/つまみなど)
■ 第4回:プローブの基礎知識と使い方
■ 第5回:信号の入力方法とトリガーの考え方
■ 第6回:時間軸・電圧軸のスケール調整と見方
■ 第7回:波形の種類と読み取り方(矩形波/三角波など)
■ 第8回:基本的な測定項目(周期/周波数/振幅など)
■ 第9回:簡単なトラブルシューティング(波形が出ないとき等)
■ 第10回:よくある使い方の事例(電源・通信・オーディオ)
もっと用語集
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- アラーム設定とは
- スロープトリガーとは
- パルストリガーとは
- シリアルバス解析とは
- プロトコルデコード(I2C, SPI, UARTなど)とは
- オシロスコープの基本操作 第10回「オシロスコープの活用事例と応用テクニック」
- インバータ測定とは
- 波形ズームとは
- オシロスコープの基本操作 第2回「トリガー設定」
- オシロスコープの基本操作 第3回「スケーリングと測定機能」
- オシロスコープの基本操作 第4回「波形の保存とデータ活用」
- オシロスコープの基本操作 第5回「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」
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- オシロスコープの基本操作 第7回「プローブの正しい使い方と接続方法」
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